
世界一過酷といわれるロードレース(公道レース)のマン島TT(IOMTT)が予選ウィークを終え、いよいよ決勝ウィークが開幕した。決勝初日は、スーパーバイクTTとスーパースポーツTTと注目の2クラスが行われた。
●文/写真:ヤングマシン編集部(山下剛)
予選はCBR1000RR-RとCBR600RRがトップタイムだったが……
今年のマン島は、予選ウィークがはじまった5月26日から雨が降らない日が一日もない、悪天候に見舞われた。そのため予選はことごとく中止となり、予定されていたおよそ半分しか消化できないまま決勝ウィーク開始の6月1日を迎える事態となった。
しかし予選を消化しきれていないことから、主催者はスケジュールを変更して6月1日も予選を決行。決勝ウィークは本日6月2日が初日となり、スーパーバイクTT、サイドカーTT、スーパースポーツTTの3レースが行われた。
予選ウィークでは、スーパーバイクTT(CBR1000RR-R)、スーパースポーツTT(CBR600RR)ともにホンダレーシングUKのディーン・ハリソン選手がトップタイムを叩き出しており、決勝レースでも優位性を見せると思われた。
だが、口開けとなったスーパーバイクTT決勝レースで優勝を決めたのは、M1000RRを走らせたデイビー・トッド選手だ。本来6周で行われるはずのレースは、スケジュール変更のため4周に減ってのスタートとなった。トッド選手は1周目から大きくリードし、2位のマイケル・ダンロップ選手(S1000RR)に7.8秒差をつけた。2周目はダンロップ選手が激しいプッシュで追い上げ、ピットインを終えた段階で両者の差は1.8秒、4周目には0.2秒にまで縮まった。さらにコース上でもトッド選手をパスし、ダンロップ選手がトップに立ったかのように見えた。
しかし実際のタイム差はわずかにトッド選手がリードし、最終的に1.296秒差をつけてフィニッシュ。スーパーバイクTTでの初勝利とともに、TT通算3勝目を挙げた。
サイドカーTTに続いて行われたもうひとつの注目クラス、スーパースポーツTTでは、ドゥカティ パニガーレV2(955cc)がトップ10に3台も入った。元来は600cc4気筒のクラスだが、スーパースポーツ世界選手権でも出場可能マシンの範囲が広がっていることを受け、マン島TTでも排気量で勝る2気筒や3気筒マシンが参戦している。
このクラスで優勝を決めたのは、パニガーレV2を走らせたマイケル・ダンロップ選手だ。これはドゥカティには1995年以来の勝利となり、ダンロップ選手にとってはTT通算30勝を挙げ、最多勝利数記録をさらに伸ばした。
レースは1周目を終えた段階でディーン・ハリソン選手(CBR600RR)が2位に7.4秒差をつけトップに立っていたが、ダンロップ選手が猛追。最終ラップの3周目に入ったときにはその差を2.9秒まで縮めた。ダンロップ選手はさらにプッシュし、セクタータイムを更新する速さでファイナルラップを駆け抜けた。コース中盤にあるジャンプスポットで有名なバラフブリッジを通過する頃には逆転し、チェッカーを受けたときには10.2秒差をつけるほどの速さを見せつけたのだった。
なお、優勝候補の一角であるピーター・ヒックマン選手(M1000RR、ストリートトリプル765モト2エディションなど)は、5月29日の予選走行中にクラッシュし、戦線離脱となった。負傷したものの命に別状はなく、フェイスブックで治療後の姿を公開している。
スーパーバイクTTは1レースのみだが、最終日の6月7日に最高峰クラスのシニアTTが行われる。このクラスはスーパーバイクTTレース2ともいえる選抜レースで、トッド選手を越えようとライバルたちは虎視眈々と準備をしているはずだ。
また、スーパースポーツTTは2レース制で、6月4日にレース2が行われる。多彩なマシンが走るクラスだけに、レース2も注目必至だ。
予選ではスーパーバイクTT、スーパースポーツTTともにトップタイムを叩き出していたディーン・ハリソン選手(CBR1000RR-R)だったが、決勝レースではそれぞれ3位、2位となった。
スーパーバイクTTを制したデイビー・トッド選手(M1000RR)。同クラスでは初勝利、TT通算3勝目となった。
スーパースポーツTTで勝利し、TT通算30勝と記録を伸ばしたマイケル・ダンロップ選手(パニガーレV2)。ドゥカティにとっては1995年以来となるマン島TT勝利だ。
