ヤマハの誇る最新モトクロッサーYZシリーズをJNCCチャンピオンが一挙試乗インプレ

ヤマハの誇る最新モトクロッサーYZシリーズをJNCCチャンピオンが一挙試乗インプレ

ヤマハの2ストモトクロッサーYZ125が17年ぶりにフルモデルチェンジし、国内のエンデューロシーンを青く染めるクロスカントリーレーサーYZ250FXもマイナーチェンジを果たすなど、オフロードレース界隈を今一番ザワつかせる最新YZシリーズ。本記事ではそんな最新モデル群を、JNCCチャンピオン・渡辺学選手がスポーツランド菅生でテスト&インプレッションした模様をお伝えするゾ!!


●まとめ:ゴー・ライド編集部(小川浩康) ●写真:長谷川徹 ●試乗&インプレッション:渡辺学

YZ250FX:国内のエンデューロにきっちり合わせ込んだ乗り味に

吸排気系を見直し、前後サスペンションもセッティングを変更。スマホアプリでエンジン特性を設定できるパワーチューナーのマップも変更するなど、’22 YZ250FXは各部を見直しての登場となった。

渡辺学選手「エンジンの吹け上がりが軽くなって、フレームにもしなやかさが増しました。それと前後サスペンションが狭い日本のエンデューロコースにバッチリ合ったセッティングになっていますね。車体は軽いのですがハンドリングはフラフラせず、前後サスからはつねにグリップ感が感じられます。トータルでマシンコントロールしやすくなっていますね。

エンジンマップも国内専用になっていますが、JNCCやJECを相当走り込んで煮詰めたのでしょうね。セッティング領域が広く、レースビギナーからベテランまで好みの乗り味が出せるようになっています。サスは柔らかめですが、ジャンプの着地でも踏ん張ってくれます。日本のフィールドで乗りやすさを感じ、誰もが扱いやすいレーサーに仕上がっていると思います」

【YAMAHA YZ250FX】■全長2175 全幅825 全高1280 軸距1480 シート高955(各mm) 車重111kg ■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 249cc 変速機6段 燃料タンク容量8.2L ■タイヤサイズF=80/100-21 51M R=110/100-18 64M ●価格:97万9000円

前後サスペンションのバネレートを日本専用のフロント4.1N/mm/リヤ48N/mmとしている。JNCCやJECで高い走破性を発揮しつつ疲れにくい国内専用セッティングが施された。

エンジン懸架ブラケット形状を変更し、荒れた路面での安定性向上に貢献。

吸気ポート容量の拡大に合わせて、エアクリーナーボックスにダクトを追加。中高回転域のパワーアップを実現。

旧モデルから容量を340ccアップし、高回転の伸びと不快な音の軽減を両立した新型サイレンサー。

キャリパー形状の見直しで剛性が30%アップ。ピストンサイズを大径化し、パッド材も変更。さらにコントロールしやすくなった。

キャリパーとローター形状を変更し、制動力を損なうことなく軽量化を実現。

国内専用マップが設定された

クラッチ側のモードスイッチでエンジンマップを2パターンに切り替えられるが、そのマップが国内専用に刷新された。標準のMAP1はパワー重視、MAP2はトルク重視のセッティング。この他におすすめマップが3種類用意され、さらにスマホアプリで独自のマップセッティングも作成できる。エンジン特性を自分好みにセッティングできるのだ。

YZ125:全世界待望のフルモデルチェンジでモトクロッサーとしての戦闘力を向上

YZ125は、YZ65/YZ85からステップアップしてきたヤングライダーたちが、各国のモトクロス選手権に参戦するマシンとして選ばれることが多いという。だが、シーズン毎に改良が施される海外メーカーと比較すると、基本設計の古さからポテンシャルで劣る面が増えてきた。そこで、レースで勝つために17年ぶりのフルモデルチェンジとなったのだ。エンジンはシリンダー/ピストン/クランクケースなど機能パーツを一新。ポートタイミング形状を最適化し、チャンバー/サイレンサーも変更。吸気方法を車体後方からのストレート吸気に変更し、3Dマップ制御CDIユニット搭載のスロットルポジションセンサー付きキャブレターを新採用するなどで、全域でのパワーアップを実現。このパワーアップに合わせて前後サスペンションセッティングを変更し、前後ブレーキも強化。スタイリングも最新YZイメージへと変更し、スリムな車体幅とフラットなシート形状を有している。

しっかりした車体とサスが狙ったラインを確実にトレースし、シャープなエンジンで加速。「コーナリングスピードが格段に向上している」と渡辺選手は絶賛。

学選手「全域でパワーアップしていますが、そうは言っても125なので、身体が置いていかれるような凶暴さはありません。むしろトコトコとゆっくり走ってもエンストしないトルクの粘りが増えて、2ストビギナーにも扱いやすくなっています。それに何といっても車体が軽い!! その軽さのおかげで、コース路面が荒れてきても車体が振られにくく、アクセル操作に対してエンジンもシャープに反応し、しかもトルクは低回転から立ち上がってくるので、アクセル操作だけで車体を意のままに振り回せます。

