トライアンフモーターサイクルズは、英国政府ゼロエミッション車局により資金提供を受ける、同社およびWilliams Advanced Engineering、Integral Powertrain Ltd、ウォーリック大学によるコラボレーションのもと、電動モーターサイクルを開発する「TE-1プロジェクト」で第2フェーズの目標を達成したと発表した。
英国自動車協議会が2025年に向けて設定した目標を上回る性能
トライアンフモーターサイクルズは、F1の流れを汲むウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング(WAE)やインテグラル・パワートレインのe-ドライブ部門、ウォーリック大学(WMG)とのコラボレーションで電動モーターサイクルを開発する「TE-1プロジェクト」について、フェーズ2が完了したことを発表した。
TE-1プロジェクトは、2019年5月に発表された2年間のプロジェクトで、電動バイクの機能開発から、将来的にはトライアンフ製電動バイクの発売に結びつけるとしていたもの。
このプロジェクトは、4つの主要段階に分けられ、その主たる目的のひとつがシステム統合の強化。このプロジェクトでは、自動車をベースにした電気駆動系の個々の部品を開発し、それらを革新的な複合ユニットに最適化することで、マス、複雑性、パッケージ要件を軽減する、洗練された電動二輪システムを生み出すことを目的としている。
フェーズ2の完了により発表された内容によると、バッテリーとパワートレインの設計の革新を含めて、初期のテストパフォーマンスの結果は、現在のベンチマークと業界の目標をはるかに上回ったとされる。パフォーマンス、効率性、航続距離における進歩は、TE-1プロジェクトのパートナーシップの目的を完全に達成し、将来におけるトライアンフの電動モーターサイクル戦略にさらなる投資を呼び込むことになりそうだ。
このパワートレインの検証では、質量、バッテリー技術、パワートレイン性能において、英国自動車協議会が2025年に向けて設定した目標を上回ったことが示されているという。
公開されたプロトタイプは、重量わずか10kgで180馬力を発生するモーターを搭載。これに最適化されたバッテリーモジュールを組み合わせることで、エキサイティングな電動モーターサイクルを開発していくという。
また、搭載車両のコンセプトスケッチも公開されているが、スピードトリプルにも似たスタイリングに、パワートレインユニットが綺麗に収まっている様子が見て取れる。早く実物を見てみたいぞ!
WILLIAMS ADVANCED ENGINEERING (WAE)
WAEでは、パフォーマンス目標を達成するための適切なセルテクノロジーとバッテリーアーキテクチャを決定し、これをフレームワークとして使用。バッテリーモジュールのレイアウトの最適化を施し、重心、スペース、さらにはパワートレインと充電アプローチの関係を考慮しつつ、プロトタイプシャーシ内の質量と配置のバランスを整えた。
モジュールレイアウトに加え、重量とパッケージングを最小限に抑えるため、バッテリーパックに統合された新たな独自の車両制御ユニットも開発。同時にWAEは革新的なバッテリー管理ソフトウェアも作成した。完成度の高いバッテリーパッケージにより、出力とエネルギーの点で、マーケットのどの製品よりも優れたパフォーマンスを獲得した。
INTEGRAL POWERTRAIN LTD.のE-DRIVE部門
最先端のモーターとインバーターの設計および製造におけるこれらの経験は、TE-1プロジェクトの技術を次のレベルにまで押し上げた。フェーズ1では、通常は分離されているモーターとインバーターをひとつのコンパクトなパッケージに統合する作業を行い、この結果、車両の追加ボックス、取り付け機構、クーラント配管、および高電圧接続が削減され、ドライブトレインの質量と体積が削減される。
革新的な統合コンセプトは拡張可能で、より大きな、より高トルクのモーターと組み合わせることもできる。最先端のモーター技術と組み合わせることで、すでに2025年に向けて英国自動車協議会によって設定された目標の2倍の出力密度を達成した。
また、インバーターに高度なSiC(シリコンカーバイド)スイッチ技術を実装したことにより、インバーターの損失が減少し、ドライブトレインの効率、出力、航続距離が向上している。
