
●記事提供:モーサイ編集部 ●レポート:酒井 博 ●編集:上野茂岐
日本車に特化した、イタリアのバイク販売店を訪ねてみた
イタリアのバイク事情を現地からお届けするコラム「Vento Italiano」(イタリアの風)第3回。今回はイタリア人は日本車をどう見ているかについてお伝えしたいと思います。
日本人としては、やはり「他の国では日本製品ってどう思われているんだろう?」というのが気になるのではないでしょうか。
結論から言うと、イタリアにおける日本のバイクメーカーは欧州の競合メーカーがひしめきあう中でも圧倒的な人気、というのが本当のところです。ブランドと言いましょうか、やはり長年の歴史がその裏付けにあるのではないかと思います。例えば「ホンダの車両を所有していることが嬉しい、誇らしい」という感覚ですね。
ただイタリアの場合、四輪と二輪では少々状況が異なり、四輪は政府が自国メーカーの保護政策をとっていた関係で、驚くことにトヨタは2000年頃でも知名度がありませんでした(今は違いますが)。その一方、二輪に関してはホンダが古くからイタリア国内に二輪車の生産工場を作っていたり、日本車がなじみが深い存在となっています。
*編集部註:イタリアで二輪車の製造を行う「Honda Italia Industriale」は1971年に設立。当初は125ccのモーターサイクルが中心だったが、1990年代頃には大排気量車の生産も担うように。近年で言うとホーネット600やCB1000Rなどの生産を行っていた。現在はフォルツァ350/ADV350、SHシリーズなどスクーターの生産がメインだが、モーターサイクルではCB125Rの生産を行っている。
では、販売の現場ではどうなのでしょうか。今回はミラノに古くからあり、日本のバイクメーカーがイタリアに進出したごく初期の頃から日本車を取り扱い始め、現在では日本の全メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)の正規販売店になっているバイクショップ「JAPAN MOTO」を訪問してみました。
イタリア語で「MOTO」とは「モーターサイクル=自動二輪」のことですので、さしずめ「日本の(メーカーの)バイク屋さん」といった感じでしょうか。まさしくそのまんまというか、直球の店名ですね。
1977年の開業で、今回訪れた車両の販売・修理を行う店舗のほか、ウエアや用品を扱うお店も展開し、二店舗を経営しているとのこと。現在は「新車販売・中古車販売・修理」の三本柱がうまく収益の柱になっているそうです。
本当は日本車を買いたいけど…「コスパ」で中国車を選ぶ人が増えている
ただ、最近はイタリア全体で新興の中国メーカーが新車販売の多数を占めるようになってきて、彼らも日本車だけではなく「無名の中国メーカー」のバイクを扱わざるを得ないと言います。
ちなみに、ヨーロッパでは台湾のKYMCO(キムコ)は確固たる地位を築いています。スクーターマーケットのシェアでは、KYMCOがトップ3に入っている国も少なくありません。そのため、彼らの言う「無名の中国メーカー」にKYMCOは含まれず、きっちりと線引きされています。
実際にそうした中国メーカーの車両を見せてもらいましたが、外観はまるで日本車のようにエレガントな雰囲気であり、日本メーカーが用いるような車名が与えられていました。なぜこうした中国製品の販売が伸びているのでしょうか。その理由を聞いてみると……。
「みんな、本当は日本車が欲しいんだけど、例えば今人気の700〜800ccアドベンチャーバイクの場合、日本車は大体1万〜1万5000ユーロ(160〜250万円前後)する。下手したら、ちょっとしたクルマが買えるよね。一方、中国メーカーのバイクなら8000ユーロ程度(約130万円)のものもある。これならば手が届くって、価格を見て仕方なく中国のバイクを買っている人が多い感じだよ。一応、数年の新車保証も付いているしね」とのこと。
ちなみに昨今の一般的なイタリア庶民の手取り月収は1000〜1200ユーロくらいで、ボーナスも年間で1〜2か月分しかありません。金銭面が大きな理由になるのもわかります。
また「最近ビッグスクーターの売れ行きはどうですか?」と尋ねてみました。というのも、世界的なビッグスクーターの波が始まったのはイタリアなのです。すると、やはりビッグスクーターは変わらず根強い人気があるそうです。
「JAPAN MOTO」オーナーのミケーレ氏は、日本を訪れて仙台のサーキットを走ったことがあるというほど日本車について造詣が深く、日本車を愛しているのですが、「本当はこれまでみたいに日本車中心の商売をしたいのだけど……」という彼の言葉を聞いて、イタリアのバイク市場の変化について考えさせられるものがありました。
最近の傾向はこのようなクロスオーバータイプの車両が人気なのだそうですが、これは中国のメーカー「VOGE」の「650DS」というモデル。エンジンは水冷650ccの単気筒。