前後サスには少し硬さを感じましたが、大ジャンプも飛ぶモトクロッサーとしてみれば、しっかりした腰があって安心できる乗り心地ですね。前後ブレーキは軽い車体もあって利きすぎるぐらいに利くし、一新されたチャンバーとサイレンサーには吹けの良さも感じられます。

アクセルに対するレスポンスが良く、開ければ必要十分なトルクとパワーが立ち上がります。前後サスペンションがそのパワーをしっかり受け止め、車体をグイグイ前に進めてくれるので、コーナリングスピードも合わせて速くなっています。旧モデルはファンライド用として乗る人も少なくなかったですが、’22 YZ125は一段上のスピードを身に着け、モトクロスでの勝利を重視した仕上がりになっています。

また、軽い車体と粘るトルクは2ストビギナーにも扱いやすいので、初めてのフルサイズ2ストモトクロッサーとしてもオススメですね。高回転まで回して乗れる中上級者には、今まで以上に軽快なファンライドを楽しめるでしょうね。それくらい懐の深いマシンになっています」

【YAMAHA YZ125】■全長2135 全幅825 全高1295 軸距1445 シート高980(各mm) 車重95kg ■水冷2ストローククランクケースバルブ単気筒 124cc 変速機6段 燃料タンク容量7.0L ■タイヤサイズF=80/100-21 51M R=100/90-19 57M ●価格:73万7000円

最新YZのスピード感を表す水平基調のデザインを採用。

新設計エンジンは内部パーツを一新。排気タイミングをコントロールするYPVS(ヤマハパワーバルブシステム)も刷新され、全域でスムーズなトルク特性を引き出している。キャブレターはソレノイド制御のパワージェット/スロットルポジションセンサー/点火時期の3Dマップ制御で燃焼を最適にコントロールするPWK-38Sを採用。リードバルブにはモトタシナリ製Vフォース4Rを採用し、吸気抵抗の低減とレスポンス向上に貢献。

新形状チャンバーは排気脈動効果が加わり大幅なパワーアップを実現。加速感向上にも貢献している。

サイドカバー後方から直線的に外気を導入する後方ストレート吸気に変更し、高回転でさらに伸びるエンジン特性を実現。

サイレンサーは50mm短縮し、重量マスの集中化も果たす。

[左]4ストYZと同じ構造となり、ストローク初期から減衰力を発揮し、車体の安定性が向上。[右]パワーアップしたエンジンに合わせて減衰特性を最適化。マシンコントロール性向上に貢献している。

ピストン径を12%アップし、パッドとの接触面積が30%%アップ。制動力とコントロール性が向上している。

ディスク径を5mm小さい240mmとし、キャリパーも変更。計89g軽量化。

YZ250F/450F:リヤの軽量化で車体バランスが改善

4ストモトクロッサーYZ250F/YZ450Fは、リヤまわりの軽量化をメインに、前後サスペンションセッティングの変更が行われた。この2台は250FX同様のマップ切り替えスイッチを装備しているが、250FXとは異なり、あらかじめマップはセットされていない。しかし、スマホアプリ「パワーチューナー」で、燃料噴射量や点火時期を16ポイントで調整でき、詳細なセッティングを行える。また、パワーチューナーにはヤマハ推奨マップも3種類登録されているので、より手軽なセッティング変更もできる。こうしたデータはチームや友人と共有でき、アーカイブとして蓄積することも可能だ。

学選手「250については、リヤホイールハブ/スプロケット/チェーンが軽量化されたとのことですが、走行中には体感できなかったのが正直なところです。ただ、ジャンプで空中にいる時には軽さがあり、取り回ししやすくなっていました。リヤまわりが軽くなったことでリヤタイヤのトラクションが抜けることもなく、車体前後のバランスが良くなったように感じました。フロントタイヤのグリップが良くなり、確実に路面を捉えているのが分かりやすくなったからです。前後サスもストローク感が分かりやすくなり、ギャップ通過時もしっかり耐えてくれます。コーナリングでの操作性と安定性がかなり良くなっているな、と感じました」

【YAMAHA YZ250F】■全長2175 全幅825 全高1285 軸距1475 シート高970(各mm) 車重106kg ■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 249cc 変速機5段 燃料タンク容量6.2L ■タイヤサイズF=80/100-21 51M R=110/90-19 62M ●価格:91万3000円

学選手「450についても250同様の変更で、軽さは体感できなかったのですが、怒涛のパワーがすべてを凌駕していく感じです。エンジンはどの回転からでもトルクとパワーが出てきて、菅生の大坂もタイトコーナーも3速固定のままで攻めていけるほどです。前後サスはそのパワーを受け止めるためにしっかりしていますが、その分ギャップやジャンプの着地も安定しています。アクセルを開けなくても走っていけるトルクの粘りもありますが、怒涛のパワーをコントロールできる上級者向けだと思います。

