今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる。本記事ではGP500の思想を反映したV3レプリカ「ホンダNS400R」について、DMRジャパン・前田英樹氏のインタビューをお届けする。
●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:DMRジャパン
【DMRジャパン・前田英樹代表】’75年生まれの前田氏は、若き日からNS1やYSR50などをベースにしてさまざまなチューニングを実践。機械科の高校を卒業してからは、4輪の整備工場や2輪パーツ量販店などに勤務し、29歳のときに自身のショップをオープンした。DMRは”デロリアンマエダレーシング”の略で、その由来は前田さんが20代の頃から所有している4輪の愛車。
パーツ開発のきっかけは400Γに敗北したゼロヨン
最近ではNSR用パーツも増えてきたが、今回の取材に協力してくれたDMRジャパンは、世界中でもっともNS400Rに力を入れているショップと言える。そもそもの話をするなら、同店代表の前田氏はどうしてこのモデルに傾倒することになったのだろうか。
「大前提として2スト好きという事情はありますが、”ヒトとは違うバイクに乗りたい”という気持ちが、NS400Rを好きになった原点でしょうね。僕が2輪免許を取得した’90年代初頭は、まだレプリカブームが続いていましたが、NS400Rはまったく見かけませんでしたから。
パーツ開発のきっかけは、ゼロヨンで400 Γにボロ負けしたことです(笑)。そこからヤル気に火が付いて、さまざまなチューニングにトライすることになりました」
そう語る前田氏だが、現在の同店が販売するパーツは、維持を目的としたリプロ品がメインで、チューニング用は決して多くはない。
「比率はそうなりましたが、僕が昔から夢想していた、乾式クラッチ/クロスミッションとシリンダー/ピストンキットは製品化できましたし、当社のパーツは単なる復刻品ではなく、現代の技術を投入しているので、見方によってはほとんどがチューニングです。ただし、維持を目的としたリプロ品が多い背景には、お客さんの趣向に合わせてという事情がありますね。ひと昔前までの2ストはいじってナンボという雰囲気でしたが、最近はノーマルにこだわる人が多くなりましたから」
もっともその一方で、同店に集うNS400Rユーザーの中には、エンジンから車体に至るまで、徹底的なカスタムを行うライダーも数多く存在する。
「カスタム派の間では、エンジンは当社のパーツ、キャブレターは純正より口径が大きいNS250RかNSR250R用、チャンバーはJhaの当時モノやJLなどが定番です。古さを感じる足まわりは、後年式のCBRやNSR用などに丸ごと換装する人が多いですが、コムスターにこだわるマニアの場合は、純正のリヤ用リムを前輪に、VF1000Rのリヤ用リムを後輪に移植して、前後17インチ化を図るのが理想形になっているようです」
ノーマル派かカスタム派かはさておき、実際にNS400Rを購入したら何か注意することはあるのだろうか。
「オイルぐらい…でしょうか。まず2ストオイルについては、当社の推奨品はヤマハRSとホンダGR2で、もちろん残量はマメに点検してください。ミッションオイルはホンダG2が定番で、こちらはつい忘れがちになるんですが、自分で距離や時期を決めて、定期的な交換を心がけてほしいですね。それ以外
の注意点は、真夏の渋滞路をトロトロ走らないこと。とりあえずファンが付いていますが、ノーマルの冷却性能は万全とは言えないので、高温で走行風が当たらない過酷な状況はできるだけ避けたほうがいいでしょう。いずれにしても注意点はそのくらいで、各部の整備によって本来の調子を取り戻したNS400Rなら、現行車と大差ない感覚で付き合えると思いますよ」
メンテナンスコスト(DMRジャパンの場合)
- エンジン腰上オーバーホール:6万円~(税抜・以下同)
- エンジンフルオーバーホール:16万円~
- キャブレターオーバーホール:2万~5000円
- フロントフォークオーバーホール:1万5500円
- 前後ブレーキキャリパーオーバーホール1万3000/7000円
パーツ代を含まない上記の価格はあくまでも目安で、実際のコストは車両の状況によって異なる。各部品の程度があまりに悪い場合は、同店がストックする中古を使うこともあるそうだ。なお、現在のDMRで整備を行っているNS400Rはサーキット専用車のみで、ナンバー付き車両は受け付けていない。
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