「JAPAN MOTO」の店内の一画。カワサキのノボリが多いが、中国「VOGE」 のポスターも。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
レーダーでの速度取締の現場 赤切符と青切符の違いとは? 冬から春にかけては卒業や就職をひかえて新たに運転免許を取得する人が増えてくる時期です。自動車学校・教習所で習ったとおりの運転を心がけているつもり[…]
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
ホンダ・スズキと同じく、浜松で創業した丸正自動車製造 中京地区と同様に、戦後間もなくからオートバイメーカーが乱立した浜松とその周辺。世界的メーカーに飛躍して今に続くホンダ、スズキ、ヤマハの3社が生まれ[…]
国内のカウル認可後に生まれた、1980年代半ばのネイキッドたち オンロードモデルの中で、定着して久しいネイキッド(英語のNAKED=裸という意味)というカテゴリー名。今では「カウルの付かないスタンダー[…]
最新の関連記事(新型バイク(日本車/国産車))
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキのレトロモデル「W230」と「メグロS1」が2026年モデルに更新される。W230はカラー&グラフィックに変更を受け、さらに前後フェンダーをメッキ仕様[…]
2025年モデルの登場から間もないニューカラー設定 2024~2025年の年末年始に発売されたKLX230シリーズがマイナーチェンジ。既報のKLX230シェルパSおよびKLX230 DFは車体まわりに[…]
早くもモデルチェンジで“S”版に! ベーシックな空冷トレールモデル カワサキの新トレッキングマシンとして2024年12月25日に発売されたばかりのKLS230シェルパが早くもモデルチェンジ。2026年[…]
まるで自衛隊用?! アースカラーのボディにブラックアウトしたエンジン&フレームまわり 北米などで先行発表されていたカワサキのブランニューモデル「KLX230 DF」が国内導入されると正式発表された。車[…]
若月佑美が初のバイクを納車、購入モデルは? 2025年の2月に免許を取得したという若月佑美さん。 当時の話は以下インタビューで詳しく語ってもらったが、以降はどのバイクを買うか悩みに悩んだという。 そん[…]
人気記事ランキング(全体)
発売当初のデザインをそのままに、素材などは現在のものを使用 1975年に大阪で創業したモンベル。最初の商品は、なんとスーパーマーケットのショッピングバックだった。翌年にスリーピングバッグを開発し、モン[…]
軽量で取り扱いやすく、初心者にもピッタリ 「UNIT スイングアームリフトスタンド」は、片手でも扱いやすい約767gという軽さが魅力です。使用後は折りたたんでコンパクトに収納できるため、ガレージのスペ[…]
まるで自衛隊用?! アースカラーのボディにブラックアウトしたエンジン&フレームまわり 北米などで先行発表されていたカワサキのブランニューモデル「KLX230 DF」が国内導入されると正式発表された。車[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキのレトロモデル「W230」と「メグロS1」が2026年モデルに更新される。W230はカラー&グラフィックに変更を受け、さらに前後フェンダーをメッキ仕様[…]
最新の投稿記事(全体)
竹繊維を配合した柔らかく軽量なプロテクターシリーズ 「お気に入りのジャケットを、もっと涼しく、もっと快適にしたい」、そんなライダーの願いを叶えるアップグレードパーツ「バンブーエアスループロテクター」シ[…]
対策意識の希薄化に警鐘を鳴らしたい 24年前、当時、編集長をしていたBiG MACHINE誌で「盗難対策」の大特集をしました。 この特集号をきっかけに盗難対策が大きな課題に そして、この大盗難特集号は[…]
「自分には自分にやり方がある」だけじゃない 前回に続き、MotoGP前半戦の振り返りです。今年、MotoGPにステップアップした小椋藍くんは、「あれ? 前からいたんだっけ?」と感じるぐらい、MotoG[…]
夏ライダーの悩みを解決する水冷システム 酷暑の中、ヘルメットやライディングウェアを身につけて走るライダーにとって、夏のツーリングはまさに過酷のひとこと。発汗や走行風による自然な冷却だけでは追いつかない[…]
コスパも高い! 新型「CUV e:」が“シティコミューターの新常識”になる可能性 最初にぶっちゃけて言わせてもらうと、筆者(北岡)は“EV”全般に対して懐疑的なところがある者です。カーボンニュートラル[…]
- 1
- 2