YZ250FXがよりエンデューロレーサーらしい乗り味になったので、YZ250F/450Fはシャープな方向へと進化し、本来のモトクロッサーとしての戦闘力に磨きがかけられていますね」

【YAMAHA YZ450F】■全長2185 全幅825 全高1285 軸距1485 シート高965(各mm) 車重111kg ■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 449cc 変速機5段 燃料タンク容量6.2L ■タイヤサイズF=80/100-21 51M R=120/80-
19 63M ●価格:107万8000円

[左]フロントサスはリヤまわりの軽量化に合わせてセッティングを変更。[右]リヤサスもフロントとのバランス最適化をはかり新セッティングとなっている。

リヤスプロケットは強度と軽量化を両立するため形状を一新。250で42g、450で38g軽量化。またドライブチェーンのアウタープレートを薄肉化し、ピン形状も変更。78g軽量化された。

ホイールハブも薄肉化し、65g軽量化。スポークの編みかたも、旧モデルの2クロススポークから3クロススポークへ変更し、衝撃吸収性とトラクション感を向上。またYZ250Fのみ2.15のワイドリム&110mm幅タイヤを新採用。加速時やコーナリング時のトラクション性と衝撃吸収性を向上している。

YZ250:後方ストレート吸気の採用でトルクの谷がきれいに解消

’22 YZ250は、YZ125と同様の後方ストレート吸気を採用し、前後サスセッティングも変更。最新YZイメージの車体になった。

学選手「中回転から高回転にかけて急にパワーが立ち上がるピーキーさがなくなりました。一瞬トルクが落ち込むようなトルクの谷も解消され、どの回転域からでもトルクとパワーが出るようになりました。高回転でもうひと伸びするオーバーレブ特性も良くなっていますね。それでいて低回転でのトルクの粘りもあるので、荒れた路面や重いマディのようなアクセルを開けていけない状況でも、デロデロと走破していけるようになりました。

前後サスはしっかりしていますが、ジャンプの着地やギャップでの衝撃吸収性は良く、軽快な取り回しになっています。少し硬さも感じますが、初期からよく動いて奥で踏ん張ってくれるので、硬さのデメリットはないですね。それとシート形状がフラットになってお尻がシートにはまりにくく、前後左右ともに体重移動がしやすくなりました。ただ、はまりにくい反面、身体が前に行きやすいように感じました。個人的にはもう少しグリップ力のあるシート表皮のほうがマシンコントロールしやすいですね。前後ブレーキも125同様に変更され、制動力とコントロール性も十分。高回転時は2スト250らしいパワフルさと加速力を発揮するので、そこをコントロールできる中級者以上向けのマシンですね」

【YAMAHA YZ250】■全長2185 全幅825 全高1290 軸距1485 シート高975(各mm) 車重103kg ■水冷2ストローククランクケースバルブ単気筒 249cc 変速機5段 燃料タンク容量7.0L ■タイヤサイズF=80/100-21 51M R=110/90-19 62M ●価格:78万1000円

YZ125と同様の後方ストレート吸気を採用し、最新YZシリーズと同一イメージの車体へと変更された。YZ125と同じく新形状アルミスプロケットと軽量ドライブチェーンも採用している。

シートを止めるボルトを一本化したことで、後方ストレート吸気を実現できるようになった。ボルトにはヤマハロゴ入りの樹脂カバーが装着される。この樹脂カバーは約1万回開閉テストを繰り返し、高耐久性を獲得している。

シート固定ボルトがシート上面に移動したことで、後方ストレート吸気口を実現できた。

YZ250のみ、肉厚を最適化し97g軽量化されたハンドルを装備する。

YZ85LW :後方ストレート吸気&左右同一シュラウドを装備

YZ85LWは’22モデルから62kg以下の体重制限が設定された。これにより今回試乗ができなかったので、変更点の詳細のみ紹介する。

【YAMAHA YZ85LW】■全長1895 全幅760 全高1175 軸距1285 シート高885(各mm) 車重75kg ■水冷2ストローククランクケースバルブ単気筒 84cc 変速機6段 燃料タンク容量5.0L ■タイヤサイズF=70/100-19 42M R=90/100-16 52M ●価格:57万2000円

YZ125/250同様の後方ストレート吸気を採用し、車体デザインも一新。

左右同一幅のシュラウドを新採用。ラジエタールーバーも効率的に空気を取り込む形状に変更され、冷却効率を向上。

40g軽量化されたハンドルバーを新採用。

シート高を12mm高めてシート上面をフラット化。燃料タンクキャップも前方へ移動。左右同一シュラウドの採用もあって、ボディアクションの自由度が大幅に向上している。シート固定ボルトは1本化されている。

スイングアームはリンクまわりの一体化とアーム継手構造を変更することで、タテ剛性と捻じれ剛性のバランスが最適化された。

リヤブレーキのマスターシリンダーはリザーブタンク一体型に変更。リニアな操作性を実現している。また、サブフレームはスチールから高強度アルミに変更され、570gの軽量化を達成。


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