
バイクのメンテナンスやカスタムが好きな人も、そうでない人も、必ず定期的に交換しなきゃいけないパーツがある。それは“タイヤ”だ。今回は、「減ったから交換しよう」よりも積極的にタイヤ選びを楽しめる方法を、ヤングマシン『上毛グランプリ新聞』などでおなじみの青木宣篤さんに聞いてみた。
●監修:青木宣篤 ●まとめ:高橋剛 ●BRAND POST提供:ブリヂストン
交換するだけで愛車がスポーツバイクにもツーリングバイクにもなる
タイヤは、すごい。バイクのパーツで唯一路面に接しており、その接地面積は、たったクレジットカード1枚分と言われる。たったこれだけでバイクを支え、路面の凹凸を吸収し、グリップ力を発揮し、「走る、曲がる、止まる」のすべてを司っているのだから、ヒジョーにすごい存在だ。
タイヤと路面が接する面積は、クレジットカード1枚分! このわずかな面積で「走る、曲がる、止まる」のすべてを司る。
だが、残念ながら、そのすごさはあまり知られていない。普段タイヤを意識することはほとんどなく、「減ったから、仕方なく替えるか……」ととらえているユーザーが多いのだ。その風潮に、待ったをかける男が現れた。
「タイヤ、めちゃくちゃ大事だよ!」と力説するのは、青木宣篤さんだ。元MotoGPライダーであり、ブリヂストンがMotoGP参戦する時のタイヤ開発を務めた、タイヤのエキスパートである。
「どのタイヤも黒くて丸いから(笑)、あまり変わり映えしないように思われがちだ。でも実は走りのフィーリングに大きく影響する、ものすごく大切な存在。今回は、タイヤの奥深い世界を知ってもらうべく、一般ライダー代表の吉岡WEBヤングマシン編集長を交えて、ちょっとぜいたくなテストをしてみたい」
そのテストとは、同じヤマハMT-09を3台集め、それぞれに異なるブリヂストンタイヤを履かせてフィーリングの違いを確かめる、というもの。同じ3台のバイクで走りのフィーリングが変化すれば、それはタイヤの影響に他ならない、というワケだ。
そしていざ同バイク、別ブリヂストンタイヤの3台で走り比べてみるはずが……、走り出す前にMT-09を見比べて、いきなりYM吉岡が食いついた。
吉岡 全ッ然違うんですね!
青木 えっ!? まだ乗ってないけど(笑)。
吉岡 いやいや、ルックスですよ。タイヤってただ黒いだけかと思ったら、パターンが違うんですよね。これがバイクの印象を大きく変えてくれます。
青木 その着眼点はなかった……。
吉岡 今回履いているのは、「BATTLAX SPORT TOURING T33」、「BATTLAX HYPERSPORT S23」、そして「BATTLAX RACING STEERT RS11」の3タイプ。
溝の多いT33はオールマイティ感が強く、S23はグッとスポーティ。RS11に至っては、MT-09がレーシングマシンのように見えてきます。
青木 レースではいつもスリックタイヤを履いてきたワタシからすると、トレッドパタンに注目するその視点は、すごく新鮮。でも確かに吉岡くんの言う通り、見た目の印象はかなり変わって楽しいね!
走り出す前からテンションが上がるYM吉岡。実際に走行し、バイクを停めてヘルメットを脱ぐと、コーフンは最高潮に達した。そして同じようにコーフン気味の青木さんなのだった。
(写真右)タイヤ選びナビゲーター: 青木宣篤
MotoGPで活躍し、ブリヂストンMotoGPタイヤや、スズキMotoGPマシンの開発もライダーも務めたエキスパート中のエキスパート。ライディングやマシン、タイヤに関してはワールドクラスの経験とオタク級の知識の持ち主だ。’22年の鈴鹿8耐をもって現役レーシングライダーを引退したが、今も高性能スーパースポーツモデルを限界域で楽しむべく、トレーニングを欠かさない。
(写真左)一般ライダー代表: 吉岡直矢(ヤングマシン編集部)
バイクの免許を取得してから30数年を経て、バイクやタイヤのこともそれなりにわかるつもりになっているが、プロライダーの青木さんと一緒に比較試乗するという大役に緊張気味な編集者。ハイエースへのバイクの積み込みはそこそこ上手い。
吉岡 いや〜っ、これはビックリ! 3台がまるで別のバイクのようにキャラクターが変わるんですね!! 全ッ然違う。
青木 同じ3台に異なるタイヤを履かせて同時に走る機会って、そうそうないからね。タイヤを替える時は、だいたい「減ったから」という理由だし、減ったタイヤから新品に替えるとそれだけで印象は劇的によくなるもの。
でも今回は、その先、タイヤの種類による違いを確かめてもらうのが狙い。全ッ然違うでしょ?
