現行車でも絶版車でも、一部の例を除けばバッテリーが必要不可欠。バッテリーが上がった時は、本体の寿命を確認し、オルタネーターやレギュレートレクチファイアなど車体側の電装部品の確認も必要だ。そしていざバッテリーを交換する際、これまでと同じタイプ/同じサイズを選択するのも間違いないが、せっかくなら高性能タイプにアップグレードするのも一興だ。本記事で紹介するBS製リチウムバッテリーは、小型軽量かつパワフル。絶版車にとってもメリットが実感できて実用性が高い。
●文/写真:栗田晃(モトメカニック編集部) ●外部リンク:丸中洋行
開放式/MF式/リチウムイオン式が揃うBSバッテリー。充電電圧を管理して優位性の高いリチウムを活用したい
市販車の一部にも純正採用される例はあるが、リチウムバッテリーは鉛バッテリーに比べるとまだまだ少数派だ。重量当たりのエネルギー密度が高く内部抵抗が少ないため、大電流を一気に放電でき、さらに自己放電が少ないなど、条件的にはバイクや自動車用として適しているものの、冬季の始動性に難があるといった噂や価格がネックとなっているようだ。
しかし、昨今の物価高/原材料価格高騰を受けて、絶版車の定番である開放式バッテリーでも驚くほど高騰しているものもある。「安価なノーブランド品を頻繁に交換すればいいや」というかつての常識が通用しなくなりつつあるのだ。
そうした状況を逆手にとって考えたいのがアップグレード。リチウムバッテリーが鉛バッテリーより高価なのは間違いないが、その価格差が縮まっているのも事実である。BS製リチウムイオンバッテリーの場合、適切に使用すれば5〜8年間は使用でき、鉛バッテリー3個分の長寿命と仮定すれば価格差もグッと小さくなり、あるいは逆転現象が起きる可能性も期待できる。
充電時の電圧管理に留意すれば、通常時で13V超という放電電圧の高さを含めてリチウムバッテリーには魅力しかない。バッテリーの変更は絶版車にこそ有効な電気系チューニングだと言える。
絶版車の定番=14L-A2タイプこそリチウムの小型軽量さを実感できる
10時間あたりの公称容量が14Ahの開放式バッテリーは、1970〜80年代の大型車の定番サイズ。反応時にガスが排出されて電解液中の水分が減少するため、定期的な液量確認が必須。リチウムバッテリー化により重量は3分の1と軽量、体積も圧倒的に小さくなる。
過充電厳禁!! 機種によってはレギュレートレクチファイア交換が必要
さて、開放式の鉛バッテリーを過充電すると電解液が沸騰状態になるのと同様に、リチウムバッテリーも過充電により損傷する。
BS製の充電電圧は13.8〜14.4Vが推奨で、15V以上にならないことが条件となる。エンジン始動時のターミナル電圧が条件から外れる場合、レギュレートレクチファイアの交換が必要だ。
自己放電は少ないものの、専用充電器があればなお安心
鉛バッテリーとリチウムバッテリーは充電のメカニズムが異なり、電圧と電流のコントロールが厳密なリチウムには専用充電器が用意されていることが多い。BSの場合、鉛6V/鉛12V/リチウムバッテリーに対応する高性能な充電器「BS10」を用意。対応容量は最大20Ahで、日本市場向けに電気製品の安全を保証するpsE認証も取得している。
バリエーション豊富なBSバッテリー
長い目で見ればリチウムイオンバッテリーに分があるのは確かだが、BSバッテリーは開放式/メンテナンスフリー/電解液入り充電済みのSLAバッテリーなどの鉛タイプも製造している。開放式からメンテナンスフリーに変更してもアップデートとなる。
交換するだけで70%軽量化でき、始動能力も高い
開放式の純正サイズのBB14L-A2と比べると、頼りないほど軽くてコンパクトなBSLi-05。だが本文でも触れたとおり、リチウムは鉛に比べて重量/体積あたりのエネルギー密度が4〜5倍高いので、その分小さくできるのだ。
注目すべきはエンジン始動性能を示すCCA値の違いで、BB14L-A2の175Aに対して、BSLi-05は280A。つまり1.6倍の能力があると言うことだ。
バッテリーケースの隙間はウレタンパッドで埋める
リチウムバッテリーを鉛バッテリー用のケースに収めると、隙間がありすぎてスカスカ状態になる。BS製バッテリーには隙間を埋めるためのさまざまなサイズ、形状のウレタンスペーサーが付属していて便利だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
プッシュスルースプリットビームトルクレンチ:作業後のゼロ点戻しが不要。反時計回りの測定も可能 角断面のトルクレンチ本体内部に内蔵された板バネは、調整ノブでトルクを設定した段階では負荷がかからず、ボルト[…]
高いポテンシャルを持ちながら肩の力を抜いて乗れる二面性で大ヒット セローが登場した1985年は、オンロードでは本格的なレーサーレプリカブームが到来する頃でした。オフロードも同様で、パンチのある2ストロ[…]
オーバーホール済みだからこそ末永く大切にケアしよう 筆者がバイク仲間のガレージへ遊びに行くと、フルレストアが仕上がったばかりのホンダCB350EXPOが、メンテリフターの上で鎮座していた。長年の友人に[…]
50ccスクーターでバイクいじりを楽しむ 女性向けやビジネス向け、スポーツモデルからハイグレードタイプまで、かつては原付免許を取得したライダーが一度は所有したことがあったのが50ccスクーターだった。[…]
