バイクではまだあまり聞きなれない「TPMS」は、タイヤ・プレッシャー・モニター・システムのこと。走行中に常にタイヤの空気圧を監視して、異常があれば警告灯やマークで表示してライダーに教えてくれる。安全性を向上する装備として、今後は普及が間違いナシ……かも?
●文:伊藤康司 ●写真:カワサキ、ホンダ、BMW、ハーレーダビッドソン、ドゥカティ
空気圧の低下が原因のトラブルや事故が増えている
いまさらだが「タイヤの空気圧」は重要だ。適正な空気圧によってタイヤの形状を保ち、ハンドリングや乗り心地を確保するからだ。バイクの場合はバンクして曲がるが、その際にタイヤが潰れてグリップするのも、空気圧が適正でないときちんと性能を発揮できない。
また空気圧が低すぎると走行抵抗が高くなるため燃費が悪化する。タイヤの空気が抜けた自転車に乗るとペダルを漕ぐのが重くなることに気づくが、バイクの場合も同様でエンジンのパワーを余計に使ってしまうワケで、サステナブルな時代としてはこれも無視できない。
意図的に、もしくは間違えて過剰に空気を入れない限りは、タイヤの空気圧が高すぎるというコトはあまりないだろうが、空気圧が低くなりすぎる要素はたくさんある。タイヤのゴムは拡大して見るとスポンジのように隙間があり、とくに問題が無くてもわずかずつではあるが空気は抜けていく。また気温が下がると空気の体積が減るので、自動的に空気圧は下がる。
そしてチューブレスタイヤの場合は、釘などの異物が刺さっても一気に空気が抜けないので安全だが、それがかえってパンク(徐々に空気が抜けるスローパンクチャー)に気づかない原因になる場合もある。
と、前置きが長くなったが、このようにタイヤの空気圧はとても重要なので「TPMS=タイヤ・プレッシャー・モニター・システム」が生まれたのだ。
じつは四輪の場合、空気圧の低下に起因するパンクや、それに伴う事故件数が世界的に見てもかなり多い。そのため米国では2007年から、欧州は2012年、中国も2019年から新車(四輪)のTPMS装備が義務付けられた。日本ではまだ義務化されていないためか、比較的高額な車しか装備していないのが現状だが……。
ともあれバイクにおいても海外では近いうちにTPMS装備が法制化される可能性はあるだろう。
TPMSの仕組みは?
TPMSの機構にもいくつか種類があるが、近年はホイールに空気圧センサーと、検出した値を電波で発信する送信機を装備する「直接式TPMS」が主流。そして車体側では信号を受信し、メーターやディスプレイに空気圧を表示したり、異常があれば警告灯や警告マークでライダーに伝えるのだ。
「頻繁にエアゲージでチェックをしていれば必要ないのでは?」と思う方もいるだろうが、TPMSは走行中に「常時チェック」しているところが大きなメリット。たとえば前述したようにチューブレスタイヤは異物が刺さっても一気に空気が抜けにくいため、パンクに気づかず走り続けてしまうことがある。しかしTPMSを装備していれば、そんなトラブルも早期に気づくことができるのだ。
バイクもTPMS装備車が増えてきた
現時点ではバイクはTPMS装備が義務化されていないが、すでに標準装備している車種もある。現行の国産モデルではカワサキのニンジャ H2 SXとホンダのゴールドウイングの2車で、いずれも装備が充実したツアラーモデルだ。
海外メーカーではBMWが最新モデルの多くに採用し、ハーレーダビッドソンも装備車が多い。トライアンフは車種によってオプション設定があり、ドゥカティもムルティストラーダに純正アクセサアリーの設定がある。
BMWやハーレーダビッドソンの動向を見ると、バイクもTPMS義務化が近いのでは……という気がしなくもない。そうなると日本製のバイクも輸出モデルに装備が必要になるため、一気に普及する可能性がある。
TPMSって「後付け」できるの?
既存のバイクはTPMSを装備しない車種がほとんどだが、やはりあった方が安全だし便利……で、じつはすでにアフターパーツとしてTPMSは各種販売されている。センサー部はエアバルブのキャップと交換するだけで簡単に装着できるものや、空気圧を表示するモニター(ハンドルやメーター近くに装着できる)がセットになったタイプ、スマートフォンをモニターに使うタイプなど様々。気になる方は『バイク用 TPMS』で検索してみよう。
ともあれTPMSを装備しなくても、タイヤの空気圧チェックが重要なのは変わらない。だからエアゲージを用意して、バイクに乗る際はできるだけ頻繁にチェック。ツーリング時にも携帯して、少々面倒だが昼食時や宿泊したら出発前などにチェックすれば、TPMSの常時モニタリングには及ばないが、空気圧の低下にいち早く気づくことができるだろう。
まずはエアゲージを手に入れるのもアリ
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