吉岡 正直、こんなに変わるとは思っていませんでした。主にツーリング向けのT33と、ちょっとスポーティなS23、よりハイグリップなRS11……と、知ってはいましたが、ここまでキャラクターが違うとは……。
青木 以前のブリヂストンは、大まかにいえば性能ありきのパフォーマンス指向が強くて、その中でのキャラクター違いだった。ある意味、ブリヂストン色が強かったね。
でも最近は、キャラクターの振り幅がより鮮明になった。フィーリングの違いも、今まで以上に分かりやすくなってるはずだ。
吉岡 そうなんです! 青木さんのようなエキスパートはともかく、僕みたいな一般ライダーでもこんなにハッキリ違いが分かるなんて、想像していませんでしたよ。
青木 ははは、同じ人間だからね、ちゃんと感じるものなんだよ。
吉岡 と言いつつ、青木さんはいつもサーキットでスリックタイヤの限界領域まで攻めまくる人。今回のように速度域の低い公道で、しかも公道用タイヤでも、ちゃんと違いは分かるものなんですね。
青木 分かった。そして安心した。実は公道ライディングの経験が少ないので、内心は「ちゃんと分かるかな……」と、ちょっと心配だったんだ(笑)。
吉岡 僕でも分かる。青木さんでも分かる。つまり、誰でも分かる(笑)。
それにしても、こんなにフィーリングが変わるとなると、タイヤはただの消耗品ではなく、カスタムパーツですね!
青木 まさにその通り。ただ、バイクは繊細な乗り物だから、カスタムも慎重にしたいところ。走りのフィーリングが大きく変化するタイヤだから、自分の用途やニーズに合う、合わないも出てきてしまうからね。
どのタイヤをどう選んだらいいか、後述するワタシのインプレッションを参考にしていただければ……。
青木さんが言うには、「異なるキャラクターのタイヤに替えれば、1台だけの愛車でも、スポーツバイクにすることもツーリングバイクにすることもできちゃうよ」とのこと。
例えばスーパースポーツにツーリングタイヤを履かせれば、景色を楽しみながらのんびり走れるし、ビッグネイキッドにスポーツタイヤを履かせれば、よりクイックなコーナリングを満喫できる、という具合だ。
タイヤ以外のパーツでこれを実現しようとすれば、サスペンションをハイグレードなものに交換して好みのセッティングを施し、ライディングモードもそれに合わせて……といった面倒な作業が必要になる。そうしたカスタムはコストがかかるわノウハウも必要だわ、何よりノーマルのまま乗りたい方もいらっしゃるだろう。
そんなときこそ、タイヤの出番だ。消耗した際に必ず交換するものだし、交換することで愛車のキャラクターの変化を楽しむこともできる。その変化の幅は、もしかしたらサスペンション交換以上かもしれない。まさに“重要なカスタムパーツ”なのだ。
だからこそ、タイヤ選びは面白い。以下の情報や青木さんのインプレッションを参考に、「タイヤを替える」というカスタムを楽しんでほしい。
愛車に合ったタイヤを選ぶか、変化を求めるか……“ちゃんと買い”のその先へ
ブリヂストンは、用途に応じて分かりやすいモデルをラインナップしている。この記事で紹介するスポーツラジアル“バトラックス”シリーズで言えば、サーキット走行メインのRS11、ワインディングからストリートまで守備範囲が広いS23、のんびりロングツーリングを楽しめるT33が主だったところだ。
クルマの世界でブリヂストンは“ちゃんと買い”を謳い、「クルマの性能をきちんと引き出せるタイヤを選ぼう」と言っている。バトラックスシリーズであれば、バイクの性能を引き出すのはもはや当たり前。どれを選んでも性能面ではまったく問題ないが、もっと積極的にタイヤ選びを楽しみたい。
タイヤ選びの基本は、まず愛車に何を望むか。何も気にならず、現状の愛車のキャラクターが気に入っているというなら、愛車のカテゴリーにピッタリ合うカテゴリーのタイヤを選ぶといい。
スーパースポーツなら用途によってRS11かS23、スポーティネイキッドやカウル付きだけどスーパースポーツほど尖っていないバイクならS23、ツーリングバイクや穏やか志向のビッグネイキッドならT33ということになる。バトラックスシリーズなら愛車本来の性能を引き出すだけではなく、扱いやすさや安心感のグレードアップも感じ取れるはず。
ツーリング対応のT33から、幅広い用途に応えるS23、スポーツ志向のRS11と、キャラウター分けは明確だ。
愛車に対して「もう少しこうだったらいいな」という希望があるなら、違うタイプのタイヤを試すチャンス! 愛車の元々の性格にかかわらず、T33を選べば穏やかなキャラクターかつ耐久性が高まり、S23ならスポーティで俊敏な反応になり、RS11ならサーキット走行も十分に楽しむことができるようになる。
ツーリング志向の重量車であっても、軽量ハイパワーなスーパースポーツであっても、タイヤによって走りのキャラクターはかなり変化するに違いない。
以下に、バトラックスシリーズそれぞれのキャラクターとおすすめしたいユーザー像を、青木宣篤さんがナビゲートする。
今回はMT-09シリーズ×3台を用意して公道の同条件で比較試乗!
