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●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:MSセーリング
カスタムの効果や面白さが分かりやすZRX1200ダエグ。そしてパワーアップして足まわりに手を加えると驚くほどスポーツ性を向上させらることができるのだ。
ビッグネイキッドとは思えない運動性と機動力を楽しむ!
ZRX1100を発端とするこのシリーズは、その後ZRX1200R系、ZRX1200ダエグに進化。そのすべてに共通するコンセプトはスポーツネイキッドで、他メーカーのビッグネイキッドがモデルチェンジの度にコンセプトを変える中、ZRXは一切ブレずにスポーツ性の追求し続けた。
ダエグは1200ccだからはそれなりの車格で存在感もあるものの、1200〜1300ccネイキッドとしてはコンパクトで細身。僕はこの独特のスポーツ性を持つZRXシリーズが大好きで、今は手放してしまったがZRX1200R、ZRX1200ダエグを乗り継ぎ、10年で10万キロほどを楽しんだ。
ZRX1200Rではエンジンも3度ほどチューニングし、後軸で170psほどを達成。ダエグではサブコンを装着してインジェクションチューンを施し、カーボンホイールなどを装着してハンドリングを追求した。
久しぶりに目の前にあるZRX1200ダエグは、千葉のMSセーリングが手を入れた1台。カワサキらしいライムグリーンとゴールドのコントラストが存在感を際立たせる。MSセーリングは僕のZRXをずっと面倒みてくれていたショップで、エンジン内部やサブコンなど専門的なチューニングも相談可能。今もZRXを愛するユーザーの頼れるショップしてその手腕を振るっている。
前後サスペンションはオーリンズ製。フロントキャリパーはブレンボ製ビレットの2ピースでブレーキパッドはメタリカを装着。制動力もリリース感もとてもわかりやすい操作感で、操る醍醐味に貢献。
今回、試乗させていただいたダエグのエンジンはノーマル。スロットルボディもノーマルだが、K&Nのパワーフィルターを装着して吸気効率をアップ。ケイファクトリー製チタンフルエキゾーストD-Headerで排気効率をアップさせている。吸排気効率を大幅に向上させたインジェクション車の燃調補正に欠かせいないサブコンはラピッドバイク製を装着している。
足まわりにもきちんと手が入り、前後サスペンションはオーリンズ製で、ホイールはマルケジーニ製。フロントキャリパーはブレンボのビレット2ピースでラジアルマウント化し、ラジアルマスターシリンダーはアクティブのゲイルスピード製を装着している。
サーキットなどを走ると適度に揺れる車体も挙動がわかりやすくて面白い。そして「もっとこうしたい!」という欲望に応えてくれるカスタムパーツがたくさん用意されているのも魅力。
ノーマルダエグと比較したパワー&トルクグラフ。中速から高速域にかけて大幅にパワーアップ。実際に走り出すとこのパワーグラフをそのまま体感することが可能だ!
ノーマルよりも20kgほど軽くなり、コーナーでの振る舞いが激変
ダエグは2016年にファイナルエディションを発表。ダエグが現役の頃はこういった様々なカスタムに試乗させていただいたが、最近はそんな機会も減り、この手のカスタムは本当に久しぶり。今や中古車でも程度がいいと200万円オーバーが珍しくないダエグ。当時はなかった新しいアイテムやタイヤを使いながら、少しずつ自分好みに仕上げていくのも面白いと思う。
エンジンを始動し、少しブリッピングすると「ズオッズオッ」とK&Nのエアフィルターが大きく空気を吸い込む。車検対応のマフラーはチタン特有の甲高いエキゾーストノートを発しつつもジェントルな音質だ。跨るとビッグネイキッドにバックステップのポジションが懐かしさと安心感を教えてくれる。そうそうこの感じ。腰を後ろに引き、自然とリヤタイヤの動きを感じやすいポジションをとる。
走り出すと各パーツにより圧倒的に軽くなった車体は、どこまでも素直にバンクしていく。ダエグのこの直立付近から向きを変えるレスポンスの良さは、ビッグネイキッドとは思えないほど俊敏。MSセーリングのダエグはさらにそこの精度と安心感を上げ、まるでスポーツバイクのように旋回に移行していく。
この動きの良さに貢献しているのがアクティブ製のフロントカウル移設キットで、ビキニカウル、ヘッドライト、メーターをフロントフォークでなく、フレームマウントすることで、フロントタイヤがステアする動きをよりリニアにしているのだ。
剛性が高く、動きの精度が素晴らしいオーリンズサスはそれほどストロークはないものの、物凄く丁寧に路面を追従し、旋回に入るとミシュランのパワーRSのグリップ感が手に取るように伝えてくる。
小さなビキニカウルに伏せて、スロットルを開けるとカワサキ4気筒特有のザラリとしてフィーリングと共に豪快な加速を見せる。今回はサーキットも走ってみたのだが、バンク角も深く、どこまでも攻められる迫力のハンドリングを楽しむことができた。
純正のスロットルボディにK&Nのパワーフィルターを装着。燃調はラピッドバイクでセッティング。MSセーリングではシャシダイナモを使って理想空燃費に合わせる。スロットル開け始めの過渡特性がよく、トラクションをつくりやすい。
これぞビッグネイキッド! そのダイナミックなハンドリングに夢中になる
鉄フレーム、2本サス&正立フォーク。この往年の組み合わせを持つ国産ビッグネイキッドは絶滅寸前。中でもZRX1200ダエグはスポーティなビッグネイキッドの集大成とも言える完成度を誇ることを改めて痛感。運動性、機動力、そしてサーキットを攻めても心強い完成度と、カスタムによるオリジナリティの追求は最新バイクにはない奥深さを持っている。今のバイクでこんな自由な感性でカスタムを楽しめるバイクがあるだろうか。
カスタムに没頭するほど、自分の好みやライディングスタイルに近づき、ダエグとの一体感が高まっていった感覚が蘇る。「ビッグネイキッドの中でいちばんハンドリングがよく、いちばん軽くてコンパクト」だったダエグ。今のミドルクラスのネイキッドにはない逞しさと豪快さ、そしてビッグバイクらしさに溢れている。
大柄でありながらコーナーでの軽々とした振る舞いは、いまもまったく色褪せていない。完成度の高いMSセーリングのバイクで走るほどに「やっぱりダエグは面白い」という思いが強くなっていく。
オーナーの「こうしたい」という要望に応えてくれるパーツは、今でもたくさん用意され、それはダエグの現役当時よりも充実していると思わせるほど。「オトコカワサキ」「走りのカワサキ」「攻めのビッグネイキッド」をリアルに感じさせてくれるダエグは、これからも輝きを増していくだろう。
フロントカウルはアクティブ製のステーでフレームマウント。ビキニカウルが少し前に飛び出すスタイリングになるが、ハンドリングは大幅に向上。トップブリッジとメーターの間にも若干の隙間ができる。アルミ削り出しのトリプルツリーはケイファクトリー製。
ハンドルはマジカルレーシング製のカーボン。剛性の高いオーリンズフォークやトリプルツリーを使うと、サーキットでハイグリップタイヤのグリップも出しやすくなる。ラジアルマスターシリンダーはアクティブのゲイルスピード製だ。
ちなみに今からこの楽しさを味わいたい方は、本当に信頼のできるバイクショップでカスタムや整備をすることがポイントになる。特にカスタムされたバイクを手に入れる場合は、「価格が高い=良いバイク」という図式はなく、なかなか見た目では判断がつかないから注意していただきたい。
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