マン島TT 2025 スーパーバイクTT決勝結果(10位まで)
| 順位 | ゼッケン | ライダー | マシン | タイム(4周) | 平均速度(mph) |
| 1 | 8 | デイビー・ トッド | BMW M1000RR | 01:08:20.628 | 132.495 |
| 2 | 6 | マイケル・ ダンロップ | BMW S1000RR | 01:08:21.925 | 132.453 |
| 3 | 3 | ディーン・ ハリソン | Honda CBR1000RR-R Fireblade | 01:09:05.444 | 131.062 |
| 4 | 19 | ネイサン・ ハリソン | Honda CBR1000RR-R Fireblade | 01:10:02.828 | 129.273 |
| 5 | 2 | デイビッド・ ジョンソン | Kawasaki ZX-10RR SE | 01:10:19.482 | 128.763 |
| 6 | 5 | ジェイムズ・ ヒリアー | Honda CBR1000RR-R Fireblade | 01:10:21.959 | 128.687 |
| 7 | 1 | ジョン・ マクギネス | Honda CBR1000RR-R Fireblade | 01:10:32.106 | 128.379 |
| 8 | 7 | ジョシュ・ ブルックス | Honda CBR1000RR | 01:10:37.811 | 128.206 |
| 9 | 21 | マイケル・ エバンス | Honda CBR1000RR SP | 01:11:02.757 | 127.456 |
| 10 | 20 | ポール・ ジョーダン | Honda CBR1000RR SP | 01:11:13.130 | 127.146 |
マン島TT 2025 スーパースポーツTTレース1決勝結果(10位まで)
| 順位 | ゼッケン | ライダー | マシン | タイム(4周) | 平均速度(mph) |
| 1 | 6 | マイケル・ ダンロップ | Ducati Panigale V2 955 | 53:15.950 | 127.500 |
| 2 | 3 | ディーン・ ハリソン | Honda CBR600RR | 53:26.179 | 127.093 |
| 3 | 5 | ジェイムズ・ ヒリアー | Kawasaki ZX-636-R | 54:11.251 | 125.331 |
| 4 | 8 | デイビー・ トッド | Honda CBR600RR | 54:29.244 | 124.642 |
| 5 | 7 | ジョシュ・ ブルックス | Honda CBR600RR | 54:39.629 | 124.247 |
| 6 | 15 | ロブ・ ハドソン | Yamaha YZF-R6 | 55:07.481 | 123.201 |
| 7 | 16 | ジェイムズ・ ハインド | Suzuki GSX-R750 | 55:21.982 | 122.663 |
| 8 | 13 | ドミニク・ ハーバートソン | Ducati Panigale V2 955 | 55:28.440 | 122.425 |
| 9 | 12 | イアン・ ハッチンソン | Yamaha YZF-R6 | 55:31.041 | 122.329 |
| 10 | 11 | コナー・ カミンズ | Ducati Panigale V2 955 | 55:47.840 | 121.716 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(レース)
2年に一度、世界各国から勝ちぬいたGSライダーが競う祭典への道 GS Trophyは2008年に始まったBMW Motorrad主催の国際的なアドベンチャーイベントだ。2年に一度、各国の国内選抜を勝ち[…]
8月後半から9月末の日本GP、10月の全日本へ怒涛のレースシーズン アッという間に10月も半ばが過ぎてしまいました。全日本ロードレース選手権を中心に取材活動をしているボクにとっては、8月23日・24日[…]
岡山国際サーキットとの相性、新しいフロントタイヤと改良されたリヤタイヤ ついにこの日がやって来た。 2025年10月5日、全日本ロードレース第6戦の岡山(岡山国際サーキット)で長島哲太がついに表彰台に[…]