何も気にしたくないならこれ1本! ライフ47%向上(※)のバトラックススポーツツーリングT33
以前、ブリヂストンモーターサイクルタイヤ株式会社の佐藤潤社長が、T33について「景色が楽しめるタイヤです」とおっしゃっていた。公道をあまり走らないワタシにはまったく意味不明だったが(笑)、今回、その真意が染み入るようによく分かった。T33、確かに「景色が楽しめるタイヤ」だった。
BATTLAX SPORT TOURING T33
どういうことか。
スポーツ志向が強いRS11だと、低いギヤ+高いエンジン回転数で走りたくなる。しかしツーリング志向のT33は、高いギヤ+低いエンジン回転数がしっくりくるのだ。
タイヤの側から「これぐらいの速度域で走りなさいね」と指示されるような感覚。それがゆったりのんびりであり、冒頭にも言った「景色が楽しめる」ペース。まさにツーリングにピッタリなタイヤだ。
他のタイヤに比べると接地面積が広い印象で、どっしりとした安定感がある。手応えを感じながらのコーナリングは、ライダーを安心させてくれる。「接地面積は広い印象」とはいうものの、必要以上にタイヤがたわんでいるような傾向はないし、たわませようとする必要もない。
ただただタイヤ任せでOK。タイヤそのものや、タイヤと路面の接地箇所を気にすることなく、まさにのんびりと景色を眺めながら走っていられるのだ。
公道走行なら、グリップ性能そのものにも何の不安もない。MT-09は比較的ヤンチャなネイキッドだが、タイヤグリップに不満は感じなかった。
「このペースで走っていただければ、大丈夫ですよ」と優しく語りかけてくれる、T33。ワイルドなMT-09が、マイルドなツーリングバイクになったかのようだった。
BATTLAX SPORT TOURING T33
公道からサーキットまで俊敏な愛車を楽しみたいなら バトラックスハイパースポーツS23
ヤバイ。楽しすぎる。申し訳ありませんが、仕事だということを忘れて思わず笑顔になってしまった。S23は、それぐらいライディングが楽しめるタイヤだ。
BATTLAX HYPERSPORT S23
サーキットに比べると、公道は速度域が低い。当然の話だが法定速度があり、「スポーティ」と言っても許される範囲は狭いのが宿命だ。だがS23は、その狭い範囲の中でさえ、大きな喜びを与えてくれる。ライディングをイメージしながら、具体的に説明しよう。
公道を流すように走る時、ほとんどブレーキは必要ない。これはバイクにもよるが、今回テストしたMT-09でワインディングを流すにあたって、ほとんどブレーキングはしない。……逆に言えば、ブレーキングするようなペースは、ちょっと速すぎる。
そして、ブレーキングをせずに、スロットルのオンオフだけでリズムを作るようなスムーズなライディングに、S23はピッタリなのだ。
これがまた、実に気持ちいい! コーナーの手前でスロットルを戻して速度を調整し、シューッと旋回。コーナーの出口でスッとスロットルを開けて加速する……。ブレーキいらずのこのライディングは、人間の自然な感覚にフィットしてくれる。
T33に比べるとスポーツ寄りではあるが、行き過ぎてはいない。スロットルのオンオフだけでほどよくたわんでくれるから、低い速度域でも操っているという充実感も強い。あくまでも公道走行の範疇で、爽やかな快感を味わわせてくれるタイヤだ。
こういう「スロットルのオンオフだけで、ほどよくたわむタイヤ」の開発は、実は非常に難しい。「ブリヂストン、よくやった!」と言いたくなる。
BATTLAX HYPERSPORT S23
ハイグリップタイヤならではのマナーを知るユーザーへ バトラックスレーシングストリートRS11
文字通りの「オン・ザ・レール」。狙った走行ラインにビシッと乗れる正確なハンドリングは、「レーシング」を銘打つだけのことはある。
乗り手の操作に対する反応も、非常にクイック。ちょっとハンドルを操作するだけで、MT-09がパッとリアクションしてくれるから、楽しいことこの上ないが、逆に若干のシビアさもある。いい加減に乗ることが許されず、常に操作することを意識しながら走ることが求められるタイヤだ。
BATTLAX RACING STREET RS11
ペースが上がるほどにパフォーマンスを発揮するタイプなので、誘い込まれるように速度アップしそうになる。それもそのはず、サーキットという高速な舞台にも対応する設計だから、公道走行では乗り手のマナーと自制心が求められる。
バイクに関しては、何事においても限界領域に近付いてこそ楽しい、と考えるワタシとしては、限界値が非常に高いRS11は、やはりそこに近付くことが許されるサーキットがもっとも似合うと思う。「自走でサーキット走行会に行く」といった使い方がイメージされる。
もっとも、RS11は生粋のレーシングタイヤとは異なり、公道対応の懐の深さも持ち合わせている。不安感やストレスは一切感じないが、やはりサーキットとレーシングスーツが似合うタイヤであることは間違いない。
BATTLAX RACING STREET RS11
ブリヂストンの新作 バトラックススポーツツーリングT33は何が凄い?
