●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:クオリティーワークス
今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのか。その1台を詳しく知り尽くした専門家に指南を請うた。今回取り上げたのは、2ストレプリカブーム中興の祖となった名車・ヤマハRZ250/350。本記事では、RZのメンテナンスを行うにあたりチェックすべきウィークポイントについてまとめた。
革新的な機構を導入したレプリカブームの先駆車 「2ストロードスポーツの歴史は、"RZ以前"と"RZ以後"に分類される」などと断言すると、世の中には異論を述べる人がいそうだが、’70年代後半に消滅の危機[…]
4ストと比較するといろいろな手間がかかる?
同時代に生まれた4ストと比較すると、耐久性が低く、いろいろな面で手間がかかる…ような気がする2ストの旧車。その印象をクオリティーワークス・山下氏に伝えてみたところ、以下の答えが返って来た。
「確かにそういう傾向はあるでしょう。エンジンに関しては、できれば1万kmごとに腰上の点検整備、2万km以内でフルオーバーホールをしたいし(とはいえ数万kmをノーメンテで走る車両もあるそうだが)、2ストオイルの補給にも気を遣う必要があります。でも4ストと異なる要素はそのくらいですよ」
2ストの旧車には、シリンダー&ピストンの抱き付き/焼き付きという弱点があるのではないだろうか。
「その原因は整備不良と間違ったカスタムで、エンジンと吸排気系と点火系が正常なら基本的には起こりません。だから、抱き付き/焼き付きが弱点と言われるのはちょっと違う気がしますね。なおRZの弱点としては、ウォーターポンプシールの劣化によるミッション室への冷却水の侵入、俗に言う”コーヒー牛乳化”が有名ですが、この問題はRZ-RやTZRなどでも起こります」
パワーユニットの話が長くなってしまったが、それ以外にRZの中古車では、どんな作業が必要なのだろうか。
「完調を求めるなら、吸排気系や車体や電装系を含めて、ありとあらゆる部分の点検整備が必要です。何と言ってもRZは、車齢が40年近い旧車ですからね。もっとも今の時点であれば、新車同様、あるいは新車以上の性能を獲得することは十分に可能ですよ」
エンジン:焼き付きを起こしている個体は少なくない
キャブレーター:摩耗が進むと性能回復は困難
純正のVM26SSをオーバーホールすることもあるが、磨耗が進んだボディで本来の性能を回復させるのは困難。クオリティーワークスではエアクリーナーボックスに対応するPWK28キット(4万9500円)を選択する人が多い。
CDI&イグニッションコイル:最新の点火系で元気のいい火花を飛ばす
ラジエーター:冷却水の交換は忘れがち?
ウォーターポンプ:スチール製カバーとインペラは錆びやすい
インテーク:吸気系部品の劣化に注意
エアクリーナー:フイルターの劣化がトラブルを呼ぶ
フレーム:タンク装着時に曲がりを点検
リヤショック:オーバーホール可能だが社外品を推奨
ブレーキ:カスタムで制動力を強化
スプロケット&ドライブチェーン:530→520化が定番
メインハーネス:断線を起こす前に早めの交換を
ディップスティック:ネジ部のナメやすさを解消
ヘッドライト&メーター:現代の技術で安全性を高める
パーツ流通:絶版旧車としてはかなり良好
万全とは言い難いものの、XJやFZ系といった同時代のヤマハ製4スト4気筒車と比較すれば、RZ/RZ-Rの純正パーツ供給状況は良好な部類。もちろん大物部品は欠品が目立つが、ピストンを除く消耗部品は現代でもほとんどが入手可能で、いったん欠品になったパーツが再生産されることもある。いずれにしても、アフターマーケット市場に豊富に存在するリプロパーツを併せて考えれば、維持に関する心配はほとんど不要だろう。
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