真夏の白バイ警官はどんな暑さ対策をしているの?【沖縄県警の元警察官が解説】
とにかく暑すぎる真夏のツーリング
連日猛暑が続いていますね。ライダーにとって、ツーリングをする際の気温や天候って非常に気になるものですが、みなさんはどういった暑さ対策を行っていますか。ここ最近の夏の気温は、数十年前よりも上昇しているので、それなりの暑さ対策が必要になってきます。
一番気を付けたいのは、やはり熱中症ですね。私は、真夏の沖縄で白バイに乗車していたわけですが、その際どういったことに気を付けていたのか、こんなものがあればよかったのになあ、といったことを記述させていただこうと思います。
白バイ乗車時の暑さ対策
私が現役だった2000年代、白バイ乗車時は、みなさんご存知の青色の制服のなかに、プロテクターを着用していました。当時は制服の下に着用するものに関しては特に規定がなかったので、夏場は半袖Tシャツを着ていました。
ですが、現在は通常の制服(みなさんが普段警察署や交番で見かけるお巡りさんの制服)を中に着用しないといけなくなっています。夏場に長袖長ズボンという格好だけでも暑いのに、制服の下に着るものまで制限されるのは本当につらいものだと思います。
さらに、無線機のついたヘルメットやグローブ、ブーツ、帯革等を身にまとうわけです。帯革というのは、腰に付けている白色の太いベルトのことで、これに手錠や警棒が備え付けてあり、多少の重さがあります。
そんなわけで、夏場の交通取締りを行う際は、警察本部や直属の上司から、こまめに水分補給をするように、といったことを耳にたこができるくらい言われます。たしかに熱中症対策として、水分補給をすることはとても大切なことです。夏以外の季節と比較すると、必然的に休憩する機会も増えてくるのですが、私自身は極力水分を取りたくない、というのが本音でした。
なぜかというと、白バイ隊員に限らず、女性警察官はお手洗いにいくのが一苦労なのです。これは男性隊員、男性警察官には理解してもらえなかった大変なことの一つです。先程、帯革について記述しましたが、これの取り外しが実に面倒で、喉は渇くけどトイレには行きたくないといった理由からできるだけ水分を取らないようにしていました。
もちろん、水分補給の大切さや必要性は熟知していましたが、個人的には、喉が渇くしんどさよりも、トイレに行く面倒くささが勝っていたわけです。そのかわりに、と言えるかわかりませんが、乗車する前に塩分を摂取するようにしていました。今思えば、そのおかげで、熱中症になることなく、交通取締りに従事することができていたのかもしれないなと感じています。
私を含め、当時の同僚が行っていた主な暑さ対策は水分、塩分の補給です。なかには首を冷やすために濡らしたタオルを首に巻くとか、ヘルメットの中に保冷剤を貼り付けるといったことをする隊員もいましたが、せいぜいそれぐらいの対策しか行われていませんでした。現在のように、暑さ対策機能が充実した冷却グッズが普及していなかったことも理由の一つかと思います。
以前は考えられなかった様々な冷却グッズが、いまは豊富にあるのでうらやましい限りですね。現在よりも気温が低かったとはいえ、暑さに関しては我慢するしかない、とも言われていたので。
暑くても長袖長ズボンは必須
真夏の暑い時期でも、二輪車乗車時は長袖長ズボンの着用が推奨されていることは、ライダーのみなさんなら、ご存知かと思います。暑いからといってヘルメットを被らないとか、サンダルで運転する、となると違反の対象となります。
一方で、長袖長ズボンの着用は義務付けられているわけではなく、着用していないことは違反にはなりません。道路交通法にそういった規定はないわけですが、なぜ半袖半ズボンで乗ってはいけないという理由を考えたとき、真っ先に浮かぶのは「転倒時の怪我が軽傷で済むように」といったことではないでしょうか。
それも大きな理由の一つではありますが、実は火傷や日焼けを予防するためでもあります。オートバイのマフラーやエンジン等のパーツが直接皮膚にあたると火傷することがありますし。それだけでなく、直射日光による日焼けが重症化して火傷することもあります。これらを防ぐためにも、長袖長ズボンの着用をおすすめします。
意識次第で可能な暑さ対策
オートバイ乗車時に気を付けるべき暑さ対策は他にもありますが、これらを意識して行うことで熱中症等の危険性を回避することができます。それは、信号停車時に前の車両との間隔を空けること。特にトラックなどの大型車の後ろは、排気ガスが非常に熱くなっています。安全対策上はもちろんですが、暑さ対策としても車間距離を十分にとると安心です。
それから、可能であれば、日中の暑い時間を避けて乗りましょう。早朝や夕方以降であれば、熱中症になる確率も格段に下がってきます。ツーリングの計画をたてる際に融通が利くなら時間帯の選択にも、気を付けていただきたいです。
また駐車する際は、日なたより日陰を選んだ方がいいですね。日なたを好んでとめることは少ないかと思いますが、どこにでも日陰があるわけではないので、駐車時用のシートを携帯しておくと便利です。
これらに加えて冷却グッズもどんどん活用しましょう。特に現役時代に欲しかった冷却ベストなんか役立ちます。夏場のツーリング、無理なく楽しんでいきたいですね。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(宅島奈津子)
