
バイクのエンジンがかかりにくくなったので、スパークプラグを調べてみると点火しているような「パチパチ」という音もする。それなのに、肝心の火花が見えない。・・・火花はいったいどこへ消えたのか? その行方を捜すうちにスパークプラグ掃除に潜む“思わぬ落とし穴”に気づきました。今回はリアルなトラブル解決レポート。いつもの掃除から一歩踏み込んだスパークプラグのメンテナンスに挑戦していきます~!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
エンジンがかからなくなった!
うちの次男が乗るリトルカブくん、最近どうにもエンジンのかかりが悪いのです。どうやら、ちょっと興味深い始動不良のトラブルに見舞われてるっぽいのです。
「ガソリンタンク」・・・OK、「圧縮」・・・OK、「キャブレター」・・・OKとなると、一番疑わしいのは「点火」。やっぱりスパークプラグですよね。
てことで、スパークプラグを取り外します。
おっと、カーボンが付着して汚れていますね。キツネ色が理想なのですが、かなり黒い状態。
アースを取って、火花チェックをしてみると「パチパチッ」って音はする。
たしかに火花が飛んでいる音はするのだけど、肝心の火花が見えない。これではエンジンかかるはず、ないですよね~。
火花はどこへ隠れた?
これ、なんとも不思議。音は聞こえるのに火花が見当たらない。実は筆者が(はるか)昔、ヤマハのレーサーレプリカTZR250に乗ってた時にも、まったく同じ症状に悩まされたことがあったのですよ。
毎日の通勤に使っていたのに、だんだんとエンジンがかかりにくくなってきて、パワーもダウンしていって。そしてついには、ある日エンジンがかからなくなって始動不良になったしまったのです。
その時もスパークプラグを外してみると、パチパチと音はすれども火花が見えないという症状。実はこれ、プラグの表面に付着したカーボンが“電気を横取り”していたのです。
原因は“隠れたカーボン”
原因は、スパークプラグの“隠れた”カーボンでした。
ちなみに、スパークプラグの電極があるネジ部分は、内側内部に絶縁体が繋がってます。
実はこのTZR250、毎日の通勤に使っていたのですが、家から近い職場だったので短距離ばかり走っていたのです。そのせいでエンジンが温まりきる前に到着してしまっていたので、結果としてエンジンをキッチリ回すことができずにプラグの電極に大量のカーボンがこびりついていたんですよ。
つまりはこんな感じ(イメージでです)
エンジンの燃焼が良好で温度が上がればカーボンが溜まることは少ないのですが、低回転ばかりで走ったり、燃料が濃かったり、またはほかの要因で不完全燃焼を繰り返すとカーボンがより多く溜まります。そして、そのカーボンがより多く溜まると内部の絶縁体すらも覆い尽くしてしまうようなのですよ。で、このカーボンは電気を通します。
つまり、本来は絶縁体であるべき部分に電気が逃げて、奥のほうで火花が飛んじゃう。本来電極でスパークしてガソリンに点火すべき電気が余計な場所に行ってしまうので、電極間ではまともにスパークが飛ばなくなっていた・・・というオチでした。
・・・で、結果としてエンジンがかからなくなった、と。いや~、あの時は焦りましたねぇ。そんでもって、原因知った時はズッコケましたねぇ。まさかそんな奥で火花が飛んでしまっているなんて。
というわけで、今回リトルカブでも同じことを疑ってみました。つまり、スパークの奥までシッカリ掃除すればエンジンかかるようになるのではないか?と。
「一歩踏み込んだ」スパークプラグの掃除
絶縁体の奥まで溜まったカーボンを除去するには、普通にブラシで擦るだけでは不十分です。なんたってブラシの届かない奥のカーボンが原因ですからね。そこで今回は、過去の経験をもとにスパークプラグの「一歩踏み込んだ掃除」をしてみましょうか!
