
毎年のように新技術が投入され、日本の4メーカーが世界4大メーカーとして覇権を争っていた時代。初の大排気量レーサーレプリカが登場し、究極のRC30とOW-01誕生へ。Vブーストにも心躍らせた昭和末期から平成元年までを振り返る。
●文:ヤングマシン編集部
- 1 レプリカブームがナナハンクラスに進撃。’80s名作ロードスターも誕生した
- 2 SUZUKI GSX-R750──油冷エンジン初搭載で大排気量レプリカ誕生
- 3 YAMAHA FZ750──新時代の設計思想=ジェネシス
- 4 YAMAHA V-MAX──Vブーストで145psを叩き出す豪速ドラッガー
- 5 HONDA VFR750R [RC30]──プライベーターの救世主 コスト度外視の本気レースベース車
- 6 YAMAHA FZR750R [OW-01]──ヤマハもレースベース車投入
- 7 SUZUKI GSX-R750R──ワークス共通部品も多数
- 8 KAWASAKI ELIMINATOR──漢のゼロヨンニンジャ
- 9 YAMAHA SDR──軽さ命の2ストシングル
レプリカブームがナナハンクラスに進撃。’80s名作ロードスターも誕生した
250ccで始まったレーサーレプリカ熱狂時代は、RG250Γをリリースしたスズキが同時代の開拓者として次なる一手を打つ。それがGSX-R750だった。大排気量は威風堂々のハイスピードツアラーというのが定石だったところへ、常識はずれの軽量&ハイパフォーマンスでそれまでにないナナハンレプリカを創り上げたのだ。
出遅れたかに見えたライバルたちは、ワークスマシンレプリカと呼ばれるほどのコスト度外視のマシンで逆襲を図る。ファンの間では「アールシーサンマル」や「オーダブリュゼロワン」といったコードネームで呼ぶのが流行った時代でもあった。そうした当時にリリースされたRC30やOW-01などは現在、欧州の旧車オークションで高値取引されるなど、世界的にも伝説のバイクとなっている。長寿モデルとなったV-MAXもこの時代に誕生したモデルだ。
昭和60年は日航機墜落事故、電電公社の民営化などの出来事があり、昭和61~63年にかけてはドラゴンクエストI~IIIが発売された。昭和64年は1月7日までとなり、同年1月8日から平成がはじまる。
SUZUKI GSX-R750──油冷エンジン初搭載で大排気量レプリカ誕生
日本国内でもカウルやセパハンが解禁されてから早数年。時代はレーサーレプリカブームへと突入していた。それまでレーサーにしか使われていなかったアルミフレームをRG-Γ250やGSX-R(400)で市販車に導入したスズキは、続いてフラッグシップのGSX-R750を投入する。もちろんフレームはアルミ製。これに初の試みとして油冷エンジンが搭載された。水冷よりもコンパクトに設計できる利点は存分に活かされ、通常200kg超えは当たり前だった車重は乾燥で179kgを実現。ライバルの度肝を抜いた。
デビューイヤーでル・マン24時間耐久も制覇すると、サーキットは瞬く間にGSX-R一色に染まっていき、世界各地で戦果を挙げていった。
【SUZUKI GSX-R750 昭和60(1985)年】主要諸元■油冷4ストローク並列4気筒DOHC4 バルブ 749cc 77ps/9500rpm 6.4kg-m/8000rpm■179kg(乾)■F=110/80-18 R=140/70-18
スズキの代名詞ともなった油冷エンジンは水冷のようなウォータージャケットを必要とせず軽量コンパクト化を可能とした。ル・マン制覇で耐久性も証明。
YAMAHA FZ750──新時代の設計思想=ジェネシス
4スト大排気量ではそれまで後れを取っていた当時のヤマハは、水冷化に時代が移行する際に一気に勝負に出る。ジェネシスと名付けられた思想に基づいて設計されたFZ750は、45度と大きく前傾したシリンダーでダウンドラフト吸気を実現。さらに吸気3&排気2の5バルブシステムで高回転化が追求された。エンジンパワーだけでなくハンドリングバランスも追求されたFZ750は、新時代にふさわしい1台として好評価を受け、その設計思想は以後受け継がれていった。
