![マッシモ・タンブリーニ[バイクブランドヒストリー] ビモータ/ドゥカティ/MVアグスタを高みに引き上げた男](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/attachmentfile-file-22573.webp)
●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:ALAN CATHCART ARCHIVES / DUCATI
それ、同じヤツ何台もつくれるのか? 病院のベッドで決まったモーターサイクルクリエイターへの道
「もうこれ以上は仲間に迷惑。あのバイクを売って仕事に集中するんだ」
趣味のアマチュアレースで何度目かの転倒を喫し、ベッドに横たわる彼に、ジュゼッペ・モーリが迫った。
渋々言われるままに、バイク雑誌の売買欄へ投稿。すると、オリジナルフレームにホンダCB750フォアを積んだ彼のマシンは、マニアの注目を浴びていたため、高値で買いたいと申し込みが殺到したという。
その様子に、モーリは彼に同じフレームを作らせればビジネスにできると思いつき、1973年、この「HB1」でハンドメイドバイク工房の「ビモータ」が誕生したのだ。
彼の名はマッシモ・タンブリーニ。
もうひとりの仲間、ビアンキとモーリとの3人の頭文字を組んで創業したビモータは、スチーム暖房など設備工事の会社。マッシモは趣味のレースで愛車CB750フォアのフレームを破損する大クラッシュ。会社にある管を曲げるパイプベンダーで自作フレームを創ったのがすべての始まりだった。
ビモータは大排気量の日本製4気筒を搭載。メーカー名の頭文字とBを組み合わせたKB1/SB1といったスペシャルマシンを世に送り出し、量産車にありがちな妥協をしない、理想のアライメントによる卓越したハンドリングの評価で世界に君臨していった。
しかし、日本車の完成車を購入しエンジンだけを使う手法は、生産性に限度がある。エンジン供給を持ちかけ例外的に入手もしたが、新しい世代にモデルチェンジした直後は完成車も入手困難…。
困り果てた経営責任者のモーリは、同じイタリアのドゥカティに相談し、後にdb1の誕生へと繋がるLツイン供給の道筋をつけたが、「世界最速/頂点クオリティの理想はどこへ行ったのだ?」とタンブリーニは猛反発。結局は袂を分かつことになったのだった。
ベターはない、ベストしかない。究極の合理性追求で生まれる珠玉の美しさ!
このとき彼に手を差し伸べたのが、クラウディオ・カスティリオーニ。アエルマッキを買収してカジバを興し、続いてドゥカティも傘下に収めるなか、タンブリーニとの出会いに運命を感じ、彼のためのプロジェクトを用意した。
カジバがチャレンジを開始した世界GP500クラスの2スト4気筒マシン開発で、シャーシや空力のトップエンド領域を経験させながら、傍らでドゥカティのLツインスポーツのパゾに携わらせつつ、カスティリオーニはタンブリーニの類い稀な秀でた感性と情熱に共感。彼にさらに大きな夢を託すようになる。
それは、世界中から注目され、ドゥカティを名実ともに頂点へ押し上げた「916」となって結実した。
スーパーバイクにデビューした水冷DOHCのLツイン851の面影を微塵も感じさせない、リッターマシンではあり得なかった超スリムなフォルム。片支持のスイングアーム、GPマシン直系の細いフレーム、さらに4ストマシンでは例のなかったシートカウル下にサイレンサーを収めることで左右への鋭い運動性を得たデザインは、その後に多くが追従するほど画期的だった。しかもこのエキゾーストの取り回しが、従来の常識を覆す長さを稼いだ革新的なレイアウトで、中速域パフォーマンスを飛躍的に向上させたのだ。
それだけではない。ヘッドライトのケースなどに樹脂製ではなく軽量な鋳造パーツを採用、バックミラーのウインカーなどコネクティングに配線コードを使わずワンタッチで嵌め込む方式など、2輪車の製造工程では未知領域の合理性追求がなされていた。
現地ミサノでの発表試乗会で目を見張るようなデザインについて訊ねると、「GPマシン開発と変わらない。フレームとエンジンに沿ってピタッと接するようカバーしてカウルのカタチが決まった。他に意図せず究極を求めた」と素っ気ない。どれほどの苦労があったのか容易に想像がつく力作でも、彼は「ベターではなくベストを求めただけ」としか言わなかった。
原点だったMVへの憧れを、自ら新たに誕生させる人生を謳歌
この大きな成功を見守った見届けたカスティリオーニは、次なる夢の具現化を目指し、タンブリーニとの約束を果たすことになる。