そこで登場するのが歯間ブラシ。これ、優秀なんですよ。ブラシの軸が細くて、プラグの内側にも届きます。しかも毛先の弾力がある上に丈夫なので汚れ落としに最適なのです。なんたって歯の隙間を磨けるぐらいですからね、狭い所を360度ぐるり磨くはお手のもの。
使用するケミカルは、本来ならエンジンコンディショナーが理想ですが、手元になかったので今回はキャブレタークリーナーで代用。説明書に「カーボン除去もOK」って書いてあるしイケるでしょう。さっそく掃除開始。まずはキャブクリーナーを吹き付けます。
それだけでもかなりカーボンが溶けだしてきますが、間髪入れずに歯間ブラシで磨きます。
ホラ! こんなにも深いのです。
ズボッと入っちゃう
ゴシゴシやってみたら…出るわ出るわ。たちまち毛先が真っ黒になります。擦るほどに汚れが出てきます。こりゃキモチイイ!
表面を見た限りではそれほどじゃないかもとも思いましたが、奥の方はまるで炭鉱みたい。カーボンの巣窟。
ここまでキレイになる!
汚れをしっかり落としたら、パーツクリーナーで全体を洗浄。
溶かして擦ったので、面白いほどに汚れが出てきます。そして ・・・ めっちゃキレイになりました!!
「きゅぴーん!」って自分で言っちゃうレベル
いかがでしょうか? 電極をブラシで擦ったのとは明らかに違う仕上り。こりゃキモチ良い!
火花復活!エンジンも始動!
もう一度火花チェックをしてみると・・・
「パチパチッ」と太い!青白い!火花がビシッ!と飛びました~。やったぁ~。いや~嬉しい。映像では明るすぎて映らなかったけど、間違いなく“復活”してました。そして、まるで何事もなかったかのようにアッサリとエンジン始動!!!
走るだけでカーボンは溜まる
アナログなキャブレターだった時代は終わって今やインジェクションが当たり前ですが、それでもやはり走るだけでカーボンは確実に溜まっていきます。
走行距離が短い、アイドリングが多い、ちょい乗りが続く、そんな何気ない使い方の積み重ねで、カーボンは静かに、でも着実に増えていくものです。
だからこそ、スパークプラグの定期的な掃除は必須。とはいえ、ワイヤーブラシで表面を軽く擦るだけでは、足りない場合もあります。今回のように、トラブルの原因が電極のさらに奥に潜んでいるケースもあります。表からは見えない内部に溜まったカーボンが、火花の行き先を狂わせてしまうことがあるのです。
「パチパチ音はするのに、火花が見えない」そんな不思議な症状に悩んでいる方は、ぜひこの方法を試してみてください。
歯間ブラシとキャブクリーナーだけ。やることは地味ですが、効果は想像以上。眠っていたエンジンが、ふっと息を吹き返すかもしれません。
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
お待たせしました経過報告です 前回のラバゲイン記事、おかげさまで大反響をいただきました。ありがとうございます! そして同時に、「続編が知りたい!」「その後どうなったの?」「どれぐらい持つの?」「いつま[…]
バイクいじり全般で使い勝手の良いスタンダードサイズ 自社内の多段鍛造設備で同じブランク材から鍛造するため、スタンダートサイズの全長は6角/12角/サーフェイスとも開口部5.5〜13mmは全長26mm、[…]
バイク置き場を有効活用できる。掛けてから移動できるリアスタンド バイクとの接点は、スイングアーム下から支える付属のL形アタッチメントか、スイングアームに取り付けたスプールに引っかける別売りのV形アダプ[…]
クロームメッキパーツのケアには専用ケミカルが有効 重厚な金属光沢が魅力的な装飾クロームメッキ。その被膜は0.02〜0.5㎛と極めて薄く、肉眼では見えない孔やクラックから浸入する水分によってクロム層の奥[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! クルマのボディケア用品の名門として語られることが多いシュアラスターですが、同社の本質は“洗車関係”にとどまりません。じつは、燃料がどう燃え、エンジンがどんな性格を[…]
