2020タイヤ戦線の新潮流

’20新作ラジアルタイヤ ピンポイント解説〈前編:ブリヂストン|ミシュラン〉

バイク本体以上に個性豊かで挑戦的では? そう思えるのが近年の最新ラジアルタイヤだ。特に今年は、従来と異なる潮流が見え隠れする。訪れつつある“タイヤ作りの変換期”について掘り下げるとともに、5ブランドの新作について解説する。■ブリヂストン バトラックスRS11|ミシュラン パワー5

前輪と後輪それぞれで、身内のいいとこ取り?

先代のRS10も含めて、既存のブリヂストンのタイヤは、オールラウンドに使えることを前提としていた。しかしながら、’20年から販売が始まったRS11は、ドライ路面でのグリップと運動性能に特化している。もちろん、耐久性やウエット性能、冷間時への配慮は行われているのだが、同社のストリートタイヤの基準で考えれば、RS11のキャラクターはかなり尖っていると言える。

BRIDGESTONE BATTLAX RACING STREET RS11

実際にRS11を体感したライダーが最初に驚くのは、リヤタイヤの絶大なグリップ力だろう。コーナーの出口でアクセルを開けた際に、後輪が路面にしっかり食い付き、車体をグイグイ前に押し進めていくフィーリングは、レース用タイヤであるR11に通じるどころか、R11そのものなのだから。

一方のフロントに関しては、走行ラインの自由度の高さが感心すべきポイント。ハイグリップタイヤにありがちな操作時の重さが、RS11にはまったく感じられないのだ。これはリヤがR11と同等のフィーリングを目標とし、実際にその技術を投入しているのに対し、フロントはストリートでの扱いやすさを重視しているから。具体的には先代RS10より尖ったプロファイルの採用に加え、スポーツタイヤであるS22と同様のコンパウンドを採用することで、R11とは方向性が異なる軽快感を構築しているのだ。

もちろん、RS11は完全無欠のタイヤではなく、絶対的な運動性ではR11、守備範囲の広さならS22に軍配が上がる。ただし、ワインディングが大好きで、年に何度かサーキット走行会に参加するライダーにとって、RS11はベストチョイスになり得ると思う。

【前はスポーツ、後ろはレーシング?】RS11のフロントコンパウンドはS22用がベースで、プロファイルは先代のRS10と比較すると尖っている。対してリヤにはR11が採用している、ベルトの編み方を部位に応じて変更するV-MS BELTを導入している。

【路面への食い込み性も向上】リヤタイヤのグリップ感に貢献する技術のひとつが、左右ショルダー部に採用された微粒径カーボン。路面への食い込み性が大幅に向上する。

サイズラインナップ:税込メーカー希望小売価格

【カテゴリーごとに頻繁に新作投入】’18年にT31とR11、’19年はS22、そして’20年にRS11と、近年のBSは1年ごとに新世代ラジアルタイヤを市場投入。T31とS22は前作(T30EVO/S21)から3年でモデルチェンジと、そのスパンも短い。

(左上)レーシングR11 (右上)レーシングストリートRS11 (左下)ハイパースポーツS22 (右下)スポーツツーリングT31

ブリヂストン バトラックス レーシングストリート RS11:とにかくドライグリップに特化

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