
レース用のライディングテクニックとして、マシンの挙動をより安定させやすいスタンディングフォームが推奨されるが、とはいえまったく座らないというワケでもない。今記事では「シッティング」について、世界的ライダー・渡辺学選手によるオフロードライディング指南企画『渡辺学のスキルアップラボ』から、座る位置によって変化する特性やオススメの着座方法などを前後編にわたって解説する。レース派はもちろんだが、林道派や街乗りライダーもガッツリ参考にできる内容になっているゾ!!
●まとめ:ゴーライド編集部(山田晃生) ●写真:長谷川徹 ●取材協力:ウエストポイント
コーナリングでの着座位置をクローズアップ:前めに座るのが基本
スポーツライディングにおいて、マシンコントロールはスタンディングがメインになるが、時としてシッティングするシーンもある。今回はおもにスポーツライディング、とくにコーナリングでの着座位置に着目した。自身でも違いを探りながら乗ってみてほしい。
マナブ先生「なぜ座るのかといえば、トラクションさせるためです。スタンディングでもある程度はトラクションさせることは可能ですが、座ったほうがより楽に、強くかけられるようになります。
ただ、座る位置によってもマシンの挙動は変わってしまいます。前に座ると前輪の接地感が高くなり、マシンを倒しやすく、スライドした際のコントロール性も高くなる。足を地面に着けやすいので、安心感も高いといえます。林道でも濡れていたり滑りやすそうな路面や、予期せぬ操作が必要になりそうな時も、前に座ったほうがすぐに対応しやすいのでオススメです。ただし、ポジション的に窮屈になりがちなので、街乗りであればちょっと後ろめに座ってリラックスするのもいいでしょう。
スポーツライディングで後ろに座るシーンは速度域が高いコーナリングくらい。後ろに座るとリヤサスペンションに無駄な動きを与えやすく、マシンの挙動が不安定になりがちなのです。車体も起き上がりやすく、後輪がスライドした時にもカラダが一緒に持っていかれやすくなる。腕も伸び気味のためチカラも入れにくい。もしハイサイドのような動きになった場合、後ろに荷重があるから前輪が浮き気味で接地感がなく、ハンドルも切れるだけ。そうなると吹っ飛ばされるしかない。それが前に座っていればハンドルをグッと押さえて、立て直すこともできるんです。
最近のマシンは、インジェクションになりレスポンスもトラクションもかなり良くなってきました。だからあまり後ろめに座ると、カラダが置いていかれるイメージがあり、コントロールしにくいと思うんです。だからチカラの入れやすい前に座るのが基本。挙動を安定させやすいので、安心して乗れると思います」
オフロードマシンのシートは細く長い:座る位置による違い
今のシートの表皮はグリップが高く、お尻がズレることはまずない。スポーツライディング中に座り直すことは至難の業。だからどこに座るかをあらかじめ決めておくことが大事になる。ここで4例の着座位置の違いとオススメの用途をざっくり解説しよう。

白のテープでおおまかに着座位置を区切ってみた図。[1]はタンクカバー(YZ450FXの場合)で、ほぼ座ることはなく、スポーツライディングで使用するのは[2]と[3]がメイン。[4]と[5]の位置はスポーツ向きとはいえないが、ここまでシートの長さがないと困る場面もある。 [写真タップで拡大]
コーナリング中の座る位置でマシンの挙動が変わる
結論から言えば、コーナリング中は前に座っていたほうが圧倒的に安心感が高いばかりか、マシンを倒しやすい/滑った時に修正しやすい/接地感が高い、などのメリットがある。後ろに座るとリヤサスに無駄な動きを与えやすく、安定させにくいなどがデメリット。前後の着座位置の差はほんの15cmほどではあるものの、マシンの挙動は大きく変わるのだ。安全に配慮したうえで、前後の着座位置の違いを体験してみるといいだろう。

[1]進入で足を出したところ。前に座っていたほうがスムーズにマシンを倒すことができ、前輪の接地感がつかみやすいほか、咄嗟の時にもすぐに地面に足を着けられる。後ろに座ると接地感が薄く、マシンを倒しにくく感じる。 [写真タップで拡大]

[5]後ろに座っていると、後輪がスライドした際に身体ももっていかれやすくなる。修正のためアクセルを戻してしまうのでタイムロスになる。前に座っていたほうがスムーズに次のアクションに移れる。 [写真タップで拡大]
後編では、座るタイミングに加え、座り直さずトラクションさせるなどのちょっとした応用編などを紹介する。
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