
1924年(大正13年)に創業した目黒製作所。そのブランド名「メグロ」が令和に復活した。ベース車両に選ばれたのはWの末裔=W800。’65年製のカワサキ500メグロK2と比較検証し、この名車の後継=K3を名乗るのにふさわしいのか、試乗経験豊富な丸山浩がガチでジャッジする。前記事のヒストリー解説に続いて、本記事では現存する貴重な先代K2の試乗インプレッションを先にお届けする。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ●取材協力:グランドキャリオン 後藤屋モーターワークス
【テスター:丸山浩】超豊富な試乗経験も、さすがにメグロはお初というヤングマシンメインテスター。「K2に乗れたおかげで、K3が本当によく理解できた。オーナーさんには感謝しかないね!」
こんなによく走るとは! 尊敬に値するメーカーだ
北米進出、そして世界最速をも目指し、メグロK2をベースに排気量を拡大し誕生したW1。その最終型である650RS(W3)に至るまで、空冷バーチカルツインの振動は猛烈だったという話は諸先輩方から何度も聞いていた。ゆえに、このK2にもそれ相応の振動があると試乗前は恐れていたのだが…。
意外や意外、めちゃめちゃスムーズに吹け上がるし、振動は心地良いと言えるレベルのもの。そして、パワーも十分以上に出ていて、勾配が10%近い上り坂でも3速(ミッションは4段)でグイグイと越えてしまう。抜けのいい旧W系のサイレンサーに交換されていたこともあって排気音は歯切れが良く、しかも耳障りではないという点にも感心した。
ハンドリングもいい。旋回力が高いわけではないが、トレール量やその他でうまく安定性を出しつつ、倒し込みや切り返しは実に軽快だ。トップ4速のままスロットルを開け気味で入れるような高速コーナーでは、さすがに車体が大きく揺れ出すが、その手前から予兆を伝えてくるので右手を戻すなど対処がしやすい。それに、発売された’65年頃はまだ未舗装路が各地に残っていたという時代背景を考えると、当時はこの車体構成がうまくバランスしていたに違いない。
現代の交通事情の中で走らせても何ら不足がなく、心地良い鼓動感や排気音は最新のバイクが法規制その他で失ってしまったものだ。マシンとの意思疎通という点ではK2はかなり濃密ではあるが、新型メグロK3も限られた中でそれをうまく演出していると思う(K3については次記事にて)。
これほど完成度の高い車両を作っていたメグロ。リスペクトしかない。
【英国車が手本の500ccツインだ】BSAのA7を範とするメグロのスタミナK1。それをカワサキが大幅に改良したのがメグロK2だ。496ccから36psを発揮する360度クランク採用の空冷OHV2バルブ並列2気筒で、試乗車はサイレンサーが旧W系のものに変更されている。
ミッションは別体式の4段ロータリーで、ペダルは右側にあり、踏み込んでシフトアップする逆チェンジパターンだ。
速度計の左上には今や希少なアンメーターが。ステムシャフトの上にあるダイヤルは摩擦式のステアリングダンパーだ。
セカンドオピニオン:普通に乗れて楽しく、驚きしかない
性能のみを追求していた時代の、副産物としての鼓動感がこんなにも心地良いとは! 右手の動きに対するエンジンの反応や、シフト操作によって伝わる歯車を移動している感触。それら全てがみずみずしく、まさにバイクと対話しているかのようだ。法律や安全志向によってこの半世紀で何を失ってしまったのか、あらためて気付かされた(大屋)。
【取材協力:K2オーナー・Kさん】W1を探していて偶然見かけた250ccのSGでメグロに興味を持ち、1年ほど前にこのK2を入手した小林氏は、なんと初の大型車がこのメグロ! ゴリラ/チューンドモンキー/バンバン90などの愛車とともに、主に近場のツーリングに愛用中だ。
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