【YAMAHA FZ750 昭和60(1985)年】主要諸元■水冷4ストローク並列4気筒DOHC5バルブ 749cc 77ps 7.0kg-m■209kg(乾) ※写真左はFZ750レーサー
【YAMAHA FZR750 [OW74]】’85年の鈴鹿8耐にはFZのTT-F1マシンとなるワークスFZRを投入。K・ロバーツと平忠彦のコンビで8耐人気を社会現象まで高める契機となった。
YAMAHA V-MAX──Vブーストで145psを叩き出す豪速ドラッガー
’80年代レプリカブームのさなかにあって、ひと際孤高で武骨なカテゴリーがあった。それがいわゆるアメリカンとは一味違うドラッガースタイルだ。北米市場拡大を狙ってヤマハが投入したV-MAX1200は145psのV4パワーでゼロヨン好きな彼らのツボを直撃した。
もともとクルーザーのベンチャーロイヤルがベースとなるこのV4で145psを発揮できたのは、有名なVブースト機構のおかげ。前後キャブレターのマニホールド間を回転数の上昇に伴いバイパス。高回転域では1気筒あたりツインキャブレターとすることで大馬力を引き出した。’90年に国内仕様も登場したが、Vブースト無しの98ps。逆輸入車人気が相変わらず続き、後にワイズギアから国内用Vブーストカスタムキットが発売された。
【YAMAHA V-MAX 昭和60(1985)年】主要諸元■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 1198cc 145ps/9000rpm 12.4kg-m/7500rpm■263kg(乾)■F=110/90-18 R=150/90-15
Vブーストは、インテークマニホールド間をつなげて吸気効率アップ。エアボックス容量を稼ぐために燃料タンクはシート下にあった。
HONDA VFR750R [RC30]──プライベーターの救世主 コスト度外視の本気レースベース車
レースはワークスチームだけではなく、数多くのプライベーターたちがいてこそ成り立つもの。そんな彼らがワークスにも勝てるマシンとして生み出されたのがRC30だ。当初はVFR750FにワークスRVFの外観を着せて売価は89万円というのが上層部からの指令だった。だが開発チームは納得いかなかった。本気で勝つためにチタンコンロッドやマグネシウムのヘッドカバー、FRPのカウル…etc。しまいにはライン生産ではなく1台ずつ手組み生産という、それまでの常識を超えた贅の限りが尽くされた。
しかして、当時148万円は超高価格設定だったが、予定の限定1000台は抽選販売となる大人気で最終的に世界で4885 台を販売。鈴鹿8耐のエントリーも約半数をRC30が占めるようになった。
【HONDA VFR750R [RC30] 昭和62(1987)年】主要諸元■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 748cc 77ps/9500rpm 7.1kg-m/7000rpm■180kg(乾)■F=120/70-17 R=170/60R18 ※写真左はRVF750
カムギアトレーンの90 度V4 エンジンは型式こそVFR750Fと同じRC07Eだが、圧縮比が高められ、チタンコンロッドなどにより戦闘力が大いに高められた。
YAMAHA FZR750R [OW-01]──ヤマハもレースベース車投入
レースに勝つためには高くても売れることをRC30が証明。ヤマハもFZR1000をベースとしたFZR750を作っていたが、レース用ホモロゲ車としてワークスマシンYZF750とほぼ同じ構成のFZR750R(OW01)を開発した。チタンコンロッドやオーリンズリヤサス、FRPカウルなど即実戦仕様。限定500台&定価200万円の国内分は、やはり予約抽選で完売となった。
【YAMAHA FZR750R [OW-01] 平成元(1989)年】主要諸元■水冷4ストローク並列4気筒DOHC5バルブ 749cc 77ps 6.7kg-m■187kg(乾)
SUZUKI GSX-R750R──ワークス共通部品も多数
スズキのスーパーバイク用ホモロゲーション車となるGSXR750Rも、強化フレームにスタビライザー付きスイングアーム、クロスミッションやアルミタンクなどで強化した実戦仕様。エンジンもSTDよりストロークを延長した専用設計とし、世界耐久選手権ワークスマシンとの共通部品も投入されていた。定価は165万円。500台の限定発売だった。
