二輪車利用環境改善部会レポート#20

「バイクに乗ると素行不良」三ない運動の影響が基幹産業の担い手の未来を阻む!?

  • 2020/6/17
二輪車利用環境改善部会

教育現場の思考停止!? 部員の前向きな熱意を三ない運動が阻んでいる

前記事では、静岡県立伊豆総合高等学校の生徒など運転免許を持たない高校生10人が自動車教習所で原付バイクの講習(座学・実技)を受けたことをレポートした。その背景には、伊豆総合高校原動機研究部の生徒が有志(個人活動)で「カブカップ」レースに参加するにあたり、原付免許取得者と同等の運転技能が求められたため、ということがあった。

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原付バイクの講習会で実技に取り組む原動機研究部の部員。エンジンのかけ方、アクセルの開け方、ブレーキのかけ方、曲がり方、公道を走った場合の注意点など総合的に学んだ。

しかし、そもそも原動機を研究するという部員が運転免許を取得できないという現状に違和感を感じないだろうか。本稿では、部員の保護者であり、外部有識者として原動機研究部をサポートし、また学校のPTA委員としても活動されているF氏に話を伺った。

Q:原動機研究部の活動内容や現状について教えてください。

F氏:ホンダ等の主催によるエコカーレースへの参加が主です。その他、有志による活動として、四輪レースへのチームスタッフ・整備士としての参加、カブカップへの参戦、ファルマバレープロジェクト(県や企業との産学官連携)でのトヨタガズーレーシングラリーチャレンジへの参加があります。

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他校の生徒と一緒にマシンを押す。レースでチームスタッフ・整備士として参加するだけあって、扱いは慣れたものだ。

Q:カブカップ参戦後の学校側とのやり取りがSNS等で取りざたされました。

F氏:カブカップの件は、顧問の先生には了承を得ていましたが、地元の新聞に載ってから、学校側の反対や圧力が強くなりました。PTAからも「なぜあんなことをやらせているのか?誰が責任を取るのか?」と。

Q:伊豆総合高校は、統合前は工業高校でもあり、自動車関連企業に就職する生徒も多いと聞きました。学校やPTAの反応は少し意外です。

F氏:先に挙げたような活動でも、日本を代表する自動車・バイクメーカー、その関連企業にご協力いただいています。部員から一切の活動費を徴収していないのも、多くの企業が部員の熱意に基づく活動を心から支持、支援してくれているからです。四輪レースでは、伊豆市もスポンサーになってくれており、イベント時には市長も出てきてくれます。

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ヴィッツベースのレースマシン。スポンサー企業の中で伊豆市のステッカーが目立つ。

Q:県との産学官連携や就職先でもある自動車関連企業とのレース活動など、他の専門高校でもうらやむような活動です。学校はなぜ反対を?

F氏:バイクに乗っていること、生徒主導で活動していることを理由に「素行不良の生徒だから就職も斡旋できない」と言われてしまい、プロジェクトに関わっていた5〜6人の生徒が部を辞めていきました。部員の親が就職できないことを心配したからです。でも、実際には「金の卵ですから、ぜひ」とスポンサー関連企業にお声がけをいただき、部員の半数は就職できているんです。スポンサー企業も学校側に言ってくれましたが「免許だけは卒業してから取ってほしい。認められない」と言われています。

Q:静岡県の教育委員会は、原付免許の取得に関しては「一定の条件付きで許可」する方針となっています。

F氏:県教委は「静岡県に”三ない”はない。教育方針は学校に任せている。最終判断は学校であり、学校に対して強く言うことはできない」ということでした。

教育現場に放置された三ない運動が、日本の基幹産業たる自動車産業、その屋台骨をぐらつかせている。全国トップクラスの自動車・二輪車関連企業を有する静岡県が、本当にこんなことで良いのだろうか?

●文:田中淳磨(輪)

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