皆んなZが大好きなんだ!

カワサキ Z900RS&Z650RS比較試乗!【Z900RSの強さとZ650RSの痛快さ】

Z900RSが登場してから様々なオーナーさんと話をしてきたが、意外なことにカワサキからの乗り換えはそれほど多くなかった。外車だったり、ビッグネイキッドからのダウンサイジング、スーパースポーツからの乗り換え、特に多いと思ったのは他メーカーのミドルクラスからの乗り換えだった。いかにこのスタイルを待ち望んでいたライダーが多かったかである。そんなZが大好きなユーザーの選択肢にZ650RSが加入。大人気のZ900RSと新生Z650RSを比較試乗してきた!


●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:冨樫秀明 ●外部リンク:カワサキ

カワサキはZを大切にブランディングし続ける

50年もの間『Zブランド』を育んできたカワサキは本当に凄い。この日もいろいろなZスタイルのバイクが横を駆け抜けて行った。Z900RS、Z1、ゼファー……。「もうすぐ50周年記念のZ900RSが納車なんです」という20代と思われる方が目をキラキラとさせながら声もかけてくれた。そんなZ好きのライダーの年齢層はとても幅広く、Zは本当に様々な世代に浸透している。

そのZとは何者なのか? 少しだけおさらいしてみよう。

1960年代半ば、カワサキの大排気量車は2ストローク3気筒を積むマッハIIIがメインだったが、次世代のバイクとして4ストローク4気筒を秘密裏に開発していた。N600と呼ばれた750ccの空冷4気筒エンジンは、1968年3月に完成し73psを発揮。しかし、ホンダも同じことを考えており、1968年の10月にCB750FOURを発表した。カワサキが発表しようとしていた目前の出来事だった。

CB750FOURのデビューは、カワサキだけでなく多くのメーカーを困惑させた。ヨーロッパ勢も排気量拡大を試みていたが、エンジン形式はイギリス勢が2気筒や3気筒、ドイツのBMWは水平対向2気筒で、ホンダの4気筒の前ではどうしても色褪せて見えてしまい、その結果、倒産するメーカーも多かった。

もちろんカワサキ開発陣の落ち込みも大きかった。しかし、気持ちを新たに開発をリスタート。排気量を900ccに上げ『ホンダに勝つ』『世界最速になる』ことを目的に進んでいった。CB750FOURがなければZ1は750ccだったかもしれないし、DOHCがスタンダードになることもなかったかもしれない。

そして満を持して1972年にZ1を発売。Z1は最高速とゼロヨンで世界最速をホンダから奪取したのだ。CB750FOURやZ1は、今でいうスーパースポーツやフラッグシップのような位置付けのカテゴリー。ビッグバイクやネイキッドという概念すらなかった時代の話である。

カワサキは50年も前に誕生した、このZブランドを今でも大切に育んでいる。

1968年に発表されたホンダCB750FOUR。4気筒、4本マフラー、ディスクブレーキなど新しい技術が盛り込まれていた。Z1は1972年に発表。排気量を900ccに拡大し、世界最速をホンダから奪還。アメリカを中心にこの2台が大ブームになっていった。

今回はZ900RSのスタンダード仕様とZ650RSの50thアニバーサリーモデルを市街地、高速道路、ワインディングでテストしてみた。

Z900RS/SE/カフェ/50thアニバーサリー
主要諸元■全長2100 全幅865[845] 全高1150[1190] 軸距1470 シート高800[820]【810】(各mm) 車重215kg[217](装備)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 948cc 111ps/8500pmm 10kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L■キャスター25°/トレール98mm ブレーキF=φ300mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ250mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:138万6000円[141万9000円]【160万6000円】『149万6000円』 ●色:青、黒[黒]【黒×黄】『茶×橙』 ●発売中 ※[]内はカフェ【】内はSE『』内は50thアニバーサリー

Z650RS/50thアニバーサリー
主要諸元■全長2065 全幅800 全高1115 軸距1405 シート高800(各mm) 車重190kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 649cc 68ps/8000pmm 6.5kg-m/6700rpm 変速機6段 燃料タンク容量12L■キャスター24°/トレール100mm ブレーキF=φ300mmダブルディスク+2ポットキャリパー R=φ220mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ●価格:110万円[101万2000円] ●色:茶×橙[緑、灰] ●発売日:2022年4月28日 ※[ ]内はSTD

