二輪車利用環境改善部会レポート#14

三ない運動に代わる交通教育の可能性【埼玉県の取り組みはモデルケースとなりうるか】

  • 2020/3/16
二輪車利用環境改善部会

三ない運動をやめ、”乗せて教える”交通安全教育に転換した埼玉県の事例は、他県にも当てはめることができるのか?埼玉県の「高校生の自動二輪車などの交通安全に関する検討委員会」で会長を務めた稲垣具志助教に話を聞いた。

●文:田中淳磨 (輪)

二輪車利用環境改善レポート

【稲垣 具志氏】日本大学理工学部交通システム工学科助教。財団法人豊田都市交通研究所の研究員、大同大学、愛知工業大学、成蹊大学への勤務を経て現職。研究分野は土木計画学と交通工学、研究キーワードは都市交通計画、地区交通計画、交通工学、交通安全。ドラッグスター400を所有し国道を下道で走破するのが趣味という一面も。

高校生が「事故の当事者にならない」ための教育を

Q:埼玉県での事例は、他県へのモデルケースとなり得るでしょうか?

稲垣氏:教育長から課長クラスまで、埼玉県での議論の内容、その結果をどれだけ理解いただけるか、また、自分たちの管轄下での、歩行者や自転車も含めた高校生の交通安全教育の実態をどれだけ真剣に考えているかによると思います。

皆さんが「埼玉の事例は良い」と言うのですが、良いということをいろんな温度差や角度で見ています。誰も間違ってはいませんが、それをいかに整理して、どういう特徴があり、何が達成できていて、どこに向かおうとしているのかを他県の方にも理解いただいた上で知ってほしいですね。

三ない運動をやめるのか続けるのかという議論ではありませんでしたから(※前回参照)。その結論に至るまでのプロセスでは、一回の検討委員会が2〜3時間ぐらい、のべ20〜30時間ほど話しました。そういう中で、正しい情報共有や立場が異なる方同士の相互理解もありましたし、当事者へのアンケートも取りました。当事者となる高校生がどういう気持ちでいるのか、バイクという乗り物に対する価値観がどんな実態であるかも知りましたし、今後どうするのかということを皆さんが襟を開いて議論したというプロセスをどれだけ知るかということが重要だと思います。

Q:他県のモデルケースとする上で、一番重要なポイントとは?

稲垣氏:高校生が、本当に生涯にわたって事故の当事者とならないために、彼らにとって必要なことは何なのかを考えることです。それが担保されるか否かという議論をしないといけません。そうしたプロセスを踏まえてなお、三ない運動を続けることがベストな選択肢であれば、それは続けるべきなんです。「三ない運動をやめて…」の後が重要なのですが、「じゃあ乗り出す」となって、本当にこの子たちが事故の当事者とならないための教育が、三ない運動をやらない代わりにできるのかという議論は絶対にしないといけない。ここが最も重要なポイントです。それをやらなかったら全く検討していないということになりますね。埼玉県ではそれができました。 

検討委員会の回数も重要です。誰かと話して、しばらく寝かせて、2か月後にもう1回会う。これを9回繰り返すと、やっぱり相互理解できますよ。最後にもう1回増やしたぐらいです。

Q:講習会も視察されたそうですが、お気づきになった点はありますか?

稲垣氏:実技でいろいろと教えますが、それが実際に公道でどう活かされるのかがわからないものもありました。講習の中身は100%交通安全教育でないと駄目ですが、この実技にはこういう意味があるんだということが見えないものもあったかなと。その実技の意味について、明確に受講生に伝える必要があるのです。教育というのは受けるもので、施すものではないですから。受けた側が変わって初めて教育なんです。そこの部分がどれだけ伝わっているのかという点は気になりましたね。

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