「バックミラー越しでもひと目でわかる…」日本では滅多に見ない45年前の激レアホンダ車。同社初のターボ搭載モデルとしてとんでもないスペックを実現した[CX500 TURBO]

「バックミラー越しでもひと目でわかる…」日本では滅多に見ない45年前の激レアホンダ車。同社初のターボ搭載モデルとしてとんでもないスペックを実現した[CX500 TURBO]

1980年代初頭に突如として巻き起こった「バイクのターボ狂騒曲」。その先陣を切ったのが、量産二輪車として世界初のターボチャージャーを搭載したホンダCX500ターボだ。ミドルクラスの排気量でありながらリッターマシン並みのスペックを誇った、コレが45年前のホンダのマシンである。不朽の名車の足跡を辿る。
※2025年6月刊行の『ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選』より、個性派名車を抽出し、加筆して掲載しています。


●文:ヤングマシン編集部

70年代末の省エネ潮流から生まれた! リッター車に迫る「激レア」ターボバイクの衝撃

オイルショックを経た1970年代末から1980年代初頭にかけて、「排気量を増やさずに高出力を得る」という省エネ時代の打開策として、二輪界にも過給機(ターボ)技術への注目が一気に高まった。この新たな潮流に対し、真っ先に量産市販車として回答を提示したのがホンダである。

ホンダは1980年秋のドイツ・ケルンショーで「CX500 TURBO」を鮮烈に世界初公開。翌1981年、ホンダにとって二輪・四輪を含めて初となる市販ターボ車として市場へ投下された。

国内では認可が出ず、輸出専用モデルとなった、ホンダのCX500。

パワーユニットの母体となったのは水冷縦置きOHV V型2気筒のGL500系エンジンだが、過給による高出力や過酷な排熱に耐えうるため、内部パーツはほぼ新設計と言えるレベルまで強烈なブラッシュアップが施された。さらに、急速な過給変化に対応するため二輪初の電子制御燃料噴射(PGM-FI)を採用。排気量わずか498ccのエンジンから、最高出力82psという、まさに「コレが45年前のマシンか」と唸らせる驚愕のハイスペックを引き出すことに成功した。

「ミドルクラスのコンパクトな車体に、1,000ccクラス(リッターバイク)並みのパワーを込める」という目論見は見事に達成された。しかし、ターボシステムによる車重の増加や独特のターボラグといった課題もあり、各社が追随したバイクのターボブームは数年で終息に向かう。だが、その熾烈な開発競争の中にあって、排気量を拡大した継続進化モデルまで市販化に漕ぎ着けたのは、唯一このCX500ターボの系譜のみであった。

ホンダ CX500 ターボ(1981年)

輸出専用モデルとなったため、日本国内ではほぼ見かけない、レア車両となった。

【主要諸元】

  • エンジン形式:空冷 4ストローク V型2気筒 OHV 4バルブ
  • 総排気量:496.9 cc
  • 最高出力:82 ps / 8,000 rpm
  • 最大トルク:8.1 kg-m / 5,000 rpm
  • 車両重量:239 kg
  • タイヤサイズ:フロント 3.50V18・リア 120/90V17

一目で「ただ者ではない」と悟らせる! 圧倒的存在感を放つターボ専用グラフィック

世界初の市販ターボ車としてデビューしたCX500ターボは、その斬新かつアグレッシブなスタイルで見る者に強い衝撃を与えた。カウルや車体各部には「TURBO」の文字が誇らしげに刻まれており、特にアッパーカウル前面のロゴは、先行車のバックミラーに映った際に正しく読めるよう意図された「逆文字(鏡文字)のTURBOロゴ」を採用。

バックミラー越しでも認識できる、鏡文字のターボロゴが印象的。

さらにマフラーサイドやアンダーカウルにも力強いロゴを配置し、全身でただ者ではない存在感を主張していた。

ホンダ CX500ターボのエンジン

ボア×ストロークは当時のホンダF1エンジンと同じ78×52.2mmを採用。タービンには現IHI(石川島播磨重工業)と共同開発した、当時世界最小の量産用ターボチャージャーを搭載する。過給が本格的に立ち上がるのは約4500rpmからで、それ以下の低回転域は低圧縮比ゆえにトルクが細い独特の乗り味だ。

ターボ車であることを主張するため、マフラーサイドにもTURBOのロゴがあしらわれている。

排気エネルギーをロスなく回収できるよう、タービンはエキゾーストパイプの管長を極限まで短縮できるシリンダーVバンク直前に配置されている。

速度計と回転計こそアナログ式だが、それ以外は現代のバイクと比較しても遜色ないデジタルメーターパネル。中央上部には過給状態をアピールするターボ表示ランプが鎮座する。

CX500 TURBOの系譜。熟成を重ねて乗りやすさを追求した発展型「CX650 TURBO」

デビュー作であるCX500ターボの登場からわずか2年後の1983年、ホンダはさらなる熟成を図った進化型「CX650 TURBO」を市場に送り出す。

1983年に発売された、ホンダのCX650 TURBO。

排気量を673ccまで拡大し、過給セッティングやFIの制御を再緻密化することで、初期型で見られたピーキーな特性を抑え込み、実用域での乗りやすさを大幅に向上させた。さらにカウル素材をFRPから軽量な樹脂へと変更するなど、車体全体で約9kgもの軽量化を達成。スポーツツアラーとしての完成度を極限まで高めたモデルとなった。

ホンダ CX500と同系エンジンを搭載した兄弟モデル

ホンダ WING GL400/500

CX500ターボのベースとなったエンジンは、OHVならではのコンパクトなシリンダーヘッドに、軽合金プッシュロッドをはじめとする革新技術を投入して高回転・高出力化を果たしたGL400/500である。

CX500の母体となった、ホンダのGL400/500

【WING GL400 主要諸元】

  • エンジン型式:水冷4ストV型2気筒OHV4バルブ
  • 総排気量:396cc
  • 最高出力:40ps/9500rpm
  • 最大トルク:3.2kg-m/7500rpm
  • 車両重量:218kg

ホンダ CX-EURO

そして、このターボモデルで確立された先進的なデザインエッセンスや、リヤのプロリンク・サスペンション、フロントのブレーキトルク応答型アンチダイブ機構(TRAC)といった最先端の足回り技術をそのまま継承し、国内向けツアースポーツとして昇華させたのが「CX-EURO(400cc)」であった。過給機こそ搭載しないものの、ターボ開発で培われたホンダの情熱はこれらの兄弟モデルにも色濃く息づいていた。

ホンダのCX-EURO。

【CX-EURO 主要諸元】

  • エンジン型式:水冷4ストV型2気筒OHV4バルブ
  • 総排気量:396cc
  • 最高出力:40ps/9500rpm
  • 最大トルク:3.2kg-m/7500rpm
  • 車両重量:209kg

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