
結論から言わせてください。バイク整備で最初に選ぶべきグリスは、リチウム系の万能グリス一択でいいと思っています(あくまで個人的な意見なので異論は認めます)。EP入り・耐水タイプの、いわゆるシャーシグリス。派手さはゼロですが、整備界の白米ポジションです。ここまで言い切るのには、ちゃんと理由があります。それではいってみましょう!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
グリスよ、なぜ増えていく?
バイク整備をやっていると、なぜか増えていくものがあります。そう、グリスです。ベアリング用、ステム用、耐水、耐熱、プラ対応、ブレーキ用、極圧グリス、ガンガン使える安いやつ・・・。気づけば工具箱の引き出しはグリスのチューブだらけ。事実、筆者の工具箱もこんな状態です。
・・・さすがに多すぎだと思う。
「これはあったほうがいい」「コレもあったほうがいい」「コレなんか便利そう!」・・・で、買い足してきた結果、こうなった。完全に過剰在庫。使う量なんてたかが知れているから、種類が増えるほどそれぞれの消費量が減っていくという悪循環です。腐りはしないけど、劣化は…たぶん、する・・・よね?
そこで、ふと思いました。そうだ、原点に戻ってみよう!・・・と。
グリスをエア断捨離してみたい
一度、全部リセットしたらどうなるでしょう。気分だけは16歳に戻って。工具も知識もまだまだ足りなかったあの頃。そんな自分にアドバイスをしてみるとしたら・・・条件はひとつ。
「最初に一本だけグリスを買うとしたら何を選ぶ?」
さて、何を選ぶか。何を勧めるか。ちょっと考えて出た答えが、冒頭の結論でした。
なぜリチウムグリスは万能なのか
リチウム系万能グリス。「けっきょくリチウムかい!」というツッコミは甘んじて受けます。でも待ってください。リチウムグリスはやっぱり優秀です。ベースは鉱物油(または合成油)、増ちょう剤はリチウム石けん。とても手に入れやすいのに、その性能は決して侮れません。
しかも、一番安い!!(← ※コレ重要) 摩擦に強く、水にもそこそこ粘り、温度耐性もそこそこ。
つまり「迷ったらこれ」で失敗しにくい。細かいこだわりを持たなければ、ほとんどリチウムでケリがつく。それは間違いない。決して派手な性能はありませんが、整備でいちばん困る「ハズレ」を引きにくい。そこが強いのですよ。
バイクの要所をおおむねカバーする万能さ
リチウム万能が本領を発揮するのは、金属同士が荷重を受ける場所です。ステムベアリング、ホイールベアリング、スイングアームやリンクまわり、レバー支点、サイドスタンドの軸、ネジのかじり防止。どこもかしこも「とりあえず塗っとけ」が成立する、数少ない存在です。
とはいえ、完全な万能ではなくてリチウムグリスにもNGゾーンはもちろんあります。ブレーキまわりは基本NG。キャリパーピンや鳴き止めは専用品、ゴム・樹脂が相手の場所は要注意。プラ・ゴム対応を謳っていないものはやっぱり要注意。
一本縛りは無理があった
すみません。「一本だけ」と言っておきながら、正直に言います。やっぱり無理でした。もう一本だけ許されるなら「シリコーングリス」を追加させてください。
今どきのバイクは、ゴム、樹脂、ゴム、樹脂。プラスチック天国。リチウム万能は金属には強い。でも、ゴムと樹脂が相手になると一気に不安になる。そこでシリコーン。壊さないためのグリス、攻撃しないグリスなのです。地味だけど、これがあると守備範囲はほぼ360度に広がります。
背中を預けあう2本体制万歳!
リチウムグリスとシリコングリスはその性格(得手不得手)が見事に正反対なので、お互いの背中を任せあえばもう怖いものなし。見事なコンビネーションを見せてくれます。
リチウム万能は金属担当、シリコーンはゴム・樹脂担当。つまり、役割が被らない、迷わない、増えない。「似た性能を買い足して沼る」未来を、ギリギリで回避できる組み合わせです。用途別の適正をざっくりまとめると以下の通りです(↓)
どうでしょう?見事に嚙み合わないでしょ? 金属同士で荷重がかかるなら、リチウム。ゴム・樹脂が相手なら、シリコーン。これだけ覚えておけば、作業判断で大きく外すことは、まずありません。
最後に大事な話
なぁんて話をつらつらとしてまいりましたが、最後に大切なお話をば。けっきょくのところ、グリスの種類も量も「自分がどんなメンテナンスをやるか」で決まります。チェーン調整とレバー給油ぐらいしかしない人と、ステムを抜いて、リンクを分解して、ベアリングを組む人では、必要なグリスはまったく違ってきます。
ライトなメンテナンス中心なら、リチウム万能+少量で十分。重整備まで踏み込むなら、専用品が増えていくのは、ある意味で自然な流れです。
まずは最小構成で始めて、足りなければ足す。余ったら、次は買わない。道具は、揃えるものじゃなくて、使いながら成長していくもの(なんかカッコイイこと言っちゃってる?)
