懐の深さで巡行もコーナリングも思いのままに

「路面や天候の変化に左右されない万能性」ブリヂストン・バトラックス スポーツツーリング T31 試乗インプレッション

ブリヂストンの主力を担うツーリング向けタイヤ「バトラックス スポーツツーリング T31(BATTLAX SPORT TOURING T31)」を徹底テスト。そこにあったのは高い剛性がもたらすスタビリティとスムーズな走りだった。

タイヤにすべてを委ね、疲労を感じずに走れる安心感と安定性が魅力

ツーリングタイヤはあらゆる環境、あらゆるユーザーの走りをサポートする高い万能性が求められるカテゴリーだ。それゆえ、マーケットの大きさ的にも、投入される技術的にも各メーカーの主力製品が顔を揃えているわけだが、ブリヂストンがラインナップする「バトラックス・スポーツツーリングT31」はそのフラッグシップに当たる。

このT31はT30EVOの後継として開発され、特にウェット路面でのグリップ力が引き上げられた。それでいてコーナリングの楽しみや耐摩耗性も確保されるなど、性能の全方位的な向上が謳われているのが特徴だ。

フィーリングの変化は明確だ。どんな速度域でもタイヤがふんばり、いかにも路面を捉えているという高い接地感を伝えてくれる。車格がワンランク上がったような上質さが常にあり、その印象をひと言で表すとすれば「安心」もしくは「安定」がふさわしい。

[BRIDGESTONE]BATTLAX SPORT TOURING T31

タイヤの存在感は強い部類ながら、ライダーに走らせ方を強要したり、荷重やバンク角によってハンドリングがいたずらに変化することもない。グリップに任せておくだけで一切の不安なく、ギャップやウェットパッチの有無にもさしてとらわれず、スイスイとコーナーをクリアしていける軽やかさが備えられている。まるでなんらかのデバイスが機能しているかのような、おもてなし感が魅力だ。

荷重や面圧といった小難しさから解放されているため、距離を重ねても疲労は少ないに違いない。粛々として巡航することも、喜々としてコーナーを駆け抜けるのも自由自在。ライダーの「こう走りたい」を妨げない懐の深さがそこにあった。ツーリングはもちろん、スポーツにも応えてくれる万能タイヤとしてお勧めできる。

従来モデルのT30EVOと比較すると……

ドライ路面での性能を向上、または維持させたまま、ウェット路面におけるグリップと制動力、ハンドリングを大幅に強化した。
性能を強化しながら耐摩耗性も損なっていない。全天候型の万能タイヤとして完成度が高められている。
T30EVO比でショルダー部分の溝の割合をアップ。バンク時の排水性が確保された一方、センター部分はその割合をダウンし、直進時の剛性が向上している。
【フロント】トレッドのショルダーにはグリップに優れたコンパウンドを、センターとその下地には安定性と耐摩耗性に優れたコンパウンドを採用。【リヤ】シリカの配合がよりきめ細やかになり、ゴムの柔軟性が向上。それによって低温時やウェット時でも高いグリップ感がもたらされている。

BATTLAX SPORT TOURING T31 サイズラインナップ

タイヤはオープン価格が多い中、しっかりとメーカー希望小売価格(10%税込/2019年10月1日より)が提示されているところが好印象。重量車向けのGTスペックは走行中のスタビリティがより引き上げられている。
TESTER:伊丹孝裕 Takahiro Itami

TESTER:伊丹孝裕 Takahiro Itami 2輪専門誌の編集長を務めた後、独立。レーシングライダーとしても活動し、マン島TTやパイクスピーク、鈴鹿8耐などに参戦してきた。

●文:伊丹孝裕 ●写真:真弓悟史
●取材協力:ブリヂストン https://www.bridgestone.co.jp/products/tire/mc/

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