RS11に匹敵するグリップ力とT32に通じる快適性を獲得した、ブリヂストン・バトラックス・ハイパースポーツS23
スポーツライディングとツーリングの両方を過不足なく楽しみたいライダーにとって、ベストチョイスになり得るタイヤ。それは既存のSシリーズにも該当する話だが、2024年2月から発売が始まった最新作のS23は、あらゆる面で先代のS22を凌駕する性能を備えていた。
サーキット試乗では多くのライダーがエッジグリップを絶賛
近年のブリヂストンが販売する公道用ラジアルタイヤの主力は、サーキットを多分に意識したハイグリップスポーツのRS、ツーリングでの快適性やライフの長さを重視したT、その2種の中間的な資質を備えるSの3種に大別できる。当記事で紹介するのはSシリーズの最新作として、2024年2月に発売されたバトラックス・ハイパースポーツS23で、2023年11月にはサーキット試乗会が開催され、すでに多くのインプレが公開されているから、それらをご覧になった方は大勢いるだろう。
もっとも、僕は2023年11月のサーキット試乗会には参加していないので、S23は今回が初体験である。そして事前にいくつかのインプレ原稿・動画を読んだ・見た僕は、このタイヤの方向性を“全方位的な性能向上を実現していても、開発陣が最も重視したのはサーキット・ドライ路面でのエッジグリップだろう”と推察。何と言っても、広報資料のレーダーチャートではドライ路面でのエッジグリップが突出して向上しているし、インプレでは多くのテスターがフルバンク時の安心感を絶賛していたのだから。
と、冷静に記してみたものの、今回の試乗の舞台はフルバンクする場面がわずかしかない、タイヤのエッジを使う機会が少ない一般公道である。だから僕としてはS23の性能が理解できるかどうかが不安だったのだけれど、市街地や高速道路、晴天に加えて雨天の峠道をじっくり走り込んでみたところ、先代のS22とは一線を画するS23の意外な資質に驚き、困惑し、感心することとなった。
良好な乗り心地と悪条件に対する強さ
S23を履いたスズキGSX-8Rで走り始めて、最初にオヤッ? と感じたのは乗り心地の良さ。べつにGSX-8RのノーマルやS22が悪かったわけではないのだが、S23はスポーツ指向のタイヤらしからぬ……と言いたくなるほど、路面の凹凸のいなし方が上質で滑らか。何だか乗り手を護ってくれるような、優しいフィーリングなのである。
続いて述べたいオヤッ? は、市街地の曲がり角で感じた車体の動き。S22の低中速域のハンドリングはヒラヒラ軽快で(ただし高速域では安定感が徐々に強くなる)、タイヤから“曲がって行こうぜ”、“寝かそうぜ”という主張がビンビン伝わってきたのに、S23にそういった気配はあまり感じられない。よく言えばニュートラルで安定しているけれど、一方で面白味に欠けるとも言える。
そして3つめのオヤッ? は、冷間時とウェット路面での安心感。この要素は前述した乗り心地と同じような話で、GSX-8Rのノーマルや先代のS22が悪かったわけではないのだが、S23はライダーが受け身になりがちな状況でも、前後輪の接地感がわかりやすく、不意のスリップの恐怖が少ないから、悪条件下でもビビらずに済む。いずれにしてもS23の温度依存性は、一昔前のスポーツ系タイヤと比較すると、格段に低くなっているように思う。
そういった事実を認識した僕は、先代のS22をベースにして考えると、左右と言うか上下と言うか、RS11方向とT32方向に手を伸ばしたのが、S23なのだなという印象を抱いた。もっともこの時点での僕は、RS11方向の美点は体験していないものの、サーキット試乗会に参加したテスターの言葉を信頼するなら、その考えは間違いではないだろう。そしてもちろん、2種のタイヤの美点を取り入れたことは素晴らしいのだが、実はこの時点での僕は、S22が備えていたヒラヒラ感が薄まり気味になったことが気にならないでもなかった。ところが……!
先代とは一線を画する、自由度の高さと安心感
ドライ路面で見通しがいいワインディングを走り始めて十数分後、僕は“アレ? ムチャクチャ楽しいじゃないか‼”という気分になっていた。それどころか、ヒラヒラ問題は瞬く間に忘却の彼方へ。そしてその理由を考えつつ、引き続き大小のコーナーが続く道をハイペースで走ってみたところ、S22とS23ではコーナリングの楽しみ方がちょっと異なるかも、という気がしてきたのである。
と言うのも、まずS22の乗り手の操作に対する車体の反応は、速度や荷重に応じて少しずつ違った表情を見せるようで、ワイディングロードでのコーナリングは、ヒラリと寝かせてエッジでガシッと食いつかせる印象だった。ところがS23は、操作に対する反応が寝かせ始めからずっと1:1で、フルバンク中は地面に根っこでも生えているかのような安心感が味わえるうえに、その手前の中途半端な領域からグリップ力の高まりを感じられるのだ。
言ってみれば、タイヤの特性に合わせて走ったほうが楽しいS22と比較すると、S23は自由度が高く、どんな走りをするかは乗り手次第なのである。この差異に安易な優劣は付けられないし、当初の僕のようにS23の主張に物足りなさを感じる人がいるかもしれないが、路面状況や天候を問わずに、速く、安全に、快適に走れるのは、S23のほうだろう。と言っても既存の常識で考えれば、S22も相当に秀逸な資質を備えていたのだが、2種のSを同条件で比較したらS23のほうにより安心感を覚えるのは間違いない。
ちなみに、2023年11月に行われたサーキット試乗会でブリヂストンが準備したテスト車は、リッターバイクがメインだったようで、その選択にはハイパワーとヘビーウェイトに対する同社の自信が現れていると思う。とはいえ、GSX-8RでS23の美点を存分に感じた僕としては、もしかするとこのタイヤの美点は、足まわりにリッタークラスほどのコストがかけられない、ミドルクラス以下のほうがわかりやすいのかも? と感じているのだった。
新コンパウンドと新パターンデザインで全方位にアップグレード
内部構造とプロファイル形状をS22から継承したまま、新開発コンパウンドの追加とパターンデザイン刷新で全方位的に性能を高めたのがBATTLAX HYPERSPORT S23だ。ポイントとなるのは下記の5つ。
- 新開発コンパウンドでエッジグリップを強化
- パターンデザイン刷新でトレッド剛性を最適化
- 新採用パルスグルーブで排水性を高めた
- ウエットの制動距離を3%短縮
- 摩耗ライフ8%伸長
以下に各要素を解説しよう。
BATTLAX HYPERSPORT S23 サイズ一覧
用途 | タイヤサイズ(フロント用1サイズ、リヤ用5サイズ) | メーカー希望小売価格(税込) |
フロント | 120/70ZR17M/C(58W)TL | 2万7830円 |
リヤ | 160/60ZR17M/C(69W)TL | 3万7400円 |
リヤ | 180/55ZR17M/C(73W)TL | 4万1140円 |
リヤ | 190/50ZR17M/C(73W)TL | 4万2130円 |
リヤ | 190/55ZR17M/C(75W)TL | 4万3010円 |
リヤ | 200/55ZR17M/C(78W)TL | 4万5650円 |
※本記事はブリヂストンが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。