摩耗ライフが47%(※)も向上!
前モデルT32からコンパウンド、構造、パターン、デザインを見直し、接地面後方の滑り域を低減。47%もの摩耗ライフ向上を達成している。
コンパウンド、トレッドパターン、内部構造の全てが新設計!
リヤタイヤのセンター部分に新設計「耐摩耗向上ポリマー」を採用しているほか、ロングライフとウエット性能を高次元で両立させる溝比率の新設計パターンデザイン、フロントにクロスベルト、リヤにモノスパイラルベルトを採用するなど、外から中まですべてが新設計。
穏やかなキャラクターになったが全方位で性能は向上
ツーリングに適したマイルドな特性ながら、直進安定性、旋回性、旋回安定性、前後グリップなど、パフォーマンスは全方位で向上している。
豊富なサイズラインナップ
フロント用 | 120/70ZR17 M/C(58W)TL |
120/70ZR18 M/C(59W)TL | |
120/70R19 M/C 60V TL | |
110/80R19 M/C 59V TL | |
リヤ用 | 150/70ZR17M/C(69W)TL |
160/60ZR17M/C(69W)TL | |
170/60ZR17M/C(72W)TL | |
180/55ZR17M/C(73W)TL | |
190/50ZR17M/C(73W)TL | |
190/55ZR17M/C(75W)TL |
以下は2026年以降追加予定サイズ
フロント用 | 120/60ZR17 M/C (55W) TL |
110/80ZR18 M/C (58W) TL | |
120/70ZR19 M/C 60W TL | |
リヤ用 | 160/70ZR17M/C (73W) TL |
160/60ZR18M/C (70W) TL |
編集部・吉岡のショートインプレッション
BATTLAX SPORT TOURING T33
異なる種類の新品タイヤを同じバイクに履いて比較試乗する、そんな機会はなかなかない。違いがちゃんとわかるのか不安だったが、公道で無理のないペースを保ちながらでも十分に感じ取ることができた。
スロットル操作とかギヤチェンジとか難しいことを考えなくても走ることができて、そのぶん生まれた余裕で周囲の景色を楽しめるのはT33だ。バイクが物静かな脇役に回ってくれているかのようで、安心感とサポートされている感が凄い。これで耐久性も高いというのだから、本当に何も気にせずさまざまなシチュエーションを走り抜けることができそうだ。
一方、バイクが「もう少しちゃんと操作しなさいよ」と主張してくるかのように感じたのはRS11だった。これはこれで凄く楽しいが、景色よりもカーブの曲率や路面に意識がいく。バイクとの対話を楽しみたい人にはうってつけだろう。
公道ペースでもウキウキする走りが楽しめるし、難しく考えなくてもさりげなくサポートしてくれるのがS23。街乗りでも軽快さなどの恩恵を受けられる。積極派のライダーに最もシンクロしてくれそうだと感じた。
どのタイヤも異なる魅力がある。これらをしっかり作り分け、キャラクターはそれぞれでも、安心感は共通している。ブリヂストンのラインナップはさらに盤石になったと言えそうだ。
※ライフ47%向上のテスト条件
時期:2023年11月
車両:Kawasaki Z10000SX
コース:イタリア、サルディーニャ島
※本記事はブリヂストンが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。