ヤマハは欧州と北米で、2022年モデルのスーパースポーツ、YZF-R1/R1M、YZF-R7、YZF-R3、R125を発表。これに加え、ヤマハがロードレース世界選手権・WGPに参戦して60周年となる今年、モトGPや全日本でお披露目されたスペシャルカラー“60th Anniversary Edition”も登場した!
待ってたよヤマハ! 白ベースに赤いスピードブロックの60周年カラーが登場
2021年、カタールのロサイルサーキットで行われたMotoGPテストではカル・クラッチローがスペシャルカラーのワークスマシンYZR-M1をライドし、全日本ロードレースではチャンピオンの中須賀克行選手が7月以降の3大会を戦うYZF-R1に、同様の車体色が施されたことも記憶に新しい。
それらのニュースが出るたびに、我々も読者も「これ市販車でもお願いします!」と熱烈歓迎してきたものだったが、ついにそれが叶うことになった。WGP参戦60周年記念カラーのYZF-Rシリーズが一挙に発表されたのだ。
発表されたのはまだ欧州と北米のみだが、このラインナップのいくつかを日本にも導入……と期待しないわけにはいかないだろう。
ヤマハは1955年7月1日に工場を設立した日から“レース”のDNAを連綿と継承。創立直後に生み出されたYA-1は、7月10日には最初のレースに参戦したというから驚きだ。
さらに、ヤマハは1958年にアメリカのカタリナで最初の国際レースに参加。その後も競争力のある2ストロークマシンを開発し、究極のテストの場と位置付けられたロードレース世界選手権=WGPに参戦したのは、1961年5月21日の第3戦フランスGPからだった。
当初は125ccクラスに空冷2ストローク単気筒のRA41で、250ccクラスには空冷2ストローク2気筒のRD48で挑み、1963年の第5戦ベルギーGPで、空冷2ストローク250ccのRD56を駆る伊藤史朗(いとうふみお)がヤマハに初勝利をもたらした。
そしてヤマハにとって初のGPチャンピオンは、1964年のGP250、RD56を駆るフィル・リードによってもたらされた。その後、半世紀以上にわたって勝利を重ね、参戦開始から56年後、2017年5月21日のフランスGP(参戦開始と同じ日、同じフランスGP)で、マーベリック・ビニャーレス選手によって通算500勝が達成された。この時点での戦績は、125ccクラス47勝、250ccクラス165勝、350ccクラス63勝、500ccクラス120勝、MotoGPクラス105勝。その後、2020年シーズン終わりまでにMotoGP最高峰クラスで11勝を積み重ねて現在に至る。
最高峰クラスであるGP500/MotoGPでは、1972年のチャス・モーティマーの初優勝以来、ジャコモ・アゴスチーニ、ケニー・ロバーツ、エディー・ローソン、ウェイン・レイニー、阿部典史、そしてバレンティーノ・ロッシ、ホルヘ・ロレンソ、マーベリック・ビニャーレスなどのライダーが勝利を積み重ね、2020シーズン終了時点では通算236勝。さらに2021年にはマーベリック・ビニャーレスが1勝、ファビオ・クアルタラロが5勝を挙げている(2021年9月14日時点)。
また、最高峰クラスではこれまでに6人のチャンピオンを輩出し、ライダータイトルは17回、コンストラクターズタイトルは14回、チームタイトルを7回獲得し、MotoGPでは通算5回の三冠(ライダー、コンストラクターズ、チーム)を達成。さらに、2021年シーズンはモンスターエナジーヤマハMotoGPに所属するファクトリーライダー、ファビオ・クアルタラロがチャンピオンを獲得せんと、ポイントリーダーを堅守している状況だ。
ヤマハの歴史的なレーシングカラー、スピードブロック
1964年に250ccクラスでフィル・リード選手がヤマハに初の栄冠をもたらしたとき、白いボディに赤一色のストライプと赤いフロントフェンダーを組み合わせたマシンカラーをまとっていた。このシンプルな赤×白の配色はヤマハのグランプリカラーとして認識されるようになり、これがのちにスピードブロックへと進化していく先駆けになった。
今回のWGP参戦60周年記念カラーのモチーフになっているのは、おそらく1978~1980年に3年連続チャンピオンを獲得したケニー・ロバーツが駆ったYZR500。黄色いゼッケンスペースにサイドの赤いスピードブロック(ストロボライン)を組み合わせたもので、これをオマージュしたYZR-M1がカタールテストで公開された際には、信じられないほどの大きな反響があったという。
そして今回、市販車の最新YZF-Rシリーズに、グランプリ60周年記念カラーが設定されたわけだ。欧州ではR1/R7/R3/R125に。そして北米では、YZF-R1/YZF-R7/YZF-R3に60周年カラーが設定される。
カラーリングはホワイトを基調とし、水平の赤いストライプと、これを区切る垂直の白いラインでスピードブロック(通称ストロボライン)が形づくられている。フロントフェンダーは赤、そしてフロントフォークのアウターチューブおよび前後ホイールはゴールドだ。さらに黄色のゼッケンプレートと記念のエンブレム、そして燃料タンクとテールカウルを貫く赤いセンターストライプによって、美しいデザインが完成する。
