二輪車利用環境改善部会レポート#18

免許のない高校生がバイクを体験【三ない運動が阻んできた体験型学習が実現】

  • 2020/5/15
二輪車利用環境改善部会レポート#18

’20年3月15日(日)、静岡県の函南町にある田方自動車学校で、運転免許のない高校生を対象にした原付バイクの運転講習会が開催された。参加したのは、静岡県立伊豆総合高等学校ほか近隣の高校から集まった生徒10名だ。

●文:田中淳磨(輪)

免許のない生徒にバイクの運転講習会を実施

静岡県の教育委員会は、原付免許取得に対して「一定の条件付きで許可」している。しかし、今回集まった生徒が通う3つの高校は、どこも免許取得を許可していない。以前は工業高校だった歴史を持つ伊豆総合高校とて例外ではなく、工業科が存在し、原動機研究部という部活動があってもなお許可されていない。 

今回の講習会は、原動機研究部の部員が有志(個人活動)として「カブカップ」に参戦するにあたり、原付免許または免許保持者と同等の運転技能が求められることもあって実現した。カブカップとは、ホンダ スーパーカブなどビジネスバイクを使ったチーム対抗3時間耐久レースで、富士スピードウェイのカートコース等で行われ、「エコ・モトGP」とも称される環境に配慮した大会だ。 

このカブのエンジンを使用したエコラン大会への出場、ガソリンエンジンの分解や組み立て、燃料電池車両の製作といった活動を行う原動機研究部でさえ、運転免許を取らせてもらえないという現実は、三ない運動の弊害やねじれを強く感じさせる。この課題については次回に広く深く取り上げるとして、今回は和気あいあいと行われた講習会の模様をお届けする。

この講習会がモデルケースに

安全運転講習会を指導したのは、著名なモータージャーナリストであり、日本二輪車文化協会セー フティライディング部会指導員(理事)でもあるカズ中西さんを含む4名のインストラクター。誰ひとり運転免許を持っていないという状況の中、まずは座学から始まり、交通規則を守ることの大切さや周りに迷惑をかけないという社会人としての責務、さらにはカーブを曲がる際の限界速度など理屈や理論も教わった。

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座学では道交法のほかマナーやモラル、空走距離と制動距離など走行理論も学んだ。

教習コースで行われた実技では、運行前点検、乗車姿勢、センタースタンドをかけた状態でのアクセルとブレーキの操作など車両の取扱いや運転の基本をじっくりとレクチャー。初めてエンジンを回した生徒の口からは「ちょっとこわい…」という感想も聞かれたが、皆、少しずつ着実にステップアップし、午前中には、発進、減速、停止ができるようになっていた。 

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実技講習では「ブタと燃料」といった車両点検方法も学んだ(ブレーキ/タイヤ/灯火類/燃料の頭文字で組んだ合言葉)。

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2人一組となり、リヤタイヤを浮かした安全な状態でエンジンをかけ、アクセルとブレーキの操作・感覚を学ぶ。

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バイクは初めてという女子生徒にマンツーマンの指導。指導員が一緒に走ってアドバイスする。

午後からは、指定速度からの目標制動やカーブの曲がり方、教習コースを活かしての実践的な走行、さらには、技術のまとめとして8の字走行も体験。今日初めてバイクに乗ったという男子生徒2名に話を聞いてみたところ…、

A君(18歳)「本当に楽しかったです。漫画(こち亀)でカタナを見てから、ずっとカタナ250が欲しくて…」

B君(18歳)「最寄駅までバイクを使いたいですね。坂道がキツくて歩くと40分もかかるけど、バイクだと10分もかからないと思うので」

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カーブの後の目標制動。「目線は前、遠くを見て」と声がかかる。カブの場合はスムーズなシフト操作も求められる。

講習後、カズ中西さんは言う。「三ない運動がなくなって制度が変わったら、今日やったことがひとつのモデルケースになると思う。今後に期待しつつ続けたいですね」 

ちゃんと教われば危なくない。体験学習型の交通安全教育はこれから各地に広がっていくはずだ。

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