【SUZUKI GSX-R750R 平成元(1989)年】主要諸元■油冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 749cc 77ps 6.8kg-m■187kg(乾)
KAWASAKI ELIMINATOR──漢のゼロヨンニンジャ
V-MAXと同じドラッガースタイルを投入したのがカワサキ。ゼロヨンイメージを性能でも確かなものとするため当時世界最速のGPZ900Rエンジンをシャフトドライブ化して搭載。発進加速ではGPZを上回った。しかし、北米ではV-MAX人気に勝てず短命に。900は輸出車のみで国内には直4を積んだ750&400版や並列2気筒の250版が発売されていた。
【KAWASAKI ELIMINATOR 昭和60(1989)年】主要諸元■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 908cc 105ps 8.7kg-m■238kg(乾)
独自路線で国内でも硬派なイメージを築いたエリミネーター400。
YAMAHA SDR──軽さ命の2ストシングル
こちらもレプリカ全盛期に、シングルスポーツの可能性を探った孤高のモデル。DT200Rのピストンリードバルブ2ストエンジンをクランクケースリードバルブに再設計し、メッキが施された鋼管トラスフレームの車体に搭載。1人乗り専用とし、とことん軽さが追求された。乾燥重量わずか105㎏に34psは実にアグレッシブだった。
【YAMAHA SDR 昭和62(1987)年】主要諸元■水冷2ストローク単気筒クランクケースリードバルブ 195cc 34ps 2.8kg-m■105kg(乾)
SDRの魅力の1 つが車体のスリムさ。タイヤ幅かというぐらい細く、思わずタンク上に比較用のセブンスターを置いてしまうほど(昭和か)。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
走る、曲がる、止まる。全ては「軽さ」で決まるんだ〈スズキ GSX-R750〉 ’83年にRG250Γ、翌年にGSX-R(400)を発売した「レプリカのスズキ」が'85年、またも衝撃作のGSX-R750[…]
スズキ「GSX-R750」2024年モデルとR1000チャンピオンエディションの写真をまとめて見る 38年の歴史を誇るナナハン・スーパースポーツ 1985年当時、ナナハンと呼ばれていた750ccクラス[…]
レーサー以外の何物でもない!〈ホンダ VFR750R〉 ビッグバイクで空冷直4が全盛だった'82年。ホンダが新時代の到来を告げる、水冷V型4気筒のVF750Fをリリースした。やがてVFは、ワークス耐久[…]
最後のV4エンジン搭載車が生産終了 さる4月28日、ホンダが「法規対応に伴う、Honda二輪車の一部機種の生産終了について」というリリースを出した。厳しさを増す排出ガス規制に対し、一部機種を生産終了す[…]
ヤマハのスターライダーがドラマチックなレース展開を演じた1985年の物語に続くのは、TT-F1レギュレーションで製作されたワークスマシンの紹介編だ。ケニー・ロバーツと平忠彦が走らせたFZR750[OW[…]
最新の関連記事([特集] 日本車LEGEND)
世界不況からの停滞期を打破し、新たな“世界一”への挑戦が始まった 2008年からの世界同時不況のダメージは大きく、さらに東日本大震災が追い打ちをかけたことにより、国産車のニューモデル開発は一時停滞を余[…]
究極性能先鋭型から、お手ごろパッケージのグローバル車が時代の寵児に オーバー300km/h時代は外的要因もあって唐突に幕切れ、それでも高性能追求のやまなかったスーパースポーツだったが、スーパーバイク世[…]
レプリカブームはリッタークラスへ。速度自主規制発動から世界最速ロマンも終焉へ ZZ-R1100やCBR900RR、CB1300 SUPER FOURといった大ヒットが生まれたこと、そして教習所での大型[…]