1分でわかる記事ダイジェスト 白バイやパトカーをカスタムした際、逮捕される可能性。公道を走るとか、公の場に現れるといったケースに限った話。自宅や私有地で行うといいかと思う。 警察官の模倣は問題ない? […]
1分でわかる記事ダイジェスト 白バイ隊員の主な装備 白バイの装備や白バイ隊員の制服が気になる人も多いハズ。筆者は自分もいつか乗ることを前提に、どんなふうになっているんだろうという気持ちで隊員たちを見て[…]
信号機がない交差点 国道や県道などの主要な道路における交差点では、必ずと言っていいほど信号機が設置されています。しかし、そうではない交差点、つまり信号機がない交差点というのも存在します。 あきらかに道[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 自転車事故の増加 自転車による交通事故の割合が近年増加傾向にある。新型コロナウイルスの感染拡大などにより、自転車人口の増加が大きな理由。道交法違反が改正されたり、警察によ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト すり抜けは一般的に使われている言葉ではあるものの、道路交通法上では存在しない言葉。信号待ちの車両や渋滞等で低速走行している車両のすぐそばを追い越す行為を指す。 追い越しと[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
1年前の鈴鹿でのFIM会長とスズキ首脳陣との面談がチャレンジのきっかけ 2024年3月22日、東京モーターサイクルショー(以下東京MCショー)のプレスデイで突如発表された「チームスズキCNチャレンジ」[…]
ホンダは、東京都内にお住まいの方を対象に電動二輪パーソナルコミューター「EM1 e:」を約2か月体験できるモニター500名を募集開始した。 ガソリン車の原付一種が生産終了とのニュースも飛び交うなか、電[…]
これまではガソリン車の原付スクーターで協業 本田技研工業とヤマハ発動機は、ホンダが持つ原付一種の電動バイク「EM1 e:(イーエムワン イー)」、「BENLY e: Ⅰ(ベンリィ イー ワン)」をベー[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 駐車違反の「こんなケースってどうするの」について警視庁に聞いてた。「お腹を下すなどどうしてもすぐに停車したい場合などはどうするのか」という疑問。警察としては数分でも違反は[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 「トマトの旨みがすげえ凝縮されててヤバい」と千明が激賞! ゆるキャン△ SEASON3第8話に登場した「背徳のトマト焼そば」。本家は、山梨県中央市がご当地グルメとして猛プ[…]
人気記事ランキング(全体)
1分でわかる記事ダイジェスト 筆者の経験談や失敗談も含めて、バイクエンジンの暖機運転の必要性を解説。 暖機談義その①クリアランスについて クリアランスについてエンジンは熱を発し、ガソリンが爆発するエン[…]
メグロS1と共通イメージのタンクデザインへ 目黒製作所の創立100周年となる今年、最新モデルのメグロK3が初のデザインアップデートを受けた。昨秋のジャパンモビリティショー2023で参考出品されたメグロ[…]
50マニアは見逃がせない最後の至宝アイテム 2024年6月末の大手新聞紙報道でも騒ぎになった50ccバイク消滅のニュース。これは’25年11月から適用される排ガス規制への対応が困難であるためで、やはり[…]
最短2日間で修了可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付を除い[…]
弁方式がSOHC2バルブの2ストローク……だと?? カワサキモータースが2022年12月26日に出願し、2024年7月8日に公開となった特許には、「2ストロークエンジン」の名称が与えられていた。新規の[…]
最新の投稿記事(全体)
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
1分でわかる記事ダイジェスト とにかく暑すぎる真夏のツーリング 連日、猛暑が続いている。ライダーにとって、ツーリングをする際の気温や天候って非常に気になるもの。真夏の沖縄で、白バイに乗車した際の暑さ対[…]
心臓部も電脳も上級仕様! 空冷ライバル勢を喰らう クラス最速の呼び声も高かったWR250Rが2017年に生産終了してはや7年。セロー250の殿堂入りからも既に4年が経過した。以来ヤマハの250クラスか[…]
現在も機種名として残るレブルやエリミネーターが生まれた時代 スポーツモデルやレーサーレプリカモデルが主流だった250ccクラスに、空冷2気筒エンジンを搭載した異色のアメリカン・ホンダ レブルが登場した[…]
4メーカーがトライアル車を販売 トッププロのアクションを見たら誰だって感激するはずだし、実際にやってみるとムチャクチャ面白いものの、一般に広く普及しているとは言い難い。近年の日本におけるトライアルは、[…]