ネオレトロZ兄弟を乗り比べる

この日は、Z900RS、Z650RS、Z650の3台で出かけた。僕が最初に乗ったのはZ900RSだった。セルを回すと「ボンッ!」という野太い音と共にエンジンが目覚め、「ズオーーーッ」と4気筒ならではの力強いエキゾーストノートを奏でながらアイドリングを始める。一方で隣のZ650RSは比較的軽い感じで「タッタッタッタッ」とツインらしいパルス感を伝えてくる。

ネオレトロなスタイルを共通点を持つZ-RSシリーズだが、エンジンをかけた瞬間からまるで異なる2台であることを伝えてくる。

Z900RSのメッキメガホンマフラーやエンジンのフィン、さらには高機能な足まわりなどは趣味性の高さを感じさせるディテールで、よくつくり込んでいるなぁと感心する。車体はとてもコンパクトにまとめられ、跨るとハンドルはそれなりに幅広だが、とてもリラックスできるポジションを約束。目に映るメッキのハンドルバーや砲弾型のアナログ式メーターにも高級感がある。

そしてなんといっても佇まいが良い。どのアングルから見ても絵になるのは初代Z1から継承されるスタイリッシュさだ。

走り出すと900ccとは思えないコンパクトさで、市街地でもビッグバイクの重量を感じさせない。エンジンはトルクフルで、40~60km/hで走行する時も4速や5速でを使えるほど守備範囲が広い。

途中でZ650RSに乗り換えると、拍子抜けするほど軽い車体に驚く。まずは両車の重量差を見てみよう。

●車両重量
Z900RS 215kg(50thアニバーサリーとカフェは217kg)
Z650RS 188kg(50thアニバーサリーは190kg)

この日試乗したZ650RSは50thアニバーサリーだったためスタンダードのZ900RSとの重量差は25kgになる。バイクは軽いだけで気軽さとフレンドリーさが強まることを改めて認識。バイク置き場からの出し入れに始まり、ツーリング先での取り回しや乗り降りが負担にならないことはとても大切だ。重さのストレスがなくなればバイクに乗る頻度は自然と増えると思う。

Z650RSのポジションはZ900RSよりもハンドルが狭くてコンパクト。ただ着座位置は相応に高い。市街地では驚くほど軽快にリズムを刻める。高速道路では6速で同じ速度で走行していると1000rpm前後Z650RSの方が回転が高くなる。Z650RSは、若干振動が出る領域もあるが、慣れてしまえば気にならないレベルだ。

重量以外にも軽さ伝えてくれるディテールも比較してみたい。

●リヤタイヤサイズ
Z900RS 180サイズ
Z650RS 160サイズ

●ホイールベース
Z900RS 1470mm
Z650RS 1405mm

タイヤサイズはZ650の方が細く、ホイールベースは65mmも短い。さらにエンジンは、並列4気筒に比べると並列2気筒の方が圧倒的にスリム。これが数値以上にバイクを軽く感じさせてくれる理由だ。

Z900RS(左)は並列4気筒エンジンを搭載しているため、バイクなりに曲がるとそこそこ安定したリーンを披露。しかし、メリハリのある操作をすると驚くほどクイックにコーナーをクリアできる。一方Z650RS(右)は、重量とコンパクトでスリムな車体を活かした軽さが魅力。不安なくアベレージを上げていくやすいのはZ900RSだ。

ガソリンタンク容量はZ900RSが17LでZ650RSが12L。これも重量差にそれなりに大きく影響しているところ。Z650RSは燃費の良さで航続距離を稼ぐ。

フロントフォークはZ900RSが倒立のフルアジャスタブル、Z650RSは正立で調整機構を持たない。リヤサスはZ900RSが伸び側減衰力とプリロードの調整が可能で、Z650RSはプリロードのみ。ブレーキはZ900RSが4ポッドのラジアルマウントでZ650RSが型押しの2ポットキャリパーとなる。この性能差はかなり大きい。走りの機能を求めるならZ900RSを選んだ方が良い。

ブレーキマスターシリンダーはZ900RSがラジアルタイプ、Z650RSが一般的な横置き型。コントロール性や制動力に優るのはラジアルで、レバーを引き込んだ際のタッチだけでなくリリース感も良い。

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