最新の関連記事(工具)
バイクいじり全般で使い勝手の良いスタンダードサイズ 自社内の多段鍛造設備で同じブランク材から鍛造するため、スタンダートサイズの全長は6角/12角/サーフェイスとも開口部5.5〜13mmは全長26mm、[…]
バイク置き場を有効活用できる。掛けてから移動できるリアスタンド バイクとの接点は、スイングアーム下から支える付属のL形アタッチメントか、スイングアームに取り付けたスプールに引っかける別売りのV形アダプ[…]
未塗装樹脂の白ボケ原因とツヤを復活させる方法 黒かったものが白っぽくなってくると古臭く見えてしまいます。…いいえ、「白髪」ではなくて「黒樹脂(未塗装樹脂)パーツ」のオハナシです。 新車の頃は真っ黒だっ[…]
点火トラブルって多いよね 昔から「良い混合気」「良い圧縮」「良い火花」の三大要素が調子の良いエンジンの条件として言われておりますが、それはそのまま調子が悪くなったバイクのチェック項目でもあります。その[…]
高い耐久性、IP65防水性能がライダーのギアを守る ミルウォーキーツールが誇るツールボックス、PACKOUTシリーズの最大の特長は、その「高い耐久性・防水性・防塵性」を備えているという点。ガレージや作[…]
人気記事ランキング(全体)
悪質な交通違反の一つ、「無免許運転」 今回は無免許運転をして捕まってしまったときに、軽微な違反とはどのような違いがあるのか紹介していきます。 ■違反内容により異なる処理無免許運転の人が違反で捕まった場[…]
6999ドルで入手したバイク「VOGER」、ハーレーよりでっかい箱で到着! タンクの中が明るいぞ! 彼女を乗せたらどこに足を置けばいいんだ? ヘッドカバーがプラスチック?! アメリカの人気YouTub[…]
充実してきた普通二輪クラスの輸入モデル この記事で取り上げるのは、日本に本格上陸を果たす注目の輸入ネオクラシックモデルばかりだ。それが、中国のVツインクルーザー「ベンダ ナポレオンボブ250」、英国老[…]
進化した単気筒TRエンジンは5%パワーアップの42psを発揮! トライアンフは、2026年モデルとして400シリーズの最新作×2を発表した。すでにインドで先行発表されていたカフェレーサースタイルの「ス[…]
バッテリーで発熱する「着るコタツ」で冬を快適に ワークマンの「ヒーターウエア」シリーズは、ウエア内に電熱ヒーターを内蔵した防寒アイテム。スイッチひとつで温まることから「着るコタツ」として人気が拡大し、[…]
最新の投稿記事(全体)
アグレッシブなデザインとライダーフレンドリーな車体 FZ-Raveは、”熱狂”という名を反映したかのようなスタイリッシュでエッジの効いたグラフィックを纏っている。とくにアグレッシブなヘッドライトと、目[…]
バッテリーで発熱する“着るコタツ”WindCore ヒーターウエア ワークマンの電熱ウエア「WindCore」シリーズは、スイッチひとつで温まることから“着るコタツ”として、累計60万着以上を売り上げ[…]
エンジンがかからなくなった! うちの次男が乗るリトルカブくん、最近どうにもエンジンのかかりが悪いのです。どうやら、ちょっと興味深い始動不良のトラブルに見舞われてるっぽいのです。 「ガソリンタンク」・・[…]
ターンバイターンのナビゲーションも標準搭載! スズキはインドで、ジクサー250と共通の油冷単気筒エンジンを搭載するスポーツアドベンチャーモデル「VストロームSX」の2026年モデルを発表。4つのカラー[…]
毎年バイク用品の解説動画をたくさんアップしているのですが、今年2025年はとくに豊作でした。 そこで今回は、2025年使って良かったバイク用品ベストバイ3選をご紹介します (あえてFoieGearの商[…]
- 1
- 2





















































