ヤマハは、スバルテクニカインターナショナル(STI)が開発中の近未来モータースポーツEV「STI E-RA」に搭載される電動モーターユニットを提供したと発表した。STIは、このマシンでニュルブルクリンクのラップタイム400秒(6分40秒)に挑戦することを目標に開発を進めていく。
●外部リンク: ヤマハ, スバルテクニカインターナショナル
2023年のチャレンジに向けて……
ヤマハは、これまでのエンジン開発で築いた技術や感性により、エモーショナルなパワーユニットの創造を目指して開発したとする高性能な電動モーターユニットをスバルテクニカインターナショナル(STI)に提供したと発表。これを搭載するマシンは、STIが開発中の近未来モータースポーツEV「STI E-RA」だ。
これと同時にSTIは、地球温暖化対策を主としたカーボンニュートラル時代に向けて、モータースポーツの世界で新しい技術の経験と修練を積むことを目的として、STI近未来モータースポーツ スタディプロジェクト 「STI E-RA CHALLENGE PROJECT」を立ち上げ、同プロジェクトで開発を進めてきた「STI E-RA」のコンセプトカーを発表。本日2022年1月14日より開催中の東京オートサロンにて実車を公開した。
STIによれば、このマシンは2022年に国内サーキットを含む走行実験を重ねたのち、2023年以降にニュルブルクリンクサーキットでのタイムアタックでラップタイム400秒(6分40秒)に挑戦することを最初の目標としている。
「走りの愉しさ」「絶対的な安心感」といった将来も変わらぬSUBARUらしさをSTIがより際立たせるため、SUBARUの強みである「全輪制御技術」の知見を活用し、システム最大800kW(1088ps)という高出力を、新たに採用する独自の4モーター4輪トルクベクタリング技術で制御。モーターはヤマハが供給するハイパーEV向けギア、インバーター一体式大トルク高回転タイプを採用し、蓄電量60kWhのリチウムイオンバッテリーで駆動するという。
独自のトルクベクタリングシステムは、走りの愉しさを最重要課題としたドライバー志向の制御で、4輪それぞれのグリップ限界までバランスを均等化させることで、グリップレベルを最大限に引き上げるとともに、車体の姿勢を安定させる技術だ。最大の効果を得るためには、荷重移動に伴って最適な駆動トルクを4輪に独立に与える事が最良の手段であり、車輪速、車速、舵角、G、ヨーレート、ブレーキ圧、輪荷重などの各種センサーからの信号をリアルタイムに計算し、目標のスタビリティファクターになるように各輪の駆動制動トルクを決めてインバーターに指示を出す。
4輪へダイレクトにモーターが付いているため応答性が高く、かつ車体のヨーを直接的にコントロールできる構造は、車両運動性能を最大化できるシステムとして考えられ、将来のモータースポーツ車両(FIA E-GT)のレギュレーションにも盛り込まれていることから、STIはこれを同社が取り組む最適な方向性と捉えているとした。
試作時点で350kW(476ps)の最大出力! これを4輪4モーター搭載
ヤマハは2021年4月にハイパーEV向け電動モーターユニットの試作開発受託を開始したことを発表しており、今回のコンセプトカーに搭載された“エモい”パワーユニットは、これの発展版と思われる。2021年4月時点では、ハイパーEVなど高出力帯モビリティへの搭載を想定した最大出力350kWクラス(動作電圧800V)の電動モーターとしていた。
ヤマハは2021年7月、2018年に策定した「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」を見直し、2050年までに事業活動を含む製品ライフサイクル全体のカーボンニュートラルを目指す目標を新たに設定した。そのなかでも、2050年までに「スコープ3(主に製品使用時など)」におけるCO2 排出量を2010年比90%の削減を目標に掲げており、電動モーターユニットの試作開発受託は、この目標達成に向けた取り組みのひとつとしている。
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