●文/写真:モトツーリング編集部(カン吉)
下栗の里:試練の狭路を走り切れば、そこには感動の絶景が待っている
「赤石山脈」とも呼ばれる南アルプスは、3000m級の山塊が果てしなく連なる大山岳地帯だ。長野県/静岡県/山梨県と3県に跨っており、トレッキングですら受け付け難いほどの険しさから、”真の秘境地帯”とも呼ばれている。
そんな南アルプスの山中、標高800~1100m付近に「下栗の里」と呼ばれる山里がある。外界からほぼ隔絶された幽玄の山中、仙人の存在すら疑問に思わない山中に佇む60世帯/150人余りの里。標高の高さから米や麦が育たないため、蕎麦/野菜/雑穀で生計を立てつつ自然と共生する人々の集落だ。約38°の大傾斜地帯を実に巧妙に開拓し、遠望するとまるでアルプスに溶け込むかのような風景。「にほんの里100選」にも認定されており、生活地理学者の市川健夫氏が「日本のチロル」と呼称したことから、一躍全国的に有名になった山村だ。
里の全景が見渡せるビューポイントまでの道程は全線1.5車線の狭路。完全舗装ではあるものの、落石も点在し路面も決して良いとは言えない。いくつものヘアピンカーブと、見通しの悪い酷道をクリアする必要があり、初心者ライダーには試練の道とも言えるだろう。
しかし、落差約1000mもの度肝を抜かれる展望や抜群の秘境感。この試練の過程を勘定に入れても、なおあり余るほどの感動絶景がキミを待っている。
この狭さを楽しめる要素を持つのはバイクのみ。ライダーならば、一生に一度は絶対に行っておきたいポイントだと言えるだろう。
ここでしか食せない激レア食材=原種のジャガイモ
下栗の里の特産品である「ニ度芋」。いわゆるジャガイモのことだが、二期作可能なことから付いた呼称だ。標高が高く冷涼なこの地では、重要なデンプン源として古くから栽培されてきた。驚くべきことに、外界と隔絶された地であったためもあり、本来の原産地であるアンデスの原種にもっとも近い種と言われているのだ。
【はんば亭】●住所:長野県飯田市上村下栗1250-1 ●電話:0260-36-1005 ●定休日:水木曜
御池山隕石クレーター:バイクで走れる国内唯一の隕石クレーター
下栗の里からアルプス稜線を駆ける南アルプスエコーラインは、1.5車線ながらダイナミックな山岳風景が素晴らしい快走ロード。このエコーラインは、御池山付近で古代に衝突した隕石クレーターの内側をトラバースする、珍しい道である。氷河期の終わり頃、直径45mもの隕石がこの地に衝突。直径約900mのクレーターができたのだ。現在は浸食によって現存範囲は40%程度だが、明らかにクレーター形状が判別可能となっている。
エコーラインは、クレーター中心を遠望するようにその内側をトラバースする。3000m級の南アルプスを見渡す絶景ルートだが、小落石が多く路面には注意が必要。また、休日は交通量も散発的にあるため、ライン取りを注意し正面衝突事故に気をつけよう。
【御池山隕石クレーター】●所在地:御池山頂上付近(エコーライン沿いから見学可。看板あり) ※R152よりしらびそ高原経由約30分/下栗の里経由約20分
キンと冷えたアルプスの湧水巡り。軟水/硬水の味比べも
アルプス山麓に隣接する周辺は湧水の宝庫。道沿いには湧水スポットが点在し、キンと冷えた自然の水を堪能できる。
そのほとんどは丸みと甘さを併せ持つ軟水が中心だが、この地域には国内では珍しい硬水が湧出している場所もある。龍淵寺境内に湧く450年もの歴史を持つ名水「観音霊水」は、国内屈指の硬度を持つ硬水で、アルプス特有の地質構造が生み出した珍しい湧水だ。
国道361号・開田高原長峰峠
下栗の里と並ぶ南信州のもうひとつのハイライトが、岐阜県境に近い開田高原だ。中でも高山市との主要連絡道でもある国道361号線は、3000m超の山体を誇る霊峰・御嶽山を一望できる超絶絶景ルート。
標高は1350mと国内屈指の標高を誇っており、猛暑の続く真夏でもひんやり。下栗の里とは少々エリアは離れているが、南信に訪れたなら絶対に走っておきたいルートだ。
路面は少々荒く、区間によっては道幅も狭いが、その展望と景色に感激すること間違いない。
交通量:木曽街道と呼ばれる主要街道だが、観光車両も少なく大変走りやすい。ただし、スピードの遅い地元車両やまれに取り締まりも行なわれているため、速度は控えめに。
路面:全体的に比較的良好だが、山岳部は荒れが目立つ箇所もある。国道ながら、場所によっては1.5車線の狭路部分もあり、通行には十分注意してほしい。
まさにアルプス盛り! 駒ヶ根ソースカツ丼
カツ丼は、ラーメンと並び我々庶民に定着したグルメ。もはや”国民食”と言っても過言でない。しかしこのカツ丼は、卵派とソース派の間にて永遠の派閥争いが繰り広げられている。では、一体どちらが元祖なのだろう?
実はこれについては、大正10年に早稲田高等学院生の中西敬二郎氏らが学生をターゲットとして考案したという説と、大正2年に高畠増太郎氏が東京の料理発表会でソースかつ丼を発表したという説の2説ある。両説のどちらが元祖かは現在不明だが、とにかくカツ丼の元祖はソースであることは間違いない。
そこでこの地域で絶対の食しておきたいグルメが、駒ヶ根市の名物「駒ヶ根ソースカツ丼」なのだ。発祥は昭和11年頃。駒ヶ根駅付近のカフェにて現「きらく」の先代が提供したのが元祖と言われている。
特徴は、比較的甘めのソースとごはんに敷かれたたっぷりのキャベツ。この両者の相性が実に素晴らしい。キャベツのフレッシュ感が肉の脂を中和してくれるため、最後まで飽きることなく食せるのだ。駒ヶ根市では認定B級グルメとしてPRしているが、乱立するB級グルメ群とは一線を画した昭和浪漫溢れる逸品だ。ぜひいただいておこう。
【ガロ】●住所:長野県駒ケ根市赤穂北割一区759-336 ●TEL:0265-81-5515
※本稿は2019年6月に公開された記事に再編集を施したものです。 ※本記事は“モトツーリング”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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