「オリジナルを保っているのは珍しい…」50年以上前のクルマとは思えないコンディション。エアコンもパワーウィンドウもそのまま! 伝説の名車[ポルシェ 911カレラ RS2.7]

「オリジナルを保っているのは珍しい…」50年以上前のクルマとは思えないコンディション。エアコンもパワーウィンドウもそのまま! 伝説の名車[ポルシェ 911カレラ RS2.7]

軽さと優れたトラクション、高い信頼性でモータースポーツ界を席巻したポルシェ911カレラRS2.7。スパルタンな走りのイメージが強い名車ですが、実は生産台数の大半を占めたのは快適性を備えた「ツーリング(M472)」仕様でした。公道レースでの快挙や歴史的背景を紐解きながら、日常の足からサーキットまでをこなす万能性と、今なお市場で高く評価され続ける伝説の真実に迫ります。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys

ターボ時代は別として、911がレースシーンで見せつけた強さの源泉は軽さとトラクションの良さに尽きるかと。また、水平対向エンジンの頑健さ、かつ低重心というメリットも無視することができません。そんな定説の元となった911といえば、誰もが1973年のカレラRS2.7を思い浮かべるはず。

レースでは勝ちすぎてしまい、レギュレーションが変更されたり、競技そのものが消滅したりするなど、なにかとお騒がせなモデル。実は、当時のポルシェが最も恐れたのは、この過激なマシンが売れ残ることでした。競技用としての牙を隠し、紳士の足としても成立させた「ツーリング仕様」の成功なくして、今日の911神話は存在し得なかったかもしれません。その、賢い選択の真実に迫りましょう。

ポルシェらしい万能さを持った、911カレラ RS 2.7 ツーリング

1973年式カレラ RS 2.7の総生産台数は、プロトタイプを除き合計1580台。意外なことに、半分以上の1308台(M472)がツーリング仕様として販売されています。そのほかは、軽量化が図られたスポーツ(M471/ライトウェイト)仕様が200台販売され、レース仕様のRSR(M491)が55台、ホモロゲーション認定用(重量測定用)のRSHが17台というのが定説です。

1973年にグループ4のホモロゲーションモデルとして登場したカレラRS2.7。総生産台数はレース車両を含め1580台。

73カレラといえば軽量でスパルタンなイメージを抱きがちですが、実は911S同様、当時のポルシェなりに豪華なGTというニュアンスが強めだったのです。これは当時の顧客が、単なるサーキットの道具ではなく「自走でサーキットへ行き、帰りにはホテルに泊まってディナーを楽しめる」そんなポルシェらしい万能なスポーツ性に価値を見出していたからにほかなりません。

RS2.7は生産数の8割がゴージャスなGT的キャラクターのツーリング仕様。スポーツ仕様に対し115kgほど重くなっています。

すると、ツーリングはライトウェイト仕様の過激でレーシーな魅力に乏しいのかというと、まったく違うようです。なにしろ、ツーリングをレースに供してRSR並みのリザルトをゲットしているクルマは枚挙にいとまがありません。

2.7リッターのフラットシックスはスポーツ仕様と同一で、210hp/26.0kgm。ミッションは915ながら、911Sよりもクロスされた設定。

たしかに、重量差が115kg(ポルシェ公式資料)あり、かつエンジンスペックやシャシーまわりも同一ですから、加速や最高速はライトウェイトのほうが優れています。が、一方で「車体が重い分だけタイヤが仕事をしてくれる」ため、超高速域でナーバスなライトウェイトよりも乗りやすいと評するドライバーも少なくないのです。そもそも、ガチなレーシングユーザー、チームはホモロゲモデルではなく、最初からRSRを購入していることでしょう。

内外装ともにオリジナルを保っており、1億円超えは間違いない

ご紹介しているRS2.7ツーリングは、当時イタリアのアマチュアレーサーが購入し、1975年にはいにしえの公道レース「タルガ・フローリオ」に参戦。プライベーターながら総合16位に入る健闘をみせています。ほぼストック状態で走ったとされ、性能はもとより、過酷な公道レースを走りきる信頼性は現在の感覚からしても驚異的。また、同じくプライベーターながらレース仕様のRSRもエントリーしており、こちらは総合3位に食い込む快挙を成し遂げています。ちなみに、優勝したのはプロトタイプクラスのアルファロメオTipo 33/TT12で、しかもタルガの名人、ニーノ・ヴァッカレラとF1パイロットのアルトゥーロ・メルツァリオのドライブですから、チビッ子相撲に本物の横綱が出てきたようなもの。RSRの3位は大健闘以外のなにものでもないのです。

1975年のタルガ・フローリオに参戦し、プライベーターながら総合16位をゲット。ツーリング仕様としては最上位を獲得しています。

ちなみに、イタリアはミッレ・ミリア全盛のころからポルシェを得意とするファクトリーが数多く存在しており、このツーリングもそんな職人たちによるレストアが行われています。入庫時は2.7から3.0エンジンに変更されていたものの、これを元に戻した以外は、内外装ともにオリジナルを保っていたとか。ライトウェイト仕様と違って、エアコンやパワーウィンドウ、リヤシートまで残っているのは珍しいケース。本格的にレース仕様にするなら、それらはすべて省かれるのでしょうが、ツーリングの価値をよくわかったオーナーと言えるのではないでしょうか。

スポーツと同じに見えるものの、遮音材が追加されているためわりと快適な室内。パワーウィンドウやエアコンも装備された豪華GTというキャラクター。

リヤシートも装着したままレースに参戦し、好成績を収めるあたりカレラRSらしい強さの表れでしょう。

バンパーに加えられたゴムのライニングもツーリング仕様のポイント。きれいにオリジナルを保っています。

リヤバンパーもスチールとゴムの装備で、911Sとほぼ同じ。スポーツは一体成型のGFRPとなり、軽量化に貢献しています。

オークションでは42万5000ポンド(約9000万円)から入札可能となっていますが、1億円を超えるのはまず間違いないでしょう。これからも値下がりは考えづらいRS2.7ですから、欲しい方にとっては絶好のチャンスかもしれません。

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