先代RS10とは完全な別物に進化

ブリヂストン・バトラックス RS11試乗インプレ【ストリート用スポーツタイヤ】

ブリヂストンのストリート用スポーツタイヤ「バトラックス レーシングストリート」が約5年ぶりの全面刷新を果たし、「RS11」に進化した。サーキットも視野に入れて開発されたこのタイヤは、抜群の軽快感とグリップ力が堪能でき、スポーツライディング好きにオススメだ。


●まとめ:中村友彦 ●写真:ブリヂストン/ヤングマシン編集部 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

【TESTER:中村友彦】最新ラジアルから定番バイアスまで、新旧タイヤ事情に異様に精通している、バイク雑誌業界23年目のフリーランス。

ブリヂストンの公道用ラジアルとして、最もハイグリップなタイヤとなる「RS11」。そんな製品に対し、筆者は「サーキット専用のR11をストリート向きにアレンジしたタイヤだろう」と、安直な予想を立てていた。しかし実際のRS11は、R11の技術はもちろん、スポーツタイヤであるS22の技術も取り入れることで独自の世界を構築していたのだ。

【BRIDGESTONE BATTLAX RACING STREET RS11】先代のRS10にはHレンジのミドルクラス用も存在したが、RS11の当面の対応機種は近年の大型スポーツのみ。●サイズ/希望小売価格:F=120/70ZR17(58W)/2万5080円、R=190/55ZR17(75W)/3万8720円、R=200/55ZR17(78W)/4万1030円

ブリヂストンのテストコースで、YZF‐R1に装着されたRS11と先代タイヤのRS10を履き比べた僕が感心したのは、プロファイルを尖らせると同時にS22と同様のコンパウンドを採用した、RS11の前輪の動きの軽さだった。別にRS10が重いわけではないが、車体を傾けようとした際の俊敏な反応とラインの自由度は明らかにRS11のほうが上。

もっとも、それ以上に特筆すべき要素は、後輪の絶大なグリップ力としなやかさだろう。コーナーの立ち上がりでアクセルを開けた際の感触は圧巻で、RS10では車体が横方向に逃げるような状況でも、RS11は路面をしっかり捉えて、車体をグイグイ前に押し進めていくのだ。

いずれにしても、前輪は軽快感、後輪は安心感という形で、前後輪の役割を分けた……と思える特性は、ブリヂストンにとっては新しい試みで、僕にとっても新鮮だった。ちなみにRS11はラップタイムを重視したタイヤではないけれど、同社がオートポリスで行った比較テストにおいて、RS11のタイムはRS10より平均で1.7%速かったそうだ。

【R11から継承したアグレッシブなトレッドパターン】トレッドパターンはサーキット専用のR11をベースとしたドライグリップ重視型。ただし溝形状と配置は公道用に最適化されている。

【粒子の細かな新コンパウンドが路面に食い込む】コンパウンドは前後とも3分割構造で、リヤの左右ショルダー部には、路面への食い込み性を高める微粒径カーボンを含む新コンパウンドを導入し、グリップ力を大幅向上。バンク中に感じたリヤのグリップ力は、まさに路面にガッツリ食い込んでいる、という感触だった。

【新技術「V-MS・BELT」で接地面の長さをアップ】近年のスポーツタイヤは部位ごとにベルトの密度を変えて剛性を調節し、状況に応じた接地面積/面圧を得る手法が流行中(イラスト図中の赤丸内を参照)。ブリヂストンが「V-MS・BELT」と呼ぶこの技術は、R11で初採用され、RS11もこれを踏襲。前後に接地面を伸ばし、グリップ力を高めることに成功している。

前作・RS10との乗り比べでは?

乗り手によっては軽快なフロントの動きに違和感を持つ…、かもしれないRS11に対して、先代のRS10の特性はニュートラル&ナチュラル。とはいえ、’19年2月から発売が始まったS22が、RS10に匹敵する運動性と汎用性を両立していたことを考えると、今の時点でRS10を選択する理由はないと思われる。

先代・RS10の特性はニュートラル&ナチュラル。

[△] グリップ力と汎用性はナンバー1とは言えない

ストリートとサーキットの両方を視野に入れているものの、RS11はライディングプレジャーを徹底追求したタイヤである。逆に言うなら、絶対的なグリップ力ではR11、汎用性の高さではS22に及ばないと言える。

[こんな人におすすめ] レース向きとは言えないが、運動性は一級品

「スポーツライディングは大好きだが、サーキット走行は年に数回くらいで、レース参戦の予定はない」 RS11はそんなライダーにオススメのタイヤ。先代のRS10や既存のS22とは趣が異なる、抜群の軽快感とグリップ力が堪能できる。

補足情報その1:超定番バイアスタイヤ・BT45の後継「BT46」をウェットテスト

RS10/RS11と合わせて、超定番バイアスタイヤのBT45とその後継「BT46」も試してみた。開発目標がウェット性能向上だったため、試乗もウェットのみ。ニンジャ250で比較を行った筆者は、「確かにウェットでの接地感は明らかに向上しているけれど、この感触ならドライでも同様の感触が得られるんじゃないか」と感じた。機会があればドライの比較も行ってみたい。なお、当初発売されるBT46のサイズは前後合わせて25種類だが、順次サイズを拡大し、’22年にはBT45と同等の約50種類が揃う予定だ。

ブリヂストン バトラックス BT46
ブリヂストン バトラックス BT46

トレッドパターンは45を踏襲するが、フロントは逆向きなのも46の特徴。リヤトレッドには銘柄を刻み、雨に強いシリカコンパウンドも新導入。

ブリヂストン バトラックス BT46

【BRIDGESTONE BATTLAX BT46 ●価格:オープン ●発売:’20年2月

補足情報その2:旧車レース用の専用タイヤ「CR11」も登場

RS11とは成り立ちが異なるが、同じくR11の技術を転用して生まれた「CR11」は、ブリヂストン初のクラシックレース専用タイヤ(公道走行不可)。サイズは’70〜’80年代の大排気量マルチを主な対象とした、F=110/80R18 R=150/65R18のみ。

ブリヂストン バトラックス クラシックレーシング CR11
【BRIDGESTONE BATTLAX CLASSIC RACING CR11 ●価格:オープン ●発売:’20年2月

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