モーターは130kWまたは180hpを発生するが、重量はわずか10kgで、既存の技術よりもはるかに軽量。
ウォーリック大学WMG
WMGでは、フェーズ1とフェーズ2ですべてのTE-1パートナーと緊密に連携し、バッテリー、モーター、車両制御など、バイクのシステムをシミュレートする代表的なモデルを開発してきた。これは、初期モデルで航続距離や最高速度などのパフォーマンス基準を評価することで、対象となるコンポーネントの選択に対する仕様の検証を可能にした。
これにより、トライアンフは徹底的なテストプログラムを使用して、ハードウェアを構築する前の早い段階でソフトウェア開発を実行し、実際のテストで改良を実現できるようになった。最近では、シミュレーションが正確であることを確認し、システム内でモーターが意図したとおりに機能することを確認するため、プロトタイプのIPTパワートレインを使用してパワートレイン装置一式のテストを実施している。また、将来的な電動モーターサイクルのプラットフォーム全体で必要となる法的規制、充電インフラストラクチャ、リサイクル戦略に関するガイダンスをトライアンフに提供している。
トライアンフ モーターサイクルズ
フェーズ2において、トライアンフでは、直感的なスロットルレスポンス、回生ブレーキ、トラクションコントロールなど、すべての機能において、ユーザーがTriumphモーターサイクルに求める高い性能を保証するため、 すべての電気システムを組み込んだまったく新しい高度な車両制御ソフトウェアを開発。さらに、主要な機能と安全戦略をソフトウェアに統合、リグテストでWMGをサポートし、プロトタイプの新しいインストルメントディスプレイも新開発した。
電気システムおよび制御システムの作業に加えて、メインフレームとリアフレームを含む新しいプロトタイプ用シャシーを設計。これらのシャシーは、フェーズ3でさらに進化しTE-1プロトタイプに組み込まれる予定のバッテリーおよびモーターパッケージに最適化され、TE-1プロトタイプはフェーズ4でミュールテストのプラットフォームとして使用される。このシャシーの開発では、トランスミッションの設計とTE-1プロトタイプの最終的なスタイリングの両方を考慮した。
※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
日本モデルは「オレンジヒューズ」と「ビビッドブラック」の2色展開 ハーレーダビッドソンジャパンは、同社初の電動スポーツバイク「ライブワイヤー(LiveWire)」を本日2020年12月3日13時より1[…]
軽量コンパクト、前後14インチホイールのスポーツスクーター 台湾のキムコが発表した「F9」は、2018年秋のEICMAでお披露目された6段ギヤ付き電動スーパースポーツ「スーパーNEX(SuperNEX[…]
近藤スパ太郎[タレント/プロデューサー] 環境番組のパーソナリティを担当したことを機に、電動バイクの強烈なパワーにひと目ぼれ。俳優・MCの他、企画プロデューサー、芸能プロダクションSPANCHOOSの[…]
補助金は2021年3月1日まで! ボップなイエロー×ホワイトおよびホワイトが登場 某TV番組でもおなじみの、旧ビーノをベースにした電動スクーターが「E-Vino(イービーノ)」。着脱式のリチウムイオン[…]
パフォーマンス優先? 現状の把握はこれから 「'35年までに都内で純ガソリンエンジンの新車バイク販売をゼロにする」 '20年12月に東京都の小池百合子都知事が発表し、大きな波紋を呼んだ"電動化"方針。[…]
最新の記事
- カワサキ新型モデル「ニンジャ1100SX」登場! 排気量アップで新生、ブレンボ&オーリンズのSEも同時デビュー
- 黒玉虫とグリーンボール! カワサキ「Z650RS」の2025年もモデルが10月1日発売
- カワサキ「ヴェルシス650」新グラフィックで10/1発売! 可動ウインドシールドやトラコン、スマホ接続も装備するミドルツアラー
- 電子制御シフト搭載! クラッチ操作も不要のヤマハ新型「MT-09 Y-AMT」9月30日に発売
- 「小椋藍と中上貴晶 それぞれの“最後の”日本GP、マニアックすぎない見どころ紹介」【ノブ青木の上毛グランプリ新聞 Vol.17】
- 1
- 2