プロに学ぶ国産名車メンテナンス

’80s国産名車・ヤマハRZ250/350完調術#2【アフターパーツの有効活用がカギ】


●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:クオリティーワークス

今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのか。その1台を詳しく知り尽くした専門家に指南を請うた。今回取り上げたのは、2ストレプリカブーム中興の祖となった名車・ヤマハRZ250/350。本記事では、RZのメンテナンスを行うにあたりチェックすべきウィークポイントについてまとめた。

4ストと比較するといろいろな手間がかかる?

同時代に生まれた4ストと比較すると、耐久性が低く、いろいろな面で手間がかかる…ような気がする2ストの旧車。その印象をクオリティーワークス・山下氏に伝えてみたところ、以下の答えが返って来た。

「確かにそういう傾向はあるでしょう。エンジンに関しては、できれば1万kmごとに腰上の点検整備、2万km以内でフルオーバーホールをしたいし(とはいえ数万kmをノーメンテで走る車両もあるそうだが)、2ストオイルの補給にも気を遣う必要があります。でも4ストと異なる要素はそのくらいですよ」

2ストの旧車には、シリンダー&ピストンの抱き付き/焼き付きという弱点があるのではないだろうか。

「その原因は整備不良と間違ったカスタムで、エンジンと吸排気系と点火系が正常なら基本的には起こりません。だから、抱き付き/焼き付きが弱点と言われるのはちょっと違う気がしますね。なおRZの弱点としては、ウォーターポンプシールの劣化によるミッション室への冷却水の侵入、俗に言う”コーヒー牛乳化”が有名ですが、この問題はRZ-RやTZRなどでも起こります」

パワーユニットの話が長くなってしまったが、それ以外にRZの中古車では、どんな作業が必要なのだろうか。

「完調を求めるなら、吸排気系や車体や電装系を含めて、ありとあらゆる部分の点検整備が必要です。何と言ってもRZは、車齢が40年近い旧車ですからね。もっとも今の時点であれば、新車同様、あるいは新車以上の性能を獲得することは十分に可能ですよ」

エンジン:焼き付きを起こしている個体は少なくない

【焼きつきの原因は?】焼きつきで再利用不可能となったピストン。「焼きつきの原因としてよく挙がるのは、チャンバー交換時のキャブセッティング不良ですが、エアクリーナーボックスの撤去も影響は大きいです。安心して長く楽しみたいなら、エアクリーナーボックス仕様が一番でしょう」と山下氏。

【ボーリングでリフレッシュ】激しく焼きついたシリンダー。ヤマハ製2ストパラツインのシリンダー内壁がメッキ仕上げになるのは、’88年型TZR250(2XT)からで、それ以前は鋳鉄スリーブ入り。なおクオリティーワークスでは、スリーブ厚を考慮してボーリングの上限をSTD+1.5mmに設定している。

【井上ボーリングのICBM®】近年のクオリティーワークスでは、耐久性の向上や摺動抵抗の低減を求めて、井上ボーリングが開発したアルミメッキシリンダー・ICBM®を採用するRZ/RZ-R系ユーザーが増えている。施工費用は22万円~。余談だが、ICBM®はカワサキマッハシリーズでも大人気だ。

キャブレーター:摩耗が進むと性能回復は困難

純正のVM26SSをオーバーホールすることもあるが、磨耗が進んだボディで本来の性能を回復させるのは困難。クオリティーワークスではエアクリーナーボックスに対応するPWK28キット(4万9500円)を選択する人が多い。

ケーヒンPWK28

ミクニVM26SS

CDI&イグニッションコイル:最新の点火系で元気のいい火花を飛ばす

点火系パーツで純正にこだわるRZユーザーはほぼ皆無。クオリティーワークスの場合、CDIはHクラフト(2万9480円〜)、イグニッションコイル+プラグコードはASウオタニ+NGK(1万7600円)が定番だ。

ラジエーター:冷却水の交換は忘れがち?

