
いくら問題なく走っているとはいえ、新車販売購入時から20年以上の月日が流れている車両の場合、さまざまな不具合が出てきて当然。特に大々的なメンテナンスやオーバーホールをしていない車両と新車と乗り比べれば、その差は歴然だ。このカワサキ バリオスもそんな1台。長年乗りっぱなしだったキャブレターを取り外し、オーバーホールしてみた。前編では分解&洗浄までを紹介し、後編では部品の交換と同調作業を解説する。
●文/写真:モトメカニック編集部
完全分解ではなく連結分解でパーツ交換
まず、インテークマニホールドのバンドを緩めて、フレームの隙間から上方に引き抜いて作業開始。マニホールドのひび割れや亀裂は二次空気を吸い込む原因になるので、劣化が進行している場合は要交換だ。
その後、キャブレーターASSYを車体から取り外し、その中身を順番に確認しつつ、洗浄/部品交換を試みた。
オーナーからは普通に走行できると聞いていたが、フロートチャンバー内部はガソリンタンク内の錆と汚泥が溜まってこの通り。このような状態だと、過去にジェットやエアの通路が詰まったことがあるかもしれない。
アイドリングやスロットル開度が小さい領域の混合気量を決めるパイロットスクリュー。二次空気の吸入を防止するOリングが硬化すると気密性が落ちるので、オーバーホールの際は新品に交換すること。
スクリューを緩めた際にワッシャーとOリングをボディ側に置き忘れると、組み立て後に機能しなくなることがあるので、ピックツールなどで取り忘れがないことを確認して、確実に回収しておく。
フロートで開閉されるフロートバルブは、先端の円錐部分の状態が重要。不動状態が長いと、劣化したガソリンで膨潤したりタンクのサビが噛み込み、オーバーフローの原因になることがある。
フロートバルブ後端のロッドがフロートの調整板(ベロ)に打痕を付けていないかを確認する。バルブが調整板に引っかかると、バルブシートとの当たりが変わりオーバーフローにつながる場合がある。
キャブ内部のパーツは真鍮系の合金を使用しているため、メインジェットを着脱する際はジェットホルダー部分をめがねレンチで固定し、マイナス溝にぴったり合うジェットドライバーを使用する。
フロートバルブシートが着脱式なら、バルブの当たり面が荒れていても交換できるため、オーバーホールは断然楽になる。今回の交換部品は、純正品ではなくキースター製の燃調キットを用意した。これにはジェット/ニードル類だけではなくバルブシート/Oリング/フィルターすべてが付属する。
スロットルレスポンスを向上させる=キャブの前後長を短縮するため薄型のバキュームピストンを採用している。保管状態が悪いと、ゴム製のダイヤフラムが硬化したりひび割れることもあるので要確認。
ダイヤフラムとピストンは一体構造で、純正部品の価格は1個1万923 円、4個で4万4000円と高額。このキャブは幸運にも大丈夫だった。クリップを調整できない純正ジェットニードルを取り出す。
スターターバルブのゴムシールが硬化すると、チョークを戻しても始動系統が閉じきらず、かぶり気味になることも。キャブが連結していると2~4番のバルブが外れないので、交換時は全バラ作業が必要。
ガソリンとエアー通路の徹底洗浄を行う際は、一般的なパーツクリーナーではなく、フォームタイプのキャブレタークリーナーを通路という通路内に吹き込み、外部から見えない汚れも除去する。
キャブレター外部の汚れもキャブレタークリーナーで洗浄する。キャブクリーナーに粘度がある場合、しばらく乗る予定がなければパーツクリーナーやガソリンですすぎ洗いしておくと良い。
フロートチャンバーやフロートの汚れも洗い流す。作業の画像はないが、フロートバルブとバルブシートを交換してフロートを組み立てたら、フロートゲージで油面を確認。標準値は9.5 ±1mm。
フロートチャンバーの底にある分は、キャブに吸われていないとはいえ、フロート内にガソリンがある時に漂っていたかもしれないと考えるとゾッとする汚泥。しばらく走行したら、再度確認する。
長年の垢が溜まりに溜まっていたバリオスのキャブレター。分解して感じたのは、今まで不具合を感じることもなくよく走行できていたなということ。
この後、部品の交換とキャブレターの同調調整をしたので、後編ではその模様と作業時の注意点を解説する。
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