そもそも、タンブリーニが青春時代に憧れたのはMVアグスタ。イタリアの誉れとして世界GPに君臨するその姿は、日本勢の猛攻も跳ね返す、まさに孤高の英雄そのもの。最初のCB750フォア用に創ったフレームも、MV独得のスイングアームピボットから3方向へパイプが伸びる取り回しを倣っていたほど、彼にとっては原点のような存在だった。
そのMVも1980年代に姿を消してしまい、ドゥカティ916でスーパーバイクの世界制覇を果たして思うのは、日本車よりも前からMVが4気筒で究極を追い求めていた頃の復活…。そんな夢の具現化をカスティリオーニと語らうようになり、MVのブランド名も買い戻してからは、“男の約束”のため、果てしない道のりを2人で歩き出したのだ。
エンジンは同じイタリアのフェラーリに基礎開発を依頼。お得意のラジアルバルブ設計で早々にプロトエンジン披露へと辿り着いた。
しかし、ドゥカティのM&A騒ぎで揺れるカジバの状況からか、エンジン開発でつまづいたのか、4気筒プロジェクトはすっかり影を潜めてしまったかに見えた。
だが、ビモータを興したリミニと隣接するサンマリノに、CRC(カジバリサーチセンター)を率いる環境を与えられたタンブリーニにしてみれば、やらなければならない仕事はヤマほどあり、一刻も無駄にできないと、日々開発とデザイン作業に没頭する毎日。外部の喧騒などお構いなしに完成度を高めていくプロセスは、何かあれば改善を重ねていくのではなく、辿り着いたノウハウを反映させるため、根底から設計し直す徹底ぶりだったという。
彼にとって原点でもある、パーフェクトなハンドリングを得るためのエンジン位置やフレームの取り回しは、試行錯誤を重ねた結果として、整然と隙間ない各パーツの位置関係にある。応力的にも配置の方向や必要な強度に沿ったレイアウトは、外装パーツを身に纏う前の段階でさえ、ため息の出る美しさを漂わせていた……
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
鈴鹿8耐でV4に勝つ750インライン4開発に単を発した操る面白さでライディングする新次元のスーパースポーツFireBlade! 1992年に登場したCBR900RR FireBladeは、それまでトッ[…]
世界をリードしたCB、CBR、VFR、RVFの歴史を積み上げた経験とこだわりのありったけを注ぎ込む! スーパーブラックバード。米空軍で超高々度を偵察飛行する目的で開発された最高速度記録3529.56k[…]
2バルブで半球形燃焼室のツイン点火プラグ! 1989年のゼファー(400)が火をつけたネイキッド・ブーム。 カワサキは1990年にゼファー750、そして1992年にはゼファー1100とビッグバイクでも[…]
不朽の名車KATANAのレプリカで、尖ってないスポーツモデルをリリース! スズキといえばKATANA……国産4メーカーが揃ってビッグバイクへチャレンジして肩を並べた1970年代を過ぎて、スズキはスペッ[…]
ネオレトロなロケットカウルへの郷愁を巧みなグラフィックで新しさへと巧みに演出! 1989年、スズキは1レーサーレプリカ全盛だった頃に感性も価値観も異なる、オトナを意識した都会的な新ネイキッド、BAND[…]
最新の関連記事(ビモータ)
乗りやすさなんて関係ない!? 保安部品付きレーシングマシン ビモータとカワサキがワールドスーパーバイクに参戦するために「BbKRT(Bimota by Kawasaki Racing Team)」を結[…]
サーキット激走も無問題! 新時代のアドベンチャー 2019年にカワサキがイタリアのビモータと資本提携し、最初に登場したのがNinja H2のエンジンを搭載した「TESI H2」。そのハブセンターステア[…]
7/1:ビモータ「TESI H2 TERA」 カワサキ「Z H2」譲りの200PSスーパーチャージドエンジンと、ビモータ伝統のハブセンターステアリングを融合させた究極のクロスオーバー。ノーズダイブを抑[…]
アドベンチャー特有の「ノーズダイブの恐怖」を過去にするハブステア 背が高くサスペンションのストローク量が長いアドベンチャーバイクは、ツーリングで快適な反面、ハードブレーキング時にフロントが大きく沈み込[…]
カワサキ伝統「Z」の血脈を受け継ぐ人気モデル・Z900RSの3兄弟が揃い踏み! まず注目したのはZ900RS。1970年代に一世を風靡したカワサキの名車・Z1/Z2。いわずもがな、そのシルエットを21[…]
最新の関連記事(ドゥカティ)
目と鼻の先からの移転オープン ドゥカティ大阪ノースが2026年9月まで店を構えていたのは、新店舗から東へ150メートルほど進んだ場所だ。目の前にある横断歩道を渡るとすぐの場所で、引っ越しは自分たちスタ[…]
スーパースポーツだけじゃない!様々なタイプのバイクで楽しめる サーキットというとスーパースポーツのようなモデルばかりと思われがちだが、サーキットエクスペリエンスには多種多様なバイクが参加している。スー[…]