車検がないためか、250はクーラントの定期的な交換が行われず、ラジエター下部にヘドロ状の沈殿物が溜まっている個体が少なくない。クーラントは排気量に関わらず、最低でも2年に1回は交換するべき。

ウォーターポンプ:スチール製カバーとインペラは錆びやすい

ウォーターポンプシールとベアリングは、RZの数少ない弱点のひとつ。ただし、錆びが発生しやすいスチール製カバーとインペラ+シャフトを、アフターマーケットで販売されているアルミ製(下)に変更すれば、劣化はかなり抑えられる。

インテーク:吸気系部品の劣化に注意

インテークマニホールドやリードバルブも消耗品。純正の新品に交換するのが王道だが、クオリティーワークスではカスタム指向のユーザーのために、大径キャブレター用マニホールド(写真)や樹脂製リードバルブも準備している。

エアクリーナー:フイルターの劣化がトラブルを呼ぶ

RZのエアクリーナーボックスは2分割式。上部に備わるスポンジタイプのフィルターは、劣化が進むとボロボロに崩れ、そのカケラがキャブの詰まりやエンジンの焼きつきを引き起こすことがある。

フレーム:タンク装着時に曲がりを点検

スポーツ性重視の特性だからか、RZは転倒によってフレームに問題を抱えている個体が少なくない。燃料タンク後端の穴とフレームの突起の収まりが悪い場合は、前半部が曲がっている可能性が濃厚。

リヤショック:オーバーホール可能だが社外品を推奨

純正リヤショックは、ダンパーが完全に抜けてスカスカになっている個体が非常に多い。オーバーホールすることは可能だが、同店ではナイトロン/オーリンズ/FGなどアフターマーケット製への交換を推奨。

ブレーキ:カスタムで制動力を強化

制動力が物足りない250用として、クオリティーワークスではサンスターφ320mmディスク+スペーサー、ブレンボ4Pキャリパー+サポートのフロントブレーキキットを準備(3万7960円)。

スプロケット&ドライブチェーン:530→520化が定番

耐久性は純正の530に軍配が上がるものの、ドライブチェーン+前後スプロケットを520にサイズに変更すれば、軽量化や駆動抵抗低減が実現できる。クオリティーワークスが設定するRK+XAMの520コンバージョンキットは3万円。

メインハーネス:断線を起こす前に早めの交換を

電装系の要となるメインハーネスは、新車時のままだったら早めに交換したい。純正はすでに欠品だが、近年はハイサイドやミズノモーターが、現代の技術を投入したリプロ品を販売している。

ディップスティック:ネジ部のナメやすさを解消

ギヤオイル注入口に備わる樹脂製ディップスティックは、ハメ合いがいまひとつでナメやすい。アルミ削り出しのMODQUAD製(4180円)に変更すればその心配は解消。なお、ギヤオイルの推奨交換距離は5000km。

ヘッドライト&メーター:現代の技術で安全性を高める

純正ヘッドライトはかなり暗いため、クオリティーワークスではマルチリフレクターレンズ(7150円)を推奨。メーターの作動不良は専門業者で修理することが可能。メーターケースは転倒で破損しやすいので、予備をストックしておきたい。

パーツ流通:絶版旧車としてはかなり良好

万全とは言い難いものの、XJやFZ系といった同時代のヤマハ製4スト4気筒車と比較すれば、RZ/RZ-Rの純正パーツ供給状況は良好な部類。もちろん大物部品は欠品が目立つが、ピストンを除く消耗部品は現代でもほとんどが入手可能で、いったん欠品になったパーツが再生産されることもある。いずれにしても、アフターマーケット市場に豊富に存在するリプロパーツを併せて考えれば、維持に関する心配はほとんど不要だろう。

【外装一式はリプロ品が豊富】純正の外装部品はすべて欠品だが、国内外のパーツメーカーがリプロ品を販売中。数年前にワイズギアが限定販売した復刻ガソリンタンクも、市場にはまだ在庫があるようだ。

【オーバーサイズピストンは社外品で対応】オーバーサイズピストンはアフターマーケット製の選択肢がかなり豊富。クオリティーワークスの定番は鋳造のTKRJで、価格は250:8800円、350:9108円(1個)。

【一番人気はOXレーシング】ハマキを思わせる純正チャンバーにこだわるライダーは、RZシリーズの世界では少数派。クオリティーワークスの推奨品は、スチール製:OXレーシング(写真)、ステンレス製:JL。

【クランクは新品が入手可能】相当なダメージがない限り、クランクシャフト+コンロッドはオーバーホールして再利用することが可能。予算に余裕があるなら、十数万円で販売されている新品を選択するのもアリ。

’80s国産名車・ヤマハRZ250/350完調術【アフターパーツの有効活用がカギ】
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【取材協力:クオリティーワークス】今回の取材に協力してくれたクオリティーワークスは、全国の2スト車ユーザーから絶大な支持を集めているショップ。ショールームの一角には、国内外のアフターマーケットメーカーが開発したRZ/RZ-R用リプロ&カスタムパーツがズラリと並んでいる。とはいえ同店のスタンスとしては2スト専門店ではなく、新旧4ストも幅広く取り扱っている。●住所:埼玉県川口市芝宮根町18-13


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