「なんでそうなるのよ…」ユーザーを落胆させた通称“耕運機ハンドル”。今では個性として評価する声も。高い走行性能を誇った44年前のスズキの名車[GSX750S]を紹介

「なんでそうなるのよ…」ユーザーを落胆させた通称“耕運機ハンドル”。今では個性として評価する声も。高い走行性能を誇った44年前のスズキの名車[GSX750S]を紹介

1980年代初頭、世界のバイクファンを驚かせたスズキの名車「GSX1100S KATANA」。そのデザインを受け継ぎ、1982年に国内市場へ投入されたのがGSX750Sだ。しかし、期待を集めた新型車には、ファンを落胆させる意外な変更が施されていた。通称“耕運機ハンドル”を巡る騒動とともに、誕生から44年を迎えた名車の魅力を振り返る。


●まとめ:ヤングマシン編集部

名車の姿を変えた国内事情。“耕運機ハンドル”誕生の背景

1980年のケルンモーターサイクルショーで公開され、翌1981年に発売されたスズキ「GSX1100S KATANA」。日本刀をイメージしたシャープなフォルムは、それまでのバイクの常識を覆すもので、世界中のライダーに衝撃を与えた。その独創的なデザインを受け継ぎ、日本国内向けとして1982年2月に登場したのが「GSX750S」である。

排気量を1100ccから750ccへ縮小しただけのモデルと思われがちだが、実際には搭載エンジンの成り立ちが異なる。GSX750Sに採用されたのは、1980年登場のGSX750Eをルーツとする747ccの空冷4ストローク並列4気筒DOHCエンジン。スズキ独自の燃焼室構造「TSCC(ツイン・スワール・コンバスチョン・チャンバー)」を備え、1気筒あたり4バルブを採用する点は1100と共通していた。

1982年に登場した初代GSX750Sと、兄貴分にあたるGSX1100S(左奥)のツーショット。独特のアップハンドルは通称“耕運機ハンドル”と呼ばれ、1100と同様の低いセパレートハンドルに交換するオーナーが続出した。なお、発売当初はスクリーンもオプション扱いだった。

一方、クランクシャフトには大きな違いがあった。組み立て式クランクシャフトを用いた1100に対し、750では一体式クランクシャフトとプレーンベアリングを採用。大排気量ならではの力強いトルクを特徴とする1100とは異なり、軽快で滑らかな回転フィールが魅力だった。最高出力は69PS/8500rpm、最大トルクは6.2kg-m/7000rpmを発揮。さらに、フロントフォークの沈み込みを抑制するANDF機構や、減衰力調整式のリアサスペンションなども装備し、当時の先進技術を投入した本格的なスポーツモデルに仕上げられていた。

ところが、GSX750Sが国内で発売されると、そのスタイリングを巡って賛否が巻き起こる。大きな理由となったのが、1100の特徴である低いセパレートハンドルを採用できなかったことだ。当時の国内における認可基準の関係から、高く持ち上がったアップハンドルを装着して販売されることになったのである。

GSX750Sの特徴でもあるアップハンドルに、当時は落胆するユーザーの声もあった。

低く構えたフロントまわりと、流れるようなタンク形状が生み出す一体感こそがカタナの魅力。しかし、国内仕様ではハンドルだけが大きく上方へ突き出し、オリジナルとは異なる印象になってしまった。その姿から、いつしか“耕運機ハンドル”というあだ名が定着。さらに発売当初はスクリーンも標準装備されず、正式な車名に「KATANA」の文字も与えられていなかった。

それでも1100のスタイルに憧れるオーナーは多く、ハンドルを低いタイプに交換するカスタムが流行。ところが、当時の認可基準に適合しない改造として警察の取り締まりを受けるケースが相次ぎ、これが後に“カタナ狩り”と呼ばれる出来事へと発展した。暴走族問題などを背景に、ハンドルの形状変更に対して厳しい目が向けられていた時代ならではのエピソードといえる。

もっとも、こうした騒動によってGSX750Sの本来の実力が損なわれるわけではない。個性的な外観とは裏腹に、優れたエンジン性能と充実した足まわりを備えたスポーツバイクとして支持を集め、登場初年度には7000台を超える販売を記録したとされる。現在では、かつて不評だった純正アップハンドルさえも、当時の国内事情を物語る独特の個性として評価する声がある。

1984 GSX750S[Ⅲ] KATANA 主要諸元

  • 発売年:1982年
  • 全長×全幅×全高:2250×810×1105mm
  • ホイールベース:1515mm
  • シート高:770mm
  • 車両重量:222.5kg(乾燥重量)
  • エンジン形式:空冷4ストローク並列4気筒DOHC 4バルブ
  • 総排気量:747cc
  • ボア×ストローク:67.0×53.0mm
  • 圧縮比:9.4
  • 最高出力:69PS/8500rpm
  • 最大トルク:6.2kg-m/7000rpm
  • 変速機:5速リターン
  • フロントブレーキ:油圧式ダブルディスク
  • リアブレーキ:油圧式ディスク
  • フロントタイヤ:3.25H19-4PR
  • リアタイヤ:4.00H18-4PR
  • 燃料タンク容量:21L
  • 当時の販売価格:59万8000円

    スズキGSX750Sの系譜(前期:1982〜1983年型)

    1982年 SUZUKI GSX750S

    国内で750ccモデルとして登場した初期型。1100譲りの鋭いスタイリングを採用しながら、認可基準の関係で大きく持ち上がったアップハンドルを装着。スクリーンも標準装備されず、海外仕様とは異なる姿で発売された。外観への不満があった一方、69PSを発揮する空冷4気筒エンジンと充実した足まわりが支持され、初年度には7000台を超える販売を記録したとされる。

    1982年 SUZUKI GSX750S

    1982年 SUZUKI GSX750S[S]

    1982年11月に登場したスクリーン標準装備仕様。同年に国内のカウルやスクリーンに関する認可基準が見直されたことを受け、発売当初は標準装備できなかったフロントスクリーンが追加された。これによって1100のイメージに一歩近づいたものの、独特のアップハンドルは継続。基本的なエンジン性能や車体構成にも大きな変更はなく、初期型の特徴を色濃く残していた。

    1982年 SUZUKI GSX750S[S]

    1983年 SUZUKI GSX750S[S2]

    1983年3月に登場した通称2型。フロントホイールを19インチから16インチ、リアを18インチから17インチへ小径化するなど、足まわりを大幅に変更した。ハンドル形状やシートにも改良が加えられ、スタイリングとライディングポジションを見直している。エンジンも改良され、最高出力は従来の69PSから72PSへ向上。車体色にはグレー系が採用され、初期型とは異なる印象を与えるモデルとなった。

    1983年 SUZUKI GSX750S[S2]

    ※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。