
●文:沼尾宏明
ヤングマシンお家芸のスクープネタとして、何度も執拗に追いかけ回してきた次期ハヤブサの姿。3代目新型のお披露目に伴ってスズキが公開した開発ストーリー動画により明らかになった試作車「ターボ」は、我々が長い間追い求めてきた夢の1台でもあった。
“最高速キング”が花形だった’90年代の末期に現れ、数々の伝説を打ち立てたスズキ初代ハヤブサ。その功績を当時ヤングマシン編集部員だった筆者が改めてプレイバックする。 規制議論を巻き起こすほ[…]
これがハヤブサに乗るぅ?! YMスクープ班の血圧急上昇
文字通りの“大物”だけに、ヤングマシン本誌スクープ班が全力で追いかけてきた次期ハヤブサ。YM本誌では’15年12月号から独自の”予想”を展開。「1500cc化」に始まり、「ターボ化」「やっぱり自然吸気で1400ccだ」「いやターボとの2本立てだ」「正常進化はするけど詳細不明」と変遷を辿った。
…結果的に的中は叶わなかったわけだが、我々が様々な仕様を予想してきたように、公式の開発ストーリー動画で数多くの試作車がテストされていた事実が判明。我々の迷走ぶりは、スズキの試行錯誤を正確に表していた…とも言えるのではなかろうか!?
開発ムービーの中でも驚いたのは、「ターボ隼」の存在だった。どの時期に試作されたのかは不明だが、YM本誌では’16年2月号でスズキ社内でのテスト情報をキャッチし、同4月号で特許を紹介した。当時の我々はテンション爆上がり。読者の反響も凄まじかった。
当時公開された特許は”電動アシストターボ”。単なるターボではなく、電動モーターでタービンの回転上昇をアシストする先進システムだ。唐突なターボラグを防ぐ上に、バッテリー+駆動用モーターで電動走行できるのも画期的。おまけにコンパクト設計で2輪用に最適だった。盛んに電動化が叫ばれる現在、”マイクロハイブリッド”として注目を集める手法でもある。
特許の図面は4気筒で、マシンの性格からしてハヤブサに最適。さらにDCTより速いセミオートマチック技術の特許も公開され、その導入にワクワクしたものだった。
ちなみに、同じ動画で明らかになった”6気筒”の存在までは、さすがのYM本誌もつかめず。採用は見送られたが、別の機会にぜひ市販化を!!
“ターボ隼”夢の根拠:電動アシスト式ターボ特許関連図面(’15年5月公開)
【EVモーターはエンジン背面に】駆動を補助するハイブリッド用モーターはエンジン背面に搭載。カウンターシャフトとギヤに直結し、発電機としてターボの補助モーターに電力供給する機能も持つ。モーターのみや電動アシスト走行など、任意でモード切り替えも可能だ。 [写真タップで拡大]

【大容量バッテリーはシート下に】ハイブリッド化にはバッテリーの追加か大容量化が必要。特許では、シート下(図面35)に大きなスペースを割いて置く。その前方は、電動モーター向けに電源を変換するインバーターだ。 [写真タップで拡大]
にしてもまさか6気筒ハヤブサまで作っていたとは…
もうひとつ驚いたのが”6気筒のハヤブサ”。これはさすがにYM本誌も初耳だった。今までスズキ製バイクで6気筒は存在せず、唯一思い当たるのがコンセプトモデルのストラトスフィア。’05年の東京モーターショーで展示され、180psを発生する水冷6気筒1100ccを搭載していた。この企画が継続中で、ハヤブサとしてテストすることになったのだろうか? もはやハヤブサとは別モノになりそうだが、市販されればインパクト抜群だったのは間違いない。
【’05 SUZUKI STRATOSPHERE [Comcept]】6気筒ながらスリムな横幅で、パワーも180psと十分。会場では走行シーンの動画が流され、カタナを連想させる端正なスタイルでも話題になった。 [写真タップで拡大]
〈蛇足〉そして誰も信じなくなった…。YMスクープ団オオカミ少年記
次期ハヤブサの第1報を載せたのは『ヤングマシン』’15年12月号。従来型ベースで1380cc程度、または新設計で1500cc化と予想した。そして翌’16年2月号でターボ化の情報をキャッチし、大反響を呼んだ。当時は’17年秋頃の登場を予想したが、次期型は待てど暮らせど現れず、やがて”ターボ案消滅”との情報が舞い込む。結局YM本誌は「オオカミ少年」呼ばわりされ…。ハヤブサ関連のスクープは完敗にオワッタのでした。
※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
関連する記事
“最高速キング”が花形だった’90年代の末期に現れ、数々の伝説を打ち立てたスズキ初代ハヤブサ。その功績を当時ヤングマシン編集部員だった筆者が改めてプレイバックする。 規制議論を巻き起こすほ[…]
裏話本音が炸裂。新型は”買い”では? スズキは、ユーチューブのグローバルチャンネルで隼に関する公式ムービーを8本も公開。PVや技術解説に交じって、珍しいことにエンジニアたちのインタビューを主軸に構成し[…]
骨格の完成度は時代を超越。必要な箇所はキッチリ改良 ハヤブサの車体におけるテーマは、”安定感アップ”と”俊敏なハンドリング”、そして”ブレー[…]
鬼に金棒、サスペンション以外の電子制御サポートは全部入り 先代のハヤブサは、ABSとパワーモードを備えてはいたものの、現代のバイクと比べると電脳デバイスに乏しかった。それもそのはず、2代目のデビューは[…]
最新の記事
- 高知・室戸スカイラインの絶好線形をバイクで駆ける〈ニッポン絶景道#1〉
- ’22最新ヘルメットカタログ〈システムヘルメット〉ネオテックII/リュウキ/モディファイ etc.
- 免許なしでバイク体験! e-TRAIL PARKが南箱根にオープン【~7/25まで無料モニターも募集中】
- カワサキZ900RSシリーズ [’22後期 新型バイクカタログ]:言わずと知れた超人気モデルの爆進続く
- 広がる自衛意識!バイク用ドライブレコーダーの重要性と普及率についてメーカーに聞いてみた
- 1
- 2