2019年、2021年、2022年のムジェロの最高速を見てみた

いつか時速400キロ!? MotoGP2022年シーズンの最高速は?【ついにドゥカティが363.6km/hを記録!】

毎年のように最高速を更新していくMotoGPマシン。今回は2019年、2021年、2022年のイタリアのムジェロサーキットの最高速を比較。2022年はついに363.6km/hを記録した。ちなみに2002年のMotoGP元年の最高速はマックス・ビアッジの駆るYZR-M1で322.81km/h。いったいどこまで最高速は伸び続けるのだろう? 


●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:ミシュラン

出力アップはもちろん、空力&ライドハイトデバイスにより最高速は伸び続ける

最新のMotoGPマシンは、300psに迫る(クランク軸だと超えている?)パワーを出しつつ、そのパワーを空力デバイスと電子制御、そして最近ではライドハイトデバイスで路面に伝えている。

MotoGPマシンは常に「あり余るパワーをいかに路面に伝えるか」「空気の壁を切り裂くか」が開発テーマであったが、2022年は信じられないことにイタリアのムジェロで363.6km/hの最高速を記録。最高速アタックではない、ストレートの直後で曲がらないとならないサーキットでのバイクの速度としては異常な数値にも感じる。

ちなみにMotoGP元年である2002年のムジェロの最高速は、1位がマックス・ビアッジの駆るYZR-M1で322.81km/h。2位は宇川徹が駆るRC211Vの320.3km/h。電子制御などほとんどなく、エンジンは250psほどと言われていた時代の数値である。

今回は2019年、2021年、2022年の最高速トップ10を見ていく。各年のコースコンディションと決勝中の最高速トップ10は以下の通り、すべてドライレースとなっているので比較&検証しやすいと思う。

2019年の最高速は353.8km/h!

●2019コンディション
気温:29度
天気:晴れ時々曇り
路面コンディション: ドライ
湿度:33%
路面温度:49度

●2019トップ10
1 ミケーレ・ピッロ(ドゥカティ) 353.8km/h
2 カル・クラッチロー(ホンダ) 353.6km/h
3 ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)353.5km/h
4 ジョアン・ミル(スズキ) 353.4km/h
5 ジャック・ミラー(ドゥカティ) 353.2km/h
6 アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ) 350.4km/h
7 ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ) 349.6km/h
8 カレル・アブラハム(ドゥカティ) 349.6km/h
9 アンドレア・イアンノーネ(アプリリア) 348.7/h
10 ポル・エスパルガロ(KTM) 348.4km/h

2019年のドゥカティのデスモセディチGP。最新マシンと比較するとカウリングの形状は控えめだ。

2019年のアプリリアはまだまだコンサバな仕様に見える。ホンダの空力デバイスは横長のボックス形状。

ドゥカティの3段階の空力デバイスは、この頃からインパクトが大きい。アンダーカウルはまだまだ細身の時代だ。

2019年の表彰台。ドゥカティファクトリーのダニロ・ペトルッチが地元ムジェロでキャリア初優勝。2位にマルク・マルケス、3位にアンドレ・ドヴィツィオーゾが入った。

2021年の最高速は356.4km/h

●2021コンディション
気温:23度
天気:晴れ
路面コンディション:ドライ
湿度:30%
路面温度:42度

●2021トップ10
1 ジャック・ミラー(ドゥカティ) 356.4km/h
2 ミケーレ・ピッロ(ドゥカティ) 356.4km/h
3 ヨハン・ザルコ(ドゥカティ) 354km/h
4 イケル・レクオーナ(KTM) 352.9km/h
5 ブラッド・ビンダー(KTM) 352.9km/h
6 アレイシ・エスパルガロ(アプリリア) 352.9km/h
7 アレックス・リンス(スズキ) 352.9km/h
8 ジョアン・ミル(スズキ) 351.9km/h
9 ヴァレンティーノ・ロッシ(ヤマハ) 351.7km/h
10 ミゲール・オリベイラ(KTM) 351.7km/h

ドゥカティは風を受け止める前面に様々な空力デバイスを装着。ダウンフォース、タイヤのグリップ、安定感、さらに冷却などを考え複雑な形状になっている。

アンダーカウルにも空力デバイスを装着。ハイパワー&安定感を求めるとマシンにはある程度大きさが必要になるのかも。ドゥカティは他のマシンと比較すると少し大柄な印象がある。

2021年のムジェロは、ポールポジションからスタートしたファビオ・クアルタラロが優勝。KTMのミゲール・オリベイラが2位。スズキのジョアン・ミルが3位に。最高速では10位にオリベイラが入るが、クアルタラロとミルはトップ10に入っていない。これがレースの面白いところ。

2022年の最高速は363.6km/h!

●2022コンディション
気温:22度
天気:晴れ時々曇り
路面コンディション:ドライ
湿度:60%
路面温度:36度

●2022トップ10
1 ホルヘ・マルチン(ドゥカティ) 363.6km/h
2 エネア・バスティアニーニ(ドゥカティ) 358.8km/h
3 ダリン・ビンダー(ヤマハ) 358.8km/h
4 ヨハン・ザルコ(ドゥカティ) 357.6km/h
5 アレックス・リンス(スズキ) 357.6km/h
6 フランチェスコ・バニャイヤ(ドゥカティ) 356.4km/h
7 ミゲール・オリベイラ(KTM) 356.4km/h
8 ジョアン・ミル(スズキ) 355.2km/h
9 アレイシ・エスパルガロ(アプリリア) 355.2km/h
10 ポル・エスパルガロ(ホンダ) 355.2km/h

近年、空力デバイスとライドハイトデバイスに積極的に取り組むドゥカティとアプリリアのイタリアン。

ミドルカウル、アンダーカウルにも空力デバイスを装着し、最近はシートカウルもセットに考えるようになってきた。未来のスポーツバイクの形はどうなっていくのだろう?

2022年、勝利したのはフランチェスコ・バニャイヤだった。ヤマハのバイク作りは最高速重視でないため、先行で逃げきれないと勝てない厳しい戦いが続く。

2019年の最高速は353.8km/h。2022年は363.6km/h。わずか3年で10km/h近く伸びる!

2020年は新型コロナウイルスの影響でムジェロでの開催はなかったため比較できないが、2019年から比較すると2022年までに最高速は約10km/hも向上。10番目の数値を過去と比較しても、最高速は着実に底上げされているのがよくわかる。

プロダクトの進化としてこの数値はわかりやすくて魅力的だが、バイクはライダーが剥き出しで争われるモータースポーツ。この速度での1コーナーでのオーバーテイク(さすがにMotoGPライダーでもミスが多い)は緊張感が伴う。と言いつつ、2023年はどこまで最高速が伸びるのだろう……と期待してしまう自分もいるのが事実。

しかし、2024年からは、MotoGPは一部(40%以上)カーボンニュートラル燃料を使うことになっており、2027年には100%カーボンニュートラル燃料になる方向で話は進んでいる。カーボンニュートラル燃料になることでパワーは落ちるのだろうか? そのあたりの技術面や環境面にも注目して、今後のMotoGPの最高速を見ていきたいと思う。

カーボンニュートラル燃料の導入で、MotoGPマシンは速さをキープできるのか? ムジェロの最高速で今後も検証していければと思う。


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