今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は、’80年代中盤に登場した2ストGP500レーサーレプリカ「スズキRG400/500Γ」について、クオリティーワークス・山下伸氏のインタビューをお届けする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 YM ARCHIVES ●取材協力:クオリティーワークス
- 1 レース参戦で実感した、圧倒的な戦闘力と耐久性
- 2 メンテナンスコスト(クオリティーワークスの場合)
- 3 カウンターモデル:入手と維持が容易なヤマハ250ccパラツイン
- 4 [連載] プロに学ぶ’80s国産名車メンテナンスに関連する記事
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レース参戦で実感した、圧倒的な戦闘力と耐久性
クオリティーワークスでは、メーカーや年代を問わず「ありとあらゆる」と言いたくなるほど、幅広いジャンルの2スト車を取り扱っている。もっとも同店代表の山下伸氏が、スズキ製2ストスクエア4の資質に本当の意味で気づいたのは、’10年にRG500Γでレース参戦を開始してからだったそうだ。
「Γでレースをして驚いたのは、ノーマルでも十分に高い馬力が、チューニングによって飛躍的に上がること、過酷な状況で使ってもそう簡単に壊れないこと、フレームが現代の視点でも十分な剛性と包容力を持っていること、などですね。ウチが創業当初からお付き合いしているお客さんで、同時代に生まれた他の2ストでレースをやっている人の場合は、パワーアップのために”いじっては壊し”を繰り返すのが通例で、フレーム補強が話題になることが多かったのですが、それらと比べると、Γは速く走るための手間が少なくて済むうえに、性能の維持が容易でした」
言ってみれば、ワークス/市販レーサー譲りの資質を実感したわけだが、一方で山下氏は、Γのストリートでの扱いやすさにも感心したと言う。
「”2スト/GP500レプリカ”という言葉から、シビアなイメージを持つ人がいるかもしれませんが、スクエア4のΓは低速トルクが十分にあるし、ハンドリングはニュートラルなので、日常域でも扱いやすいです。事実、ウチのスタッフは、以前は500を毎日のように通勤に使っていましたから。また、キャブセッティングが多少外れていても普通に走れることもΓの魅力で、その大らかさはレースを戦ううえで大きな武器になりました」
山下氏のレースにおける活躍(’10~’16年のTOTや筑波選手権で何度も優勝)が知れわたるにつれて、同店ではRG400/500Γの作業依頼が急増。当初は山下氏のレーサーに通じる形で、エンジンチューンや足まわりの全面刷新を希望する人が多かったものの、最近はノーマルスタイルにこだわる人が増えているようだ。
「バイクの楽しみ方は人それぞれですから、ウチの場合は昔から、”こうしないとダメ”という決まりはありません。ただし、純正部品の供給状況を考えると、今はもうエンジンチューンはオススメしにくい。一方の足まわりは、ノーマルに物足りなさを感じる人やタイヤの選択肢を増やしたい人には、前後17インチラジアルが履ける、現代的な構成への変更を推奨することがありますが、マストではないですね。さすがにサーキットは厳しいですが、ノーマルの足まわりでもスポーツライディングは楽しめますし、旧車としての価値を考えるなら、ノーマルスタイルにこだわるのは大いにアリでしょう」
当記事を読んで、スクエア4のΓの購入を決意した人がいたら、山下氏はどんなアドバイスをするのだろう。
「非常に難しい質問ですね(笑)。整備履歴がハッキリしている車両/信頼できるショップや売り手を探してくださいと言いたいところですが、Γの場合は市場に流通している中古車が少なく、選択の余地はあまりないですから。もちろん、ウチにコンディションが良好な在庫車や委託販売車があるときなら、それをオススメしますよ」
そう語る山下氏ではあるが、クオリティーワークスの手にかかれば、どんなΓでも本来の資質が取り戻せるのだから、極端な心配はしなくてもいい…のかもしれない。と言っても、素性が不明のΓを入手してきっちりフルオーバーホールをするとなったら、50~100万円前後の費用がかかることは珍しくないようだ。補修用部品が徐々に減っている現状を考えると、このモデルに興味がある人は、なるべく早めの決断をしたほうがいいだろう。
メンテナンスコスト(クオリティーワークスの場合)
- エンジン腰上点検整備:6万円~(税抜価格/以下同)
- エンジンフルオーバーホール:60万円~
- キャブレターオーバーホール:2万円~
- フロントフォークオーバーホール:4万円~
部品代を含まない上記の価格は目安で、実際の工賃は車両のコンディションによって異なる。エンジンオーバーホールについては、ひと昔前は腰上だけで性能が回復できるケースが多かったものの、最近はクランクシャフトのオーバーホール必須になりつつあるようだ。なお同店では、内燃機加工の多くを井上ボーリングに依頼。
カウンターモデル:入手と維持が容易なヤマハ250ccパラツイン
NS400Rはそうでもないが、近年のGP500レプリカは高額化し、RZV500Rの相場もRG500Γとほとんど同等。だから山下氏がお客さんに対して、積極的にオススメすることはめったにないそうだ。
「もちろん、欲しいバイクを買うのが一番ですから、どうしてもと言う人がいたら、喜んでお手伝いします。でも単純に2ストに乗りたいなら、僕のオススメはヤマハの250ccパラレルツインシリーズ=RZ-R/初代TZR/R1-Zなどですね。このあたりのモデルなら、まだGP500レプリカほど価格が上がっていないし、補修部品の心配もほとんどありません。セパレートハンドル+フルカウルの2ストレプリカに乗ってみたいなら、TZRはいい選択だと思いますよ」
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