
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
他社とは異なる姿勢で大型車の未来像を提示
冒頭から誠に失礼な表現になるものの、国産2輪車では唯一のロータリーエンジンと、ジュルジェット・ジウジアーロによる独創的なデザインを採用したRE-5は、世間では奇異な目で見られることが少なくない。ただしRE-5は’70年代前半のスズキが社運をかけて開発したモデルであり、乗り味に奇異な雰囲気は一切なかったのだ。
新世代の内燃機関として、ロータリーエンジンが世界中で大きな注目を集めたのは’60〜’70年代前半である。ドイツのNSUとフェリクス・ヴァンケル技師が共同開発し、’59年にその成果を発表したロータリーエンジンは、往復運動する部品が存在せず、回転運動部品のみで構成されることが特徴で、既存のレシプロエンジンと比較して、理論上は大幅な小型化と軽量化、さらには高回転化が可能と言われた。
もっとも歴史が示す通り、登場時に夢の内燃機関ともてはやされたロータリーエンジンは、以後の2/4輪界の主役にはなれなかった。と言うのも、NSUが提示した理論や技術はまだまだ発展途上で、すぐに実用化できるレベルではなかったのだ。結果的にスズキと同時期に着手したヤマハやカワサキを含めて、多種多様なメーカーが手がけたロータリーエンジン車は、ほとんどが試作で終わることとなった。
そんな中でなぜ、スズキがロータリーエンジン車の市販に執着したかと言うと、やはり長きに渡って2スト専業の姿勢を維持して来たメーカーとしては、安易に4ストに舵を切りたくはなかったのだろう。同社がロータリーエンジンに着手したのは’71年だが、それ以前から4ストの研究は始まっており、当時の大型車の世界では4スト4気筒のCB750フォアが我が世の春を謳歌していた。となれば普通は4ストに注力するべきところだが、2スト3気筒のGT750に次ぐ大型車を開発するにあたって、スズキは独自の道を選択。約3年の開発期間を経て’74年秋にRE-5を発売したのである。
だが、ロータリーエンジンならではの美点を追求する一方で、ロータリーエンジン特有のトラブル発生を恐れたためだろうか、RE-5の動力性能は同時代の他のビッグバイク勢に及ばなかったため、販売成績はいまひとつ奮わなかった。とは言え、RE-5の開発を通して数多くの難題を克服し、2スト専業メーカーからの脱却を果たしたからこそ、以後のスズキは大いなる躍進を遂げることができたのだ。
SUZUKI ROTARY RE-5(1974model)DETAILS
【初期型の特徴“茶筒”メーター】日本では茶筒、海外ではTIN CANと呼ばれたメーターは、キーオンするとバネ仕掛けでカバーがパカッと開く。ロックはシンプルなツメで、閉めるのは手動。ギヤポジションインジケーターはLEDを用いたデジタル表示。
シートはオーソドックスなデザインで、既存の同社製2スト各車のようなモールやリベットはナシ。標準装備のアシストグリップは左側のみ。
補器類が左右に張り出しているけれど、GT750と比較すると、ライダーの下半身と接する部分はスリムな印象。
SUZUKI ROTARY RE-5(1974model)SPECS
| 項目 | 仕様・数値 |
|---|---|
| モデル名 | スズキ ロータリーRE-5(1974モデル) |
| 全長(㎜) | 2220 |
| 全幅(㎜) | 870 |
| 全高(㎜) | 1170 |
| 軸間距離(㎜) | 1500 |
| シート高(㎜) | ーー |
| 車両重量(㎏) | 230 |
| 燃料タンク容量(ℓ) | 17 |
| エンジン種類 | 水油冷1ローター・ロータリー |
| 圧縮比 | 9.4 |
| 総排気量(㏄) | 497 |
| 最高出力 | 62hp / 6500rpm |
| 最大トルク | 7.6㎏-m / 3500rpm |
| 変速機形式 | 5段リターン |
| キャスター/トレール | ーー |
| ブレーキ前/後 | Wディスク/ドラム |
| タイヤサイズ前/後 | 3.25-19 / 4.00-18 |
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