1924年(大正13年)に創業した目黒製作所。そのブランド名「メグロ」が令和に復活した! ベース車両に選ばれたのはWの末裔=W800。’65年製のカワサキ500メグロK2と比較検証し、この名車の後継「K3」を名乗るのにふさわしいのか、試乗経験豊富な丸山浩がガチでジャッジする!
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ●取材協力:グランドキャリオン 後藤屋モーターワークス
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W800を選んだのは必然。高性能の象徴が令和に蘇る
カワサキは自社の大排気量モーターサイクルの礎であるメグロブランドを55年ぶりに復活させるにあたり、メグロの最終モデル=K2やその後継であるWシリーズの血統を受け継ぐ、最新のW800を選んだのは必然だったという。現行モデル3バリエーションのうち、直接のベースとなっているのはフロントに19インチホイールを採用するスタンダードモデルで、ハンドルはW800ストリートと同じアップライトスタイルバーに変更。燃料タンクについては、当時のメグロの定番だったメッキ加工を、ニンジャH2にも採用された最新の銀鏡塗装で再現した。そして、当時は七宝焼きだったタンクのエンブレムは、メグロワークスをモチーフとしたオリジナルの立体成型品で再現。職人が手作業で5色に塗り分けるという非常に手間のかかったものだ。なお、羽をモチーフとしたエンブレムは、ホンダよりも古いものである。
日本初のスポーツバイクブランドの名を冠するメグロK3。はたしてそれにふさわしい存在なのかをきちんと知るために、前記事で取り上げた通り、最終モデルのメグロK2と比較することに。56年も前に生産された正真正銘の旧車ではあるが、オーナーの愛情によってほぼオリジナルかつグッドコンディションが保たれており、試乗するにあたって何ら問題がなかった。そして、このK2と比べたからこそ、K3はメグロであると自信を持って言えるのだ。
この走りはまさにメグロ! 血脈は令和にも続いていた
メグロK2の流れを汲む650RS(W3)の生産終了から四半世紀後、’99年に新設計の空冷バーチカルツインを搭載したW650が誕生。途中でラインナップから2度姿を消すも、最新のW800に至るまで基本設計は変わらず、その乗り味は一貫している。
W650から始まる一連の新Wシリーズ、そして、その最新モデルであるW800をベースに仕立てられたメグロK3に共通するのは、走りのバランスの良さだ。最高出力52psは決してハイパワーではないが、360度クランクを採用するこの空冷バーチカルツインは、心地良い回転域をライダーに自然と伝えてくる。具体的には、高速巡航であればトップ5速3000rpm付近で、時速は80km/hあたり。スロットルを大きく開ければ1軸バランサーのおかげで振動が収斂し、レッドゾーンの始まる7000rpmまで余裕で吹け上がるが、鼓動感が心地良いのはその半分ぐらい。重いフライホイールマスによって生まれる独特の蹴り出し感も含め、同じバーチカルツインながら270度クランクを採用するトライアンフのボンネビル系とは趣を異にする。
今回、56年前のメグロK2と比較して分かったのは、このメグロK3は見事に当時の雰囲気を再現できているということ。それは外観だけでなく、”殿様乗り”と言われるアップライトなポジションや、それによって得られる視野の広さ、タンクに写り込む風景など、これらはK2とそっくりだ。
そしてもっとも意外だったのは、エンジンフィールだ。22年前にW650が出た当時、荒々しいと言われたW1を知る人たちから「棘を抜かれたようだ」と揶揄されたが、メグロK2はバランサーレスにもかかわらず拍子抜けするほど不快な振動がなく、心地良い鼓動感という意味でK3に共通するのだ。
さらに、リヤに荷重を残しつつコーナーに進入すると気持ち良く向きを変えるという点でも、この2台は非常に近しい。いわゆる旧車乗りと呼ばれる操縦テクニックであり、遡ればW650時代からこうした乗り味を狙ってきたことが明らかだったと言える。
現代の交通事情に合わせてABS/ETC車載器/グリップヒーター/アシストスリッパークラッチなどが採用されているが、そこまでで留めているのはバランスを追求した結果だろう。3年間の定期点検とオイル&フィルター交換費が含まれるカワサキケアが付帯して、W800から17万6000円増は納得であり、’22年生産分まで予約で完売というのも十分にうなづける。
セカンドオピニオン:大らかなハンドリングがK2に近似する
旧メグロとそっくりじゃないか! 細部に宿るメグロ魂
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