日本最大級のカスタムバイクショー・HRCS2019において「ベスト・オブ・ショー・モーターサイクル」に輝いた、日本一の実力の持ち主「シュアショット」相川拓也氏。本記事では相川氏が新たにビルドアップしたバガーカスタム車を紹介する。ベースはツーリング系でM8を初搭載した、17年式のCVOストリートグライド。カスタム最大の特徴は「カムを1本化」だ!
●文:青木タカオ 写真:藤村のぞみ ●取材協力:SURESHOT ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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カムを1本化したミルウォーキーエイト。比較的簡単にサウンドとパワーが手に入る
現行CVOでは117ci(1923cc)を搭載するが、このストリートグライドは114=1868ccで十分と言わんばかりの力強さで、車体をグイグイ前に進めていく。全域でスロットルレスポンスに優れ、強烈な加速が味わえる。
聞けばなんと100馬力オーバー! 排気量拡大こそパワーアップへの近道という考えを覆す、衝撃の実力だ。一体どんな仕掛けがあるのか、相川氏がそのワケを教えてくれた。
「ハイカム化されているのが、大きなポイントです。排気量がそのまま同じであっても、吸・排気バルブがより長い時間開きますから、ノーマルよりたくさんの混合気を吸って吐くことができます」
【ハイカムってナニ?】吸・排気バルブの開く量や時間、タイミングなどを決定づけるカム。楕円状になったカム山の高さをリフトと呼ぶが、それをノーマルより増やし、さらに幅を広くすることで、吸・排気バルブの開く量も多くする役割を持つのがハイカム。バルブがより多く開く、つまりエンジン内に沢山の混合気(燃料と空気)を取り入れて出力向上ができる。
もっとわかりやすいよう、さらに説明を続けてくれる。
「注射器のピストンを引っ張るとします。針の穴が小さいと抵抗になって少ししか空気を吸い込めませんが、穴が太ければ沢山の空気を一気に吸えますね。エンジンは入口と出口の径は同じままですが、そこにあるバルブの開く時間などを増やせば、ガソリンや空気をより多く取り入れて出力を上げられるのです」
ツインカム時代はその名の通り2本あったカムシャフトだが、M8ではエボリューション時代以前と同じ1本に。カム交換する際に作業が容易で、コスト的にも抑えられることは、ユーザーにとって大きなメリット。ツインカムではカムのサポートプレートやオイルポンプなど、交換しなければならない部品が多かったが、それらが圧倒的に減少。ハイカム化も基本的にはカムシャフトとベアリング強化だけで済んでしまう。
そして相川氏は、たいへん興味深いことを教えてくれた。
「ミルウォーキーエイトは厳格化する排ガス規制に対応するため、カムシャフトで制御する部分が大きくなっています。簡単に言うと、バルブが開く量がとても少なくなりました。なので、排気量はとても大きいのに口をすぼめて呼吸をしているような状態なんです」
つまり、音を静かにし排ガスをクリーンにするノーマルのカムシャフトでは、ミルウォーキーエイトエンジンが本来持つポテンシャルを十分に発揮できないということだ。
通常の場合、カムシャフト脱着には燃料タンクやロッカーカバーを外して、プッシュロッドをようやく抜くことができる。ツインクールド化し、ウォーターラインを排気バルブまわりに持つウルトラ系はさらに作業がタイヘンだ。しかし、プッシュロッドを伸び縮み可能とするアジャスタブル式に交換することで問題解消。作業を簡略化でき、作業効率を飛躍的に向上できることも教えてくれた。
話を戻すが、このエンジンには高品質・ハイパフォーマンスパーツメーカーとして絶大な信頼を誇るアメリカT-MAN社のハイカムが入っている。中高速域もパワフルなT-216がチョイスされたが、トルク重視ならT-200もいい。他にも、純正スクリーミンイーグルをはじめ、S&S製などがメジャーだ。オーナー次第でカム選びも違ってくる。
アレンネスのスリップオンマフラーが奏でるサウンドも迫力があって元気溌剌としているが、音にもハイカムが大きく関わる。相川氏によれば「サウンドにこだわりたい人も、マフラー交換やインジェクションチューニングだけでなくハイカム化がとても効果的です」という。
もちろんハイカム化だけでは、全域でスムーズ、かつ鼓動感豊かなエンジン特性は得られない。フューエルインジェクションのチューニングがマストだが、最新ミルウォーキーエイトのエンジンカスタムにも精通する相川氏だけにノウハウと技術力はとても豊富で頼もしい。
このCVOストリートグライド、前輪ホイールは19→21インチ化し、フェンダーはワンオフでつくり直した。
ゴージャスで迫力のあるフロントエンドを形成しているが、足まわりを大径化しても軽快なハンドリングを犠牲にしないのは、モーターサイクルにスポーティさは欠かせないとする相川氏のポリシーを感じる。キビキビ走り、ツーリングモデルならではの重厚感を消し去ってしまっているから舌を巻く。
この身のこなしの軽さは、フロントフォークを1インチ下げたことによるもの。21インチ化によって上がったフロントのバランスを整え、グリップ力に定評のあるブリジストンH50を選んだ。
凝ったペイントも目を惹くが、総合力が高く、何よりまず走りが楽しい。シュアショットの真髄と言えよう!
シュアショット FLHXSE CVO STREETGLIDE カスタムの詳細
唐草風の柄で目を見張る美しいペイントは、千葉県四街道市にある「RODS DESIGN(ロッズデザイン)」によるもの。キャンディとパール、フレークが重ね塗りされ、艶やかさと高級感が同居している。惜しみなく車体各部に用いられたアレンネスのビレットパーツが統一感を生んでいるが、ナンバー灯とライセンスプレートを埋め込んだテールエンドのスムージング処理も見事としか言いようがない。インフォテインメントシステムは米国SONY製で、アップルカープレイに対応。機能性も重視している。
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