ウェット路面も楽しめるスーパーオールラウンダー! ブリヂストン「バトラックス スポーツツーリング T32」試乗
環境変化にすこぶる強いうえに、乗り手に妙な負荷をかけない。ブリヂストンが誇るツーリングラジアルタイヤ、「バトラックス スポーツツーリング T32」は、長旅の相棒として理想的な資質を備えているのだ。
特性や環境に合わせたアジャストは不要
ブリヂストンTシリーズの最新作、バトラックス・スポーツツーリングT32を履いたCB1300SFをじっくり乗り込んで、僕が面白いと感じたのは、いい意味で、コレといった主張が伝わって来ないことだった。最近のスポーツツーリングタイヤでは、ハイグリップ&スポーツ系ほどではなくても、荷重のかけ方や旋回のさせ方に関して何らかの主張や特徴、やるべきことを感じる機会が増えているのだけれど、T32は接地感が常に安定しているうえに、挙動や反応はどんなときもナチュラルだから、タイヤに合わせて乗り方をアジャストする必要がない。
しかも素晴らしいことに、このタイヤはウェット路面でも、アジャストがほとんど必要ないのである。もちろんドライ路面と同じではないのだが、ワインディングでスポーツライディングを楽しんでいる最中に雨に見舞われても、それまでと大差ない感覚で、ごく普通にブレーキをかけ、ごく普通に車体を寝かせ、ごく普通にトラクションを感じながらアクセルを開けられる。
ただし先代のT31だって、ウェット路面でのフィーリングは良好だったのだ。でも独創的なパルスグルーブを導入して排水性に大幅な磨きをかけ、さらに同社ならではのアルティメットアイを駆使して、リヤの接地面積を13%増やしたT32は、グリップレベルが低くなった状況を、T31以上に気楽に走れる。中でも印象的だったのはブレーキングに対する反応で、スリップを気にすることなく、思い切ってレバーを握り/ペダルを踏み込める感触は、誤解を恐れずに言うならレーシングレインを思わせるほど。いずれにしてもT32を履いたバイクにとって、雨は大きなマイナス要素にならないのである。
もっとも、こういった特性に魅力を感じるかどうかはライダーによりけりだろう。とはいえ、状況を把握していない道がメインとなるツーリングでは、T32の資質は非常にありがたい。事実、今回の試乗で約400kmを走った僕は、タイヤが主張しないことが、あらゆる場面での扱いやすさに結びつくことを、しみじみ実感したのだった。
試乗後に改めて感心したのは、心理的なアップダウンが少ないことによる疲労の少なさ。例えばハイグリップ&スポーツ系タイヤを履いた車両でロングランに出かけると、ワインディングではアップ、市街地の渋滞や雨天走行ではダウンという感じで、走行中の気持ちが何度も大きく揺れ動くのだが、スポーツツーリングタイヤはアップダウンの振れ幅が比較的穏やかで、その点は既存のTシリーズにも通じる話である。ただし、T32 のソツのなさ、環境変化に対する強さは、先代のT31を完全に上回っていて、その特性は乗り手の疲労軽減に大いに貢献していたのだ。
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