あとはもう、自分の整備スタイルと相談しながら、試行錯誤してください。若者よ、効率よく生きてください。…とか言いつつも、気が付いたらグリスが増えるんですけどね。
買っちった(ついに自転車用のグリスにも手を出してしまった)。
まぁ、グリスに沼るのもまた楽しいってことで! この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
レストアは固着との戦い!と言うけども 古いバイクに固着したボルトやナットは付き物ですよね。 ヤマハのポッケをいっちょ直したろうかと意気込んだものの、コイツの固着っぷりが尋常じゃなかったんだ、いやホント[…]
実は使ってます、カネヨン まず結論から言うと、筆者は使ってます。バイクのアルミ部品磨きに、クリームクレンザーを使うのです。 たとえば(↑)腐食して白く粉を吹いたようになってしまったアルミ部品。ちょっと[…]
久しぶりにバイクを動かそうとしたら… えっとですね。しばらくの間、愛車のヤマハDT50に乗れていなかったのですよ。で、久々に乗ってみようかと思いまして、駐輪場から引っ張り出そうとしたわけです。 そした[…]
絶版車のコンディション維持に欠かせない純正部品同等の品質と性能を持つ「規格部品」 毎年のようにモデルチェンジを行うことでパーツ点数が膨大になったのがバイクブーム、レーサーレプリカブーム時代の純正部品事[…]
自作ラスペネが固着を無双した 結論から言ってしまおう。「自作ラスペネ」効果、ありました! ・潤滑剤が届かない形状・鉄とアルミの強固な固着・無理に回すと折れそうなボルト そんな悪条件が重なったなかでも、[…]
人気記事ランキング(全体)
大型バイクの重さに疲れた大人へ。190kgの軽快ボディが日常を変える 迫力あるネイキッドに乗りたいけれど、取り回しの重さに疲れてガレージから出すのが億劫になっている。そんな悩みを持つライダーにこそ、Z[…]
独自のメカニズム! 変幻自在のボバースタイル 【BENDA】ナポレオンボブ250 まず、この圧倒的な押し出し感を見てくれ! ベンダが日本市場へ放つ第1弾「ナポレオンボブ250」だ。 クラシカルなロー&[…]
クォータークラスの既視感を打ち破る2台の黒船 かつて日本の250cc──いわゆる「クォータークラス」は、メーカーの技術と狂気がぶつかり合う群雄割拠のセグメントだったはず。しかし、「効率」もより重視しな[…]
キルスイッチを備える初期型JA55。根強い人気を誇る初代ハンターカブ 2020年6月に発売され、瞬く間に大ヒットモデルとなった初代CT125・ハンターカブ(JA55)。現行モデルとなるJA65型とは異[…]
適度なパワーと車格がもたらす、公道での爽快なスポーツ性 250ccクラスでは久々となる4気筒エンジン搭載の新型として、2020年9月に新登場したのがNinja ZX-25R。2023年型で熟成が図られ[…]
最新の投稿記事(全体)
誰もが安全、安心にサーキットを楽しめ、スキルアップも BMWやドゥカティといった有名輸入車を広く取り扱うミツオカグループ。サーキットエクスペリエンスはモトラッドミツオカ鈴鹿が中心となって開催しており、[…]
旅の始まりからエヴァの世界へ。空港近隣店舗を巡る「AIRPORT TOUR 2026」 北海道から九州まで、飛行機を降りた瞬間からエヴァの世界観に浸れるイベントが「AIRPORT TOUR 2026」[…]
歴史の息吹を自らの手で所有する悦び 1926年の創業以来、数々の伝説的なレースでの勝利と、心を揺さぶる美しいデザインで世界中のライダーを魅了してきたドゥカティ。その100年にわたる栄光の軌跡を、現代の[…]
アドベンチャー特有の「ノーズダイブの恐怖」を過去にするハブステア 背が高くサスペンションのストローク量が長いアドベンチャーバイクは、ツーリングで快適な反面、ハードブレーキング時にフロントが大きく沈み込[…]
「私自身もブラックを予約しているんです」 「“CB”はクリエイティブ・ベンチマーク(Creative Benchmark)として、その時代ごとにおけるバイク作りの基準であるべき」とは若手だった頃に、今[…]
- 1
- 2



































