「スタイリッシュを極めたスクーター」60年前のロンドンの若者を魅了。バイク好きを惹きつける走りへのこだわり。[ランブレッタ Li 125 Special]

「スタイリッシュを極めたスクーター」60年前のロンドンの若者を魅了。バイク好きを惹きつける走りへのこだわり。[ランブレッタ Li 125 Special]

1960年代、スクーターの代名詞だったベスパに対抗し、独自の進化を遂げたイタリアの名門「ランブレッタ」。モーターサイクルに通じる車体構造とスポーティな走り、洗練されたスタイリングで多くの若者を魅了した。英国のモッズカルチャーとも深く結びついた、その傑作モデル「Li 125 Special」の魅力を1968年式の車両から振り返る。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys

ベスパとは異なるアプローチを見せた「もう一つの至宝」

現在のクラシックスクーター市場ではベスパが有名ですが、かつてその絶対王者に真っ向から勝負を挑み、世界中のファンを熱狂させたブランドがありました。それがイタリア・イノチェンティ社の「ランブレッタ」です。

ランブレッタLi 125 Specialは1965~1969年まで作られたヒットモデル。こちらは1968年モデルのシリーズ3。

今回は、その歴史の中でもひとつの到達点と言える、1968年式の「Li 125 Special」にスポットを当ててみましょう。この時代のランブレッタを前にすると、そのメカニズムと佇まいから放たれるスポーツマインドに、思わず目を奪われてしまいます。

1960年代、イノチェンティ社は宿敵ピアッジオ(ベスパ)に対して明確な差別化を模索していました。単なる実用的コミューターではなく、よりスポーティで高級感のある路線です。その回答として、フラッグシップである「TV(ツーリスモ・ベローチェ)」のエレガントな外観を、扱いやすい125ccクラスに落とし込んで1965年に誕生したのが「Li Special」。

ちなみに同期の150や200はのちに「SX」の名を与えられて進化しますが、125だけは「X」を名乗らず、頑なに「Li Special」のネーミングを守り通しという絶妙な立ち位置もマニア心をくすぐるポイントかと。

フロントとリヤのキャリアは当時のオプションパーツで、クロームの輝きがレトロ感を大いに引き立てています。

走りの本質を追求した「鋼管フレーム」という贅沢な構造

ランブレッタがこれほどバイク好きを惹きつける最大の理由は、ベスパとは180度異なる独自のシャシー構造にあります。

鋼管フレームゆえに外板はほとんど外せるというメンテナンス性の良さ。ライバルとなったベスパとの大きな違いです。

ベスパが外板そのものを骨格とするモノコック構造を採用したのに対し、ランブレッタは頑丈な「センター鋼管フレーム」を一本通し、そこにスチール製のプレス外板を被せるという、モーターサイクルに近い構造を貫きました。

この恩恵は非常に大きいもので、フレーム自体の剛性が高いため、直進安定性をはじめ、コーナリング時の追従性において、明らかに一歩秀でていたとされています。「スクーターの形をしたスポーツバイク」と評される理由は、この骨格にあると言えるでしょう。

左右両持ちのツインボトムリンクを採用。これまた、ベスパの片持ちに対するアドバンテージといえるでしょう。

そして、空冷2ストローク単気筒123ccエンジンを搭載し、デロルト製SH1/18キャブレターとのマッチングにより、最高出力7.12馬力を発揮。クロスレシオの4速ハンドシフトを巧みに操れば、最高速度は時速82.5~90kmまで伸びたとか。

JLの刻印があるマフラーはイギリス製で、ジム・ロマス・エキゾースト。社外品ですが、ベスパやランブレッタのユーザーに人気でした。

125cc、ハンドシフト4速で、90km/hに達したといいますから、乗り味はスクーターといえども痛快だったはず。

当時、免許制度や保険の兼ね合いからヨーロッパ市場で主流だった125ccクラスにおいて、「実質150ccクラスを喰える俊足マシン」として喜ばれたのも納得です。

スタイリッシュを極めたディテールと、現代へ紡がれるDNA

また、ランブレッタを語る上で外せないのが、1960年代のイギリスで巻き起こった「モッズ(Mods)」カルチャーとの深い結びつき。

細身のスーツに身を包んだロンドンの若者たちは、自らのアイデンティティを表現する相棒として、ベスパやランブレッタを選びました。スクエアなヘッドライトやシャープなフロントフェンダー、そしてサイドパネルに輝く「Special」のバッジを持つこのモデルは、彼らにとって最高のステータスシンボルだったに違いないでしょう。

ヘッドライトのリムといい、ミラーの位置といい、モッズでなくとも心躍るデザインでしょう。

多数のミラーやライトで過剰にデコレーションされた車両は、当時の最先端を走る若者たちの、洗練されたファッションステートメントだったのです。

さて、ご紹介しているカナリヤイエローとホワイトベージュの2トーンボディを見ると、スリムラインのシリーズ3であることが分かります。

高価なオプションだったクロームパイプのキャリアはフロント/リヤともにコンプリート。スペアタイヤもしっかり付属しています。ボディパネルの状態もストックであり、モッズ風カスタムが施された痕跡も見当たらず、コレクターズアイテムとしてこれ以上のサンプルは滅多に見つからないはず。

118マイル(約190km)は実測とのことですから、コンディションとしては新車と呼んで差し支えありません。

実際のところ、オークションでは3450ポンド(約72万円)と、60年代後半のランブレッタとしてはなかなか高価な落札価格となっています。

なお、2017年に奇跡の復活を遂げ、現代の日本でも走っているモダンなランブレッタ「V125 Special」のデザインやネーミングは、まさにこの1968年のLi Specialからストレートに受け継がれたものです。

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