話題沸騰中のハーレーダビッドソン新型スポーツスターSに試乗した。伝統のVツインは挟角45→60度となり、ついに水冷化。前編の車体チェック編に引き続き、気になるその乗り味=試乗インプレッションをお届けする。
●文:ヤングマシン編集部(青木タカオ) ●写真:長谷川 徹
スタイリング/ライディングポジション/カラーバリエーション エンジン/足まわり 主要装備 新型スポーツスターSの実力やいかに!? 後編、渾身の試乗インプレッション編に続きます。 〈写真1〉 〈写真2〉[…]
高回転までスムーズにトルクが盛り上がっていく
ローライダーやファットボーイなど、いつの時代もハーレーの布陣はレジェンド揃いだが、中でもスポーツスターはラインナップに欠かせないモデルとして主軸を担ってきたシリーズ。初代は’57年に誕生と、歴史も格段に古く、言うなれば別格。レースや市場を席巻するバーチカルツインの英国車勢に対抗するべく、ハーレーで初めてリヤサスペンションを備えるなど、そのネーミングが示す通りスポーティーさをウリにする熱き一門だ。
そんな由緒あるスポーツスターが、大きく生まれ変わったのだ。大袈裟だと笑うなかれ。これはハーレーファンのみならず、バイク好きにとっては見逃せない歴史的出来事と言えるだろう。
普段のニューモデル試乗よりいっそう強い緊張感を伴いつつ、ナンバー登録したばかりのスポーツスターSのイグニッションをオン。メーターパネルにお馴染みのバー&シールドのロゴが表示されたかと思うと、すぐに画面はタコメーターと速度計に切り替わった。慌てず、深呼吸。これを見てからハンドル右にあるスターターボタンを押すと、元気よくエンジンが目覚める。スイッチオン後すぐにセル始動すると、かかり損ねることが何度かあったことを報告しておこう。インジェクションや燃料ポンプの準備などに要するのは、わずかに3〜5秒。焦らず、待つべし!
サイドスタンドを払って車体を引き起こすと、圧倒的な軽さを感じる。車両重量は228kgで、フォーティーエイトより24kgもの軽量化を果たした。
シフトペダルを踏み込むと、スムーズに1速に入る。主要3軸をコンパクトに三角配置した現代的な水冷60度DOHC4バルブVツインは、空冷時代のガッチャンと金属音を立てるプライマリーチェーンを介したトランスミッションとは大きく異なることがすぐにわかる。車体の取りまわし同様、クラッチレバーの握りもとても軽い。
極低回転域からトルクが十分にあり、クラッチミートに気を使う必要がない。低いギヤのままアクセルを大きく開ければ、加速は強烈そのもの。右手のスロットル操作と駆動輪が直結したかのようなダイレクト感があり、路面を蹴飛ばすかのような力強いダッシュ力に加え、レブリミッターの効く9500rpmまでスムーズにトルクが盛り上がり、率直に言うとかなり”速い”!!
あらかじめ設定されたライディングモードはスポーツ/ロード/レインの3つ。スポーツにすればスロットルレスポンスがさらに鋭くなり、パワーの湧き上がりは空冷2バルブ時代とは比べものにならない。先行発売したパンアメリカにも積まれる1250ccのパワーユニットは可変バルブタイミング機構のおかげもあって全域で常に力強いが、「レボリューションマックスT」と末尾にトルク型であることを示す”T”を追加。3000〜6000rpmで最大10%トルク増強する味付け変更が施され、アクセルを開けたときのヒット感が強くパワーがみなぎっている。
それでいて、早めにシフトアップし、低回転でゆったりと流すことも許容してくれるから懐が深い。ロングストローク空冷OHV時代と比較すれば希薄ながらツインらしい鼓動感も伴いつつ、ハイマウントマフラーから野太いサウンドを奏で、ハーレーファンらがこだわる味わい深さや音にもこだわりを持って開発してきたことがよくわかるのだった。
前輪タイヤを積極的に働かせてグイグイ曲がっていく!
17インチ160mmの極太タイヤをフロントに履くことから、試乗前はハンドリングにクセがありそうと身構えた。なんせ、16インチ150mm幅のフォーティーエイト、18インチ160mmのファットボーイ、いずれもステアリングフィールはヘヴィだからだ。
しかし、スポーツスターSでは違った。コーナーの進入では、低いステアリングヘッドと低重心を活かして車体がスムーズに寝ていき、セルフステアを活かしてクルッとコンパクトにグイグイ曲がっていけるから驚くではないか。Uターンがしやすい上、アールの大きなコーナーではベターッと深いリーンアングルを安定してキープすることもできる。
ステアリングヘッドが高く操縦性が軽かった従来の空冷スポーツスターより前輪の接地感が高まり、しなやかに動く43mm倒立式フロントフォークも相まって路面からのインフォメーションがより得やすい。それだけにフロントタイヤを積極的に働かせ、コーナーをよりハードに攻めていけるのだ。
また、フォワードコントロールながらステップは遠くなく、取り付け位置を高くしバンク角も稼いだ。ハンドルも抑えが効くワイドバーで、若干の前傾姿勢をとりつつアグレッシブに、かつ豪快にワインディングを駆け抜けられた。
コーナーの出口では、シートに荷重して駆動輪の押し出し感を味わい尽くしたい。トラクション性能に優れるのは、水冷60度Vツインのクランクピンを30度位相させて90度Vツインや270度クランクのパラツインと同じ爆発間隔としたためで、コブシの効いた鼓動が感じられ、アクセルを開けて加速するのが楽しい。
エンジンをストレスメンバーとする3分割フレームを骨格としたシャーシは、ハイスピードでコーナーに飛び込んでも抜群のスタビリティで、衝撃に対する落ち着きがある。
また、1次/2次のバランサー機構で振動は抑えられ、減衰の効いた前後サスペンションが滑らかに動き、乗り心地も文句のつけようがないレベル。さらに6軸IMU(慣性計測ユニット)も搭載され、トラクションコントロールやエンジンブレーキコントロールといった電子制御も機能するため、ビッグトルクを不安なく引き出せる。
新時代の幕開けというにふさわしい完成度の高さで、これまでハーレーに乗っていなかった固定概念のない新規層からまず食指が動き、少し様子を見て既存のハーレー乗りたちがそれに続くのではないかと予想する。いずれにせよ、人気沸騰間違いなしだろう!
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