旧車や絶版車のメンテナンスに最適。使い勝手の良い水性&中性タイプ 塗装やメッキで表面処理を行っても、進行していく金属のサビ。旧車や絶版車ユーザーにとって、サビは常に悩みのタネだ。 サビの上から直接ペイ[…]
最新の関連記事(バッテリー)
たしかな選択と工夫でシート下スペースを拡大! バッテリーを交換する際には、車両に適したバッテリー容量(10時間率容量)とともに、物理的な寸法を合わせる必要がある。そのためカスタムにおいては、大きく重量[…]
バッテリーコンディションがいまひとつ…。Kナナゴー用バッテリーを載せたら、これがイイ!! 還暦をすぎた筆者は、大型バイクで気楽に走り回ることができない情けない体調…。リハビリのつもりでバイクいじりは積[…]
リチウムフェライトは構造と素材的に“燃えない” スマートフォンなどデジタル機器の「リチウムバッテリーが発火」というニュースを見聞きする機会は少なくないし、バイクにリチウムバッテリーを付けたら爆発した![…]
ウワサは真実だった!? 予想外のリフレッシュ! SHORAIバッテリーの製品箱を手にした吉岡、まずは「コレ、中身を入れ忘れた?」と疑うほどの、あまりの軽さに驚いた。が、もちろん入っているので交換を開始[…]
絶版車にも有効なリチウムイオンバッテリー リチウムバッテリーは鉛バッテリーに対してさまざまな利点がある。では実際に鉛バッテリーを変更する際にどのような点に注意すれば良いのか、KZ900LTDをサンプル[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]
愛車を長期保管する前にやっておきたい「4項目」 本格的に寒くなるこれからの季節は、バイクに乗りたい気持ちはあっても、温かい時期に比べると走りに行く機会が少なくなってくる方も多いことでしょう。ましてや、[…]
プッシュスルースプリットビームトルクレンチ:作業後のゼロ点戻しが不要。反時計回りの測定も可能 角断面のトルクレンチ本体内部に内蔵された板バネは、調整ノブでトルクを設定した段階では負荷がかからず、ボルト[…]
高いポテンシャルを持ちながら肩の力を抜いて乗れる二面性で大ヒット セローが登場した1985年は、オンロードでは本格的なレーサーレプリカブームが到来する頃でした。オフロードも同様で、パンチのある2ストロ[…]
オーバーホール済みだからこそ末永く大切にケアしよう 筆者がバイク仲間のガレージへ遊びに行くと、フルレストアが仕上がったばかりのホンダCB350EXPOが、メンテリフターの上で鎮座していた。長年の友人に[…]
人気記事ランキング(全体)
2025年こそ直4のヘリテイジネイキッドに期待! カワサキの躍進が著しい。2023年にはEVやハイブリッド、そして2024年には待望のW230&メグロS1が市販化。ひと通り大きな峠を超えた。となれば、[…]
一定以上のスピードの車両を自動的に撮影する「オービス」 結論から言うと、基本的にバイクはオービスに撮影されても捕まらない。そもそもオービスはバイクを取り締まるつもりがない。ただし警察にもメンツがあるか[…]
第1位:JW-145 タッチパネル対応 蓄熱インナーグローブ [おたふく手袋] 2024年11月現在、インナーウェアの売れ筋1位に輝いたのは、おたふく手袋が販売する「JW-145 蓄熱インナーグローブ[…]
新色×2に加え、継続色も一部変更 ホンダは、水冷4バルブの「eSP+」エンジンを搭載するアドベンチャースタイルの軽二輪スクーター「ADV160」に、スポーティ感のある「ミレニアムレッド」と上質感のある[…]
寒い時期のツーリング 冬はライダーにとって、本当に過酷な季節です。急激に気温が下がったりしてきましたが、オートバイに乗られているみなさんは、どういった寒さ対策をしていますか。 とにかく着込む、重ね着す[…]
最新の投稿記事(全体)
どんなUber Eats配達員でも必ず持っている装備といえば、スマートフォン。これがなければ、仕事を始めることすらできません。 そんなスマートフォンですが、太陽が強く照っている日に使うと画面が真っ黒に[…]
今シーズンに続き富樫虎太郎選手を起用、新加入は木村隆之介 元MotoGPライダーの中野真矢さんが率いるレーシングチーム「56RACING(56レーシング)」が、2025年のレース活動概要を発表した。 […]
全日本ST1000とASB1000の両カテゴリーを制す! 開幕2連勝を飾り、常にポイントリードし最終戦を待たずにチャンピオンを決めた全日本ST1000クラスに比べ、ARRC ASB1000クラスは、ポ[…]
一度掴んだ税金は離さない! というお役所論理は、もういいでしょう 12月20日に与党(自民党と公明党)が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」の「令和7年度税制改正大綱の基本的な考え」の3ページ目に「[…]
ヤマハの最先端技術の結晶、それがYZF-R1だ 今からちょうど10年前の2014年11月。イタリアはミラノで開催されたEICMAにおいて、7代目となるヤマハのフラッグシップ“YZF-R1”が華々しくデ[…]
- 1
- 2