2025モトクロス世界選手権チャンピオンが全日本に参戦! 株式会社カワサキモータースジャパンは、2025年11月1日(土)・2日(日)スポーツランドSUGO(宮城)で開催される第63回 MFJ-GP […]
バトル・オブ・ザ・ツインの歴史に刻まれる存在 1981年に米国、デイトナスピードウェイで第一回が開催され、その熱が日本に伝わり、1984年に日本の筑波サーキットでも火蓋が切られることとなったレース“バ[…]
最新の関連記事(モトGP)
今のマルケスは身体能力で勝っているのではなく── 最強マシンを手にしてしまった最強の男、マルク・マルケス。今シーズンのチャンピオン獲得はほぼ間違いなく、あとは「いつ獲るのか」だけが注目されている──と[…]
本物のMotoGPパーツに触れ、スペシャリストの話を聞く 「MOTUL日本GPテクニカルパドックトーク」と名付けられるこの企画は、青木宣篤さんがナビゲーターを務め、日本GP開催期間にパドック内で、Mo[…]
欲をかきすぎると自滅する 快進撃を続けている、ドゥカティ・レノボチームのマルク・マルケス。最強のライダーに最強のマシンを与えてしまったのですから、誰もが「こうなるだろうな……」と予想した通りのシーズン[…]
2ストGPマシン開発を決断、その僅か9ヶ月後にプロトは走り出した! ホンダは1967年に50cc、125cc、250cc、350cc、そして500ccクラスの5クラスでメーカータイトル全制覇の後、FI[…]
タイヤの内圧規定ってなんだ? 今シーズン、MotoGPクラスでたびたび話題になっているタイヤの「内圧規定」。MotoGPをTV観戦しているファンの方なら、この言葉を耳にしたことがあるでしょう。 ときに[…]
人気記事ランキング(全体)
「特殊ボルト」で困ったこと、ありませんか? 今回は「でかい六角穴のボルト」を特殊工具なしで外してみようというお話。 バイクを整備していると時々変なボルトに出会うことがあります。今回は古い原付オフロード[…]
コンパクトで取り付けが簡単なスマートモニター タナックス(TANAX)の「スマートライドモニター AIO‑5 Play (SRS‑015)」は、本体サイズ78.8(H)×136.2(W)×26.8(D[…]
X-ADVの兄弟車として欧州で販売される「フォルツァ750」 ホンダは欧州でフォルツァ750(FORZA 750)の2026年モデルを発表した。主要諸元に変更はなくカラーバリエーションの一部変更でイリ[…]
過激な初代からフレンドリーな後継モデルへ カワサキのビッグバイクと言えば、優れた資質を備える初期型をベースにして、2代目以降で徐々に動力性能を高めていくのが通例だ。だがマッハシリーズの場合は、初期型が[…]
90年代の魂を注入! アールズギア×TSR「ネオクラシック・レベリオン」 CB1000Fコンセプトを大胆にカスタムした「Neo-Classic Rebellion CB1000F Concept Mo[…]
最新の投稿記事(全体)
セールは全商品が対象! この「秋の大感謝祭」は、2025年10月28日(火)までの期間限定で開催される。対象となる購入先はAKEEYO公式オンラインストア。車載ドライブレコーダー、バイク/自転車用ドラ[…]
現在に続くミドルクラスの基盤は日本メーカーが作った ’70年代の2輪業界における最大のトピックと言ったら、日欧のメーカーが歩調を合わせるかのように、ナナハン以上のビッグバイクを発売したことだろう。もっ[…]
これぞCBだ! そう直感的に思えるライダーの視界 跨った瞬間に「CBだ!」と思えた。視界に入る燃料タンクの大きな面積や両腿の内側に感じる存在感、そして昔で言う“殿様乗り”が似合う大きくアップライトなラ[…]
フリーマーケットやフードコンテンツも楽しめる名物イベント 群馬県を代表するSUBARUの工場脇の公園には、バイクとテントで埋め尽くされている。初めてこのイベントを訪れた人は、その規模感に驚くのでないだ[…]
TRICKSTAR初のTRIUMPHマフラー、登場 SPEED400/SCRAMBLER400X 政府認証スリップオンマフラー 外観は、取り付け角度やサイレンサーの上がり具合まで徹底的に検証[…]
- 1
- 2










































