
コーナリングは、バイクに乗る楽しみがふんだんに詰まった醍醐味のひとつであると同時に、操作法に正解のない永遠の命題とも言える。ヒザ出し、腰ずらし、ヒザ擦り、足出し、ヒジ擦り……各時代のトレンドはあれど、ライダー&マシンの進化スピードは目覚ましく、あっという間に次のトレンドへ刷新されてきた。そこでGPシーンの50年を振り返り、曲がり方の変遷を分析してみた。サーキット走行に限らず、街乗り派のキミにも何かヒントになるものがあるはずだ!
●文:伊藤康司 ●協力:青木宣篤
リーンウィズからハングオフへコーナリングフォームの大変革期
ロードレース世界選手権、いわゆるWGPが初開催されたのは1949年。現在も有名な欧州メーカーに加え、今は無きメーカーも多数参戦してしのぎを削ったが、当時はエンジン性能ありきで、ありていに言えば“直線勝負”。
スポーツバイクの醍醐味とも言えるコーナリングは“やり過ごすモノ”だった。日本メーカーがWGPに本格参戦を始めた1960年代。車体やタイヤも進化していたが、ライディングフォームは車体の中心に乗る「リーンウィズ」が主流。
ライダーは直線もコーナーも低く小さく伏せ、空気抵抗を減らしてスピードを稼ぐことに集中した……が、じつは欧州ライダーの一部はリーンウィズながらイン側のヒザを少し開き、重心を下げて旋回力を引き出す乗り方を始めていた。
速いヤツは腰をズラす!
そして迎えた70年代。日本のヤマハやスズキが2ストロークで一気に加勢し、レースのアベレージもどんどん上昇。そこに現れ世界中のライダーを驚かせたのが“キング”ケニー・ロバーツ。
シートから腰を大きくイン側にズラして、まさにバイクにぶら下がるような「ハングオフ(当時はなぜか“ハングオン”と紹介)」のフォームは衝撃的で、70年代末からバイクブームを迎える日本でも大流行。カン違いしてアウト側のヒザまで開くライダーもいたほどだ。
他にもアウト・イン・アウトのライン取りやパワーバンド・キープなどなど、(正誤はともかく)GP由来のライディングテクニックがバイク雑誌を大いににぎわせた。
シートから大きく腰をズラすハングオフのフォームを確立したのがケニー・ロバーツ。当時の“ 峠小僧”もこぞってマネした。
[青木宣篤’s Voice]速く走るにはケニーのマネが必然!
レースの世界では「速いヤツのマネをする」んですよ。その時々でトレンドがあるけれど、ケニー・ロバーツがハングオン(正しくはハングオフ)スタイルで現れてチャンピオンを獲るのを見て“コレだ!”って(笑)。
それまでみんなリーンウィズで頑張っていたけれど、速く走ろうとするとバンク角が深くなって物理的な限界になって、マフラーや車体を擦っちゃう。だから50度くらいバンクしたところでしのぎを削っていましたよ。
たとえば鈴鹿の130Rはバンク角的に150km/hで曲がるのが限界だったとするでしょ。でも、ケニーみたいに腰をズラして身体をグッと内側に入れると、同じ速度を47度とか48度のバンク角で通過できる。その“2度、3度のマージン”は、さらにスピードを上げるのに使えるから150km/h限界だったのが152~153km/hで走れるようになる。ひとつのコーナーでこれだけ違えば、ラップタイムに大きく響くからね。
それとケニーの走行ラインは、それまで言われてきた“アウト・イン・アウト”じゃなくて、アウト側を奥まで行ってピョコっと向きを変えて、そこからダーッと加速。立ち上がりの速度が全く違うから、ラップタイムで1~2秒も速かった。コレもマネしたよ!
当時の絶対王者はリーンウィズ
60~70年代にMVアグスタ及びヤマハで、GP最多の15回タイトル獲得したジャコモ・アゴスチーニは、端正なリーンウィズが特徴。
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