218ps&15000rpmへパワーアップ! ドゥカティは、第7世代スーパーバイクの進化型となる「パニガーレV4」および「パニガーレV4 S」のMY2027を公表した。ヨーロッパ市場での2027年3月[…]
ドゥカティ初のレーシング・スーパーモト「Desmo450 SM」登場 ワールド・ドゥカティ・ウィーク2026において、ドゥカティ初となるレーシング・スーパーモト「Desmo450 SM」がお披露目され[…]
移転先は、交差点を渡ったすぐ近所 今回移転するドゥカティ大阪ノースは、自動車メーカーで、自動車販売ディーラーやBMW Motorradディーラーを展開する光岡自動車が経営するドゥカティ部門のショップだ[…]
人気記事ランキング(全体)
【第1位】普通免許で乗れて車検不要! 全天候型電動トライク専門店が名古屋にオープン 普通免許で乗れて車検や車庫証明も不要な全天候型電動トライクの専門店「ビークルファン名古屋BASE」が開設された。ドア[…]
ボタンひとつで車体が自立!力作業を完全に不要にする電動油圧の技術 重い大型バイクやスクーターを停車・駐車する際、車体を支えながらスタンドを立てる作業は、時にライダーにとって大きな身体的負担や精神的スト[…]
名車の姿を変えた国内事情。“耕運機ハンドル”誕生の背景 1980年のケルンモーターサイクルショーで公開され、翌1981年に発売されたスズキ「GSX1100S KATANA」。日本刀をイメージしたシャー[…]
85%共通プラットフォームがもたらす多彩な展開力 ドイツ・ベルリンで産声を上げ、デザインと開発の拠点をイタリア・ミラノに置く新鋭電動モビリティブランド「GR1T(グリット)」。世界最大級のバイク見本市[…]
T40より手頃な価格設定を実現したボンネビルファミリーの新たな入門機 トライアンフがインド市場向けに投入した「ボンネビル T4」は、世界的な成功を収める400ccプラットフォームの技術基盤を活用しつつ[…]
最新の投稿記事(全体)
2026年 第6回 FanFunミーティング in スポーツランドTAMADA 開催日:2026年10月10日(土) 会場:スポーツランドTAMADA 参加費:無料 旧車から新型車までユーザーが大集合[…]
旧車のキックスタートに大苦戦!NO電子制御バイクは初! 皆様こんにちは~! 指出瑞貴です♪ 最近は秋を感じる日が増えましたね~。朝、ゴミ捨てに行くと、こっくりとした深いブラウンの 枯れ葉を[…]
専用設計だからこそのジャストフィットと安心感 汎用の保護シートをハサミで切って貼る手間とは無縁。MK50の画面形状に合わせて寸分の狂いもなくカットされた車種・モデル専用設計となっており、ディスプレイの[…]
4気筒CBR500R FOURにレーシングコンセプト ホンダは中国の重慶モーターサイクルショーにて、カスタムコンセプト「CBR500R FOUR レーシングカラー」を世界初公開した。ベース車両は「CB[…]
2650名の熱気!モデルの垣根を越えて共有するバイクライフの歓び バイクを走らせる醍醐味は、単に目的地へ移動することだけではない。同じ志を持つ仲間と出会い、バイクへの情熱やツーリングの思い出を語り合う[…]
- 1
- 2


![マッシモ・タンブリーニ|ビモータ|マッシモ・タンブリーニ[バイクブランドヒストリー] ビモータ/ドゥカティ/MVアグスタを高みに引き上げた男](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/mvagusta_massimotabburini_story_20230916_01-768x432.jpg)
![マッシモ・タンブリーニ|ドゥカティ916|マッシモ・タンブリーニ[バイクブランドヒストリー] ビモータ/ドゥカティ/MVアグスタを高みに引き上げた男](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/mvagusta_massimotabburini_story_20230916_02-768x432.jpg)
![マッシモ・タンブリーニ|ドゥカティ916|マッシモ・タンブリーニ[バイクブランドヒストリー] ビモータ/ドゥカティ/MVアグスタを高みに引き上げた男](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/mvagusta_massimotabburini_story_20230916_03-768x432.jpg)







