以下は各モデルの北米名と2022年モデルの参考価格(北米ドル)。
YZF-R1M――2万6299ドル(日本円換算約287万5000円)
YZF-R1 World GP 60th Anniversary Edition――1万8099ドル(日本円換算約197万8000円)
YZF-R1――1万7599ドル(日本円換算約192万4000円)
YZF-R7 World GP 60th Anniversary Edition――9299ドル(日本円換算約101万6000円)
YZF-R7――8999ドル(日本円換算約98万4000円)
YZF-R3 World GP 60th Anniversary Edition――5499ドル(日本円換算約60万1000円)
YZF-R3――5299ドル(日本円換算約57万9000円)
以下、記事後半のスペック等についてはR125が存在し、かつ各モデルとも出力などの詳細が公表されている欧州仕様のもの。写真も全て欧州仕様だ。
R1 World GP 60th Anniversary[2022 EU model]
2022年モデルとなったR1がベース。IMUを搭載し、パワーモードやトラクションコントロールシステム、スライドコントロール、クイックシフト、2モードのコーナリングABS、3モードのエンジンブレーキマネジメントなどを備えている。鋳造マグネシウムホイールやアルミ製タンクも健在だ。
ちなみに、欧州では車名から「YZF」を外し、単に「R1」や「R7」といった呼称に統一していくようだ。北米仕様は従来と変わらずYZF-R1である。
主要諸元■全長2055 全幅690 全高1165 軸距1405 シート高855(各mm) 車重201kg(装備)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 998cc 200ps/13500rpm 11.6kg-m/11500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ※諸元は欧州仕様 ●価格未発表
R7 World GP 60th Anniversary[2022 EU model]
コンパクトでハイトルクなクロスプレーンクランクの並列2気筒エンジンを軽量な車体に搭載。ベースはネイキッドモデルのMT-07だが、フロントはφ41mm倒立フォークやラジアルマウントキャリパー、ラジアルポンプマスタシリンダーなどを奢る。こちらもR1同様に、欧州仕様はYZFなしの「R7」であり、標準カラーモデルは今夏に発表されたばかりだ。同じく北米仕様はYZF-R7となる。
主要諸元■全長2070 全幅705 全高1160 軸距1395 シート高835(各mm) 車重188kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 689cc 73.4ps/8750rpm 6.8kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量13L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ※諸元は欧州仕様 ●価格未発表
R3 World GP 60th Anniversary[2022 EU model]
KYB製φ37mm倒立フロントフォークを採用し、2022年モデルではエンジンもユーロ5に完全適合したR3(北米名:YZF-R3)。R125からのステップアップに、そしてR7へとつながるラインナップの一角を担う。LCDメーターやLEDヘッドライトといった装備は従来通り。STDモデルはR1同様のカラーチェンジを受けた。
主要諸元■全長2090 全幅730 全高1140 軸距1380 シート高780(各mm) 車重169kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 321cc 42ps/10750rpm 3.0kg-m/9000rpm 変速機6段 燃料タンク容量14L■タイヤサイズF=110/70R17 R=140/70R17 ※諸元は欧州仕様 ●価格未発表
R125 World GP 60th Anniversary[2022 EU model]
欧州のみラインナップされる125ccスーパースポーツ。ユーロ5適合のエンジンは可変バルブVVAだけでなくアシストスリッパークラッチも採用。ヤマハ伝統のデルタボックスフレームはスチール製だがスイングアームはアルミ製だ。2眼ヘッドライトはRシリーズ共通イメージのLEDで、鋭い眼光はR3以上かも。
主要諸元■全長1955 全幅680 全高1065 軸距1355 シート高825(各mm) 車重144kg(装備)■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 124.7cc 15ps/10000rpm 1.16kg-m/8000rpm 変速機6段 燃料タンク容量11.5L■タイヤサイズF=100/80-17 R=140/70-17 ※諸元は欧州仕様 ●価格未発表
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