1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第38回は、バイクで釣りに出掛けた話や、予想していたMotoGP勝者について。
クアルタラロが2連勝、マルケスの超人っぷりも驚きました
そして、クアルタラロ2連勝。これは本当にスゴイことです。彼には1発の速さもありますが、それよりも怖いのはアベレージタイムの速さ。めちゃくちゃコンスタントに走り続けられることです。これはライバルにとっては大変な脅威。決勝に特に強いライダーということですから、みんな本気で警戒しているはず。クアルタラロの存在がマルケスの転倒の一因になったことは間違いありません。
クアルタラロは、フランス人ライダーの伝統なのか(?)、リーンウィズに近い今どきとしては地味なライディングフォームです。でも、コーナー進入のギリギリまでニーグリップしている彼のスタイルは、ブレーキングを重視してのこと。そう、クアルタラロの武器は短時間で一気に曲がれる速度まで減速できることなんです。
いかにMotoGPマシンとはいえ、遠心力とタイヤのグリップ力との兼ね合いで、向きを変えられる速度は物理的に決まっています。その速度まで、いかに短時間で減速できるかがポイントです。ご想像の通りフロントブレーキを強く掛けるんですが、そうするとリヤが浮いてしまいます。後輪のグリップを失うと、減速距離は伸びてしまう。だからクアルタラロはものすごく微妙にブレーキ圧をコントロールしているんです。もちろんリヤブレーキの使い方もうまい。さらに立ち上がりでの姿勢制御にもブレーキを使っているようで、これも彼の武器になっています。
そしてさっきも書いたように、そのギリギリのブレーキングを20周以上ある決勝レース中、コンスタントに続けられるのが本当にスゴイ。僕もそんなブレーキングを現役時代にやってましたが、予選の1発だけ(笑)。決勝中にずっとあんな走りができるなんて、ものすごい集中力の持ち主です。20歳でその域に達しているんですから、ライバルたちにとっては本当に脅威ですよね……。
「スゴイ」と言えば、ロッシの3位表彰台もスゴイ! 41歳ですよ!? 信じられません。ビニャーレスとのバトルに注目していましたが、やはりレース巧者! 微妙なブロックラインを通ったり、インを開けているようで、相手がそこに飛び込むと曲がり切れなかったり……。最後はミスしてビニャーレスにかわされてしまいましたが、後ろに目が付いているんじゃないかというぐらい相手の出方を読み切った走りは、さすが、何度も世界チャンピオンを獲っているだけのことはありますね。
この2連勝でクアルタラロは50点を獲得。一方、最大のライバルであるマルケスは0点と、非常に大きなポイント差が広がりました。でも、これでチャンピオンシップが決まったわけではありません。マルケスに起こることはクアルタラロにも起こり得る。いろいろな意味で変則的で何があるか分からないシーズンになっています。すべてのライダーの無事を祈りつつ、いちファンとしてシーズンの行方を楽しませてもらおうと思っています。
第2戦アンダルシアGPで1-2-3フィニッシュを飾ったヤマハ。#20クアルタラロ選手、#46ロッシ選手、#12ビニャーレス選手。
絶妙なブレーキコントロールをし続けられるクアルタラロ、41歳で表彰台のロッシ!
YouTubeチャンネルのロケも順調にこなしています。茂原ツインサーキットで行った僕のライディングレッスンや、テネレ700のインプレツーリング、そしてこのミシュランプロモーションビデオ撮影舞台裏、さらに先日はハンターカブで初めての船釣りにも挑戦しました。今回は内房・金谷の光進丸で黄金アジを狙ったんですが、釣り、面白い! さっそくテレビで釣り番組を観たりして、ハマっています。バイク+αという楽しみ方は、やっぱりアリですね。身をもって実感しました。
でも、僕のYouTubeチャンネルは、なかなかアップされないことで有名です(笑)。なぜかって、現場があまりにも楽しすぎて、そこでもう気分的には終わっちゃうんですよね(笑)。まぁ僕はバイクに乗ったり釣りをしながらしゃべってるだけなので、制作スタッフに比べればラクなもの。いずれいろんなネタがアップされると思いますので、気長にお待ちください。さ〜て、次はどこに行って何をしようかな!
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