「当時としては非常識なモデルだった…」豪華すぎる装備に驚愕。40年以上前に登場した伝説の名車[ホンダ・CB1100R]を紹介

「当時としては非常識なモデルだった…」豪華すぎる装備に驚愕。40年以上前に登場した伝説の名車[ホンダ・CB1100R]を紹介

1981年、ホンダが送り出した「CB1100R」は、当時の市販車の常識を覆す特別なマシンだった。アルミ製燃料タンクやFRP製カウルなど、レーシングマシンさながらの装備を惜しみなく投入。そこには、プロダクションレースでの勝利を目指すホンダの執念が込められていた。わずか3世代で生産を終えた伝説の名車、その誕生と進化の軌跡を振り返る。
※2025年6月刊行の『ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選』より抜粋して掲載


●まとめ:ヤングマシン編集部

勝利のために常識を超えた装備を投入した特別なCB

1980年代初頭、世界のスポーツバイク市場で存在感を高めていたホンダが、持てる技術を惜しみなく注ぎ込んで生み出したのが「CB1100R」だ。その開発思想は、一般的な量産モデルとは根本から異なっていた。最優先されたのは、販売台数でも生産効率でもなく、プロダクションレースで勝利できる圧倒的なパフォーマンスを実現することだった。

1983 HONDA CB1100R[RD]

開発のベースとなったのは、欧州を中心に高い評価を獲得していた「CB900F」。優れた基本性能を備える同車を出発点に、エンジンや車体構成を徹底的に見直した。空冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、ボアを拡大して排気量を1062ccまで引き上げ、最高出力115psを実現。フレームについても、整備性より剛性を優先した一体構造を採用するなど、レースでの使用を強く意識した設計が随所に盛り込まれた。

さらに驚かされるのが、装備の贅沢さだ。大容量26Lの燃料タンクには、軽量化を追求してアルミ素材を採用。外装にはFRP製カウルや専用のシングルシートカウルを組み合わせ、レーシングマシンを思わせるスタイルを完成させた。鮮烈なレッドとホワイトのカラーリングも相まって、その存在感は当時の一般的な市販スポーツバイクとは明らかに一線を画していた。

しかも、これほど手の込んだマシンでありながら、開発に与えられた時間は驚くほど短かった。プロジェクトが始動したのは1980年1月。当初は同年9月にフランスで開催されるレースへの参戦を目指していたが、出場資格を得るために必要な販売台数を確保することが難しくなり、10月にオーストラリアで開催される「カストロール6時間耐久レース」へと目標を変更した。

アルミ製タンクをはじめ、手作業に近い工程を必要とする専用部品も多く、生産体制の構築は容易ではなかった。それでも同年8月には生産を開始。レース出場に必要な台数を確保するため、最初期にはカウルを装着しないネイキッド仕様の「RB1」も用意された。完成度を追求するだけでなく、限られた時間の中で実戦投入を実現することも、開発陣に課された重要な使命だったのである。

そして迎えた1980年のカストロール6時間耐久レース。CB1100Rは見事にデビューウィンを飾り、その並外れたポテンシャルを結果で証明してみせた。単に豪華な装備を並べた高級車ではなく、勝つための技術を結集した本物のレーシングスピリットを持つマシンだったのだ。

1981年型は1050台の限定生産だったが、その性能と特別感は多くのライダーを魅了した。レースへの参戦を目的とするユーザーだけでなく、公道で究極のスポーツバイクを味わいたいという声も高まり、翌1982年型の生産が決定。さらに1983年型へと進化を続けることになる。

もともと大量販売を狙ったモデルではなく、製造コストや販売価格よりも高い性能と完成度を追求したCB1100R。ホンダの技術力とレースへの情熱を象徴する、まさに特別な存在だったのである。

1983 HONDA CB1100R[RD] 主要諸元

  • エンジン形式:空冷4スト並列4気筒、4バルブ
  • 総排気量:1062cc
  • 最高出力:120ps / 9000rpm
  • 最大トルク:10kg-m / 7500rpm
  • 乾燥重量:233kg
  • フロントタイヤ:100/90V18
  • リアタイヤ:130/80V18
  • 輸出モデル
  • 実測最高速度:221km/h

CB1100Rの歴代モデル

1981年型 CB1100RB

シリーズの原点となった初代モデル。大柄なハーフカウルはCB900F2などのデザインを踏襲しながら、軽量なFRP素材を使用した専用仕様とされた。

1981年型 CB1100RB

足まわりにはフロント19インチ、リア18インチの裏コムスターホイールを採用。タンデムを想定しないシングルシートも、レースを強く意識した装備のひとつだ。なお、オーストラリア向けに先行生産された最初期型「RB1」は、カウルを持たないネイキッド仕様だった。

RBメーター
速度計と回転計を独立させた大径2眼メーターは、CB900Fなどと共通する基本デザイン。初代RBではメーター本体がトップブリッジ側に支持されている。

RBエンジン
CB900Fをベースに、ボアを64.5mmから70mmへ拡大。ストロークは69mmのまま、排気量1062ccを実現した。最高出力は115psで、オイルクーラーも装備する。

1982年型 CB1100RC

初代の実戦経験を踏まえ、走行性能をさらに磨き上げた2代目。外観上の大きな変更点は、空力性能を重視した専用フルカウルの採用だ。

1982年型 CB1100RC

ホイールは前後18インチのブーメランコムスターへと変更され、フロントフォークもインナーチューブ径を37mmから39mmへ拡大。吸排気系の改良によって最高出力は120psに向上した。着脱式シートカウルを備え、タンデム走行にも対応するなど、公道での実用性も改善されている。

RCメーター
RCメーターRC以降はマウント位置がカウルステー側となり、ステアリング周辺の重量が低減。回転計は電気式に変更された。その下にインジケーターを並べ、新たに油温計も装備。

RCエンジン
RC以降のエンジンは吸排気系の変更でフルパワー120psを発揮。内部は基本的に同一で、左右クランクケースカバーの形状が変更された。RD では金色のカバーがツヤのある仕上げに。

1983年型 CB1100RD

3代にわたる進化の最終形となったモデル。基本構成はRCを受け継ぎながら、フロントカウルの形状を変更し、空力特性やレース規定への対応を図った。

1983年型 CB1100RD

スイングアームは従来の丸パイプから角型断面へと刷新され、足まわりも熟成。カラーリングにはパールやキャンディ系の塗装が取り入れられ、外観の質感も高められた。高性能と特別感を追求してきたCB1100Rシリーズの完成形といえる存在だ。

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