賢い洗浄ケミカル選びのすゝめ【アルミや樹脂が多いモデルには、表面を痛めない専用タイプを使うべし】

賢い洗浄ケミカル選びのすゝめ【アルミや樹脂が多いモデルには、表面を痛めない専用タイプを使うべし】

レーサーレプリカブームに合わせて一気に増えたアルミパーツには、多くのメリットがあるものの、汚れ落としには注意が必要。ケアする際には専用ケミカルを使うのがベターな選択だ。そんなアルミパーツのクリーニングに最適な製品を紹介したい。


●文:/写真:栗田 晃 ●外部リンク:株式会社BAN-ZI

素材を痛めない万能クリーナーは、長期放置車&レストアの徹底洗車に最適

最近は、1970年代のカワサキZ系やホンダCB系に加えて、ホンダNSR250RやヤマハTZR250Rといったレーサーレプリカモデルも絶版車として注目されているが、それ以前の絶版車を比較した時に、最も顕著な違いを感じるのは、用いられている素材の違いだろう。

フレームも足周りも鉄製だった70年代に対して、80年代の絶版車は、アルミや樹脂製パーツなどが多用されている。そんな絶版車に対しては、ケミカル選びにも注意が必要だ。

2ストオイルや泥汚れといった酸性の汚れに対しては、アルカリ性のクリーナーが有効。だが、強力な洗浄力の反面、アルミ素材にダメージを与えてしまうリスクが高くなる。

また、酸化防止を目的に陽極酸化処理(アルマイトで酸化皮膜を形成)がされているケースもあるが、これも強アルカリのケミカルを用いると、アルマイト皮膜が除去されるリスクが高くなる。

一般的なアルカリ洗浄剤は、長所と短所を併せ持つのだが、「優れた洗浄力」という長所だけを引き出しているのが、今回紹介するBAN-ZIの「MUD MAX(マッド マックス)」だ。

レーサーレプリカの洗車にもオススメの強アルカリ洗浄剤

MUD MAXの成分中に含まれる水酸化カリウムは、強アルカリ物質の一種。そのpH値も13と強力。

一般的にはpH値が13になると、アルマイト皮膜が剥離されるリスクが高くなり、アルミ素材にダメージが及ぶリスクが出てくるのだが、この製品では試作を繰り返すことで金属素材への攻撃性を抑えることを実現している。

数年間、放置状態だったホンダNSR250R(MC21)の洗車に使用してみたところ、エンジン周辺のオイル汚れはもちろん、車体の泥やホコリ汚れまで、悪影響を与えることなくすっきりと洗浄できた。

もとよりMUD MAXは、オフロード車の泥汚れに強いことが高く評価されているが、アルミパーツを多用しているオンロードモデルに、安心して使用できることも魅力だ。

右・【MUD MAX 原液タイプ1000ml】 ●価格:6116円 / 左・【MUD MAX スプレーボトル入り1000ml】 ●価格:6028円

メンテ前だからこそ、汚れの徹底除去が不可欠

WGP250クラスのワークスマシン「ホンダRS250R-W」のレプリカモデルとして1986年に登場したNSR250Rは、レーサーレプリカブームを牽引した代表的モデル。

右側スイングアームが「への字」のガルアームとなったMC21型は、1990年に登場。サンプル車は、おおよそ35年長期放置車両として熟成されていた個体。整備するにも、まずは徹底洗車が必要だろう。

サンプル車は、おおよそ35年長期放置車両として熟成されていた個体。

サンプル車は、おおよそ35年長期放置車両として熟成されていた個体。

カウルの汚れには、10倍希釈済みのボトル入りタイプをスプレー

車体表面のホコリや軽度な汚れは高圧洗浄機で洗い流しておく。砂利とオイルでコーティングされた汚れは落ちないが、カウル内の枯れ葉やクモの巣除去には効果がある。

カウルの汚れに10倍希釈済みのボトル入りタイプをスプレー。スクリーンに数回プシュッとしただけで、スポンジやブラシで擦ることなく茶色い汚れが垂れてきた。抜群の効果はここからも実感できる。

ガソリンタンク、シートカウルなど塗装パーツと並行して、チェーンオイルが飛散したスイングアームをブラッシング。アルミを傷めないので安心して洗い上げに専念できる。

カウル表面がある程度きれいになったら、外装を取り外す。アンダーカウルのオイル汚れは2ストあるある。社外チャンバーで口金がスプリングフック式だと、さらにひどいケースも。

現行250ccはフルカウルの中身がスチールフレームという機種も多いが、レーサーレプリカブーム時代はアルミフレームが主流。したがってアルミを傷めない洗浄剤選びが重要だ。

外装を取り外してから高圧洗浄機を使用する場合は、エアークリーナーボックス吸入口やバッテリーターミナル、配線カプラー部分の防水や止水も忘れずに行う。

エンジン周りやフロントフォークなど、カウルで見えづらかった部分にMUD MAXをスプレーする。フロントフォークはオイル漏れと点サビがあり、オーバーホールが必要な状態だ。

厳しい汚れには、5倍に希釈した原液タイプを使用する。ひどい汚れは1~5倍希釈、泥汚れは5~20倍希釈、軽度な汚れは50倍希釈が目安。

希釈した洗浄液は市販のスプレーボトルに注いで使用する。10倍希釈済みは汎用性が高いが、ひどいオイル汚れには、もう少し濃い方が作業効率がアップしそうだ。

2ストオイルが固着したエキゾーストポートに5倍希釈のMUD MAXを吹き付ける。粘土のように固まったオイル汚れは、スプレー後にブラシで擦ると落としやすい。

シリンダー周辺の汚れが一掃された。アルミや金属に悪影響がないとはいえ、過度に長時間付着させる必要はない。吹きつけ後は5分以内に水やお湯で充分に洗い流す。

車体に続きカウル内側のオイル汚れを洗浄する。サイド、アンダーカウル形状はメンテナンス性を考慮してか左右で異なり、サイズが大きな左カウルの方が汚れが顕著だ。

堆積タイプの汚れではないので、ここでは再び10倍希釈済みのスプレータイプを使用した。カウル類を直接地面に置くと傷が付くので、ゴムマットなどを敷くのがおすすめ。

ブラシで擦ると、オイル汚れがカウル内面を流れ落ちて洗浄効果を実感できる。一回の洗浄ですべて落ちない時は、一度すすいで再度スプレーしてブラシで擦ろう。

2度の洗浄で、右下の「12」とは比べものにならないほど汚れが落ちた。アルミに悪影響がないこともさることながら、カウル表面の塗装やデカールを傷めないのもありがたい。

オイルやホコリで汚れたバイクに触れるのは気が進まないが、きれいになればメンテナンスのモチベーションも上がる。

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

モトメカニック

バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