大型免許が教習所で取得できるようになりビッグバイクブームが到来 限定解除、つまり自動二輪免許中型限定(いわゆる中免)から中型限定の条件を外すために、各都道府県の試験場で技能試験(限定解除審査)を受けな[…]
ハチハチ、レーサーと同時開発、後方排気など様々なワードが巷に踊る 群雄割拠のレーサーレプリカブームはやがて、決定版ともいえる’88NSR250Rの登場でピークを迎えていく。「アルミフレーム」「TZと同[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
超高性能なCB750FOURでオートバイのイメージを損なわないようジェントルなモデルをアピール! 1969年、世界初の量産4気筒スーパースポーツ、CB750フォアが衝撃のデビューを果たした。 これを契[…]
水冷化もユーザーに寄り添う地味なコンセプトを貫きながら、実は空前の大ヒットGSX-Rの伏線だったのだ! 1983年、スズキは400ccで初となる水冷DOHC4気筒のGSX400FWをリリースした。 そ[…]
125ユーザーにもナナハンキラーRZ250の醍醐味を届けたい! 1980年にデビューしたRZ250は、世界チャンピオンを狙える市販レーサーTZ250の水冷メカニズムからモノクロス・サスペンションまで、[…]
ヤマハの社内2stファンが復活させたかったあの熱きキレの鋭さ! 「ナイフのにおい」R1-Z の広告キャッチは、ヤマハでは例のない危うさを漂わせていた。 しかし、このキャッチこそR1-Zの発想というかコ[…]
空冷ビッグネイキッドをヤマハらしく時間を費やす! 1998年、ヤマハは空冷ビッグネイキッドで好調だったXJR1200に、ライバルのホンダCB1000(Big1)が対抗措置としてCB1300を投入した直[…]
人気記事ランキング(全体)
「マスダンパー」って知ってる? バイクに乗っていると、エンジンや路面から細かい振動がハンドルやステップに伝わってきます。その振動を“重り”の力で抑え込むパーツが、いわゆるマスダンパー(mass dam[…]
主流のワンウェイタイプ作業失敗時の課題 結束バンドには、繰り返し使える「リピートタイ」も存在するが、市場では一度締め込むと外すことができない「ワンウェイ(使い捨て)」タイプが主流だ。ワンウェイタイプは[…]
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
トップス&インナー 機能性抜群な冬用パーカー JK-630:1万3000円台~ 伸縮性の高い透湿防水生地を使用したウインターパーカー。保温性に優れた中綿入りなので、暖かさをキープでき、快適なライディン[…]
SHOEI NEXT LINEのクロスロゴ第2弾がネオクラシックラインに満を持して登場 『NEXT LINE(ネクストライン)』は、SHOEIが2023年にスタートさせた、“遊び”をキーワードにしたブ[…]
最新の投稿記事(全体)
超高性能なCB750FOURでオートバイのイメージを損なわないようジェントルなモデルをアピール! 1969年、世界初の量産4気筒スーパースポーツ、CB750フォアが衝撃のデビューを果たした。 これを契[…]
自分の力量、目指す位置、さらに好きなカテゴリーでBMWを楽しむ 近年流行しているビッグオフロード車。多くの人を魅了し、その牽引役であるのがBMWモトラッドが生み出したGSシリーズだ。2023年に130[…]
繋がる、見える、タフネス。ライダーが求める基本性能を凝縮 ツーリングにスマホナビは欠かせないが、バイク乗りなら誰もが抱える共通の悩みがある。それは、走行中の激しい振動によるスマホカメラの故障や突然の雨[…]
お手頃価格のネオクラヘルメットが目白押し! コミネ フルフェイスヘルメット HK-190:34%OFF~ コミネの「HK-190 ジェットヘルメット」は、軽量なABS帽体と高密度Epsライナーが特徴の[…]
四輪のBMWと同様、モーターサイクルも高性能エンジン車とEVの二本立てで未来へ駆ける!! 10月30日(木)から11月9日の11日間、東京ビッグサイトに101万人にも及ぶ来場者が集り大盛況のうちに閉幕[…]
- 1
- 2




















































