MVアグスタから3月以降に発売される“ロッソシリーズ”は、イタリア語で赤を意味するROSSOそのままに、赤を基調としたボディカラーが特徴の3気筒シリーズ。ブルターレ、ドラッグスター、ツーリズモベローチェそれぞれに用意されるロッソは、主にデザインパーツとエンジン出力の違いで約23万円以上もの価格差を生み出している。
普及価格帯(!?)のネイキッド&クロスオーバーツアラー
2020年3月以降に順次発売となる“ロッソ(ROSSO)”シリーズは、逆回転クランクの並列3気筒エンジンを搭載するブルターレ、ドラッグスター、ツーリズモベローチェに用意されるスタンダードスペック版。エンジンはツーリズモベローチェと同じ110馬力の扱いやすい仕様に統一(ブルターレ&ドラッグスターの標準は140馬力)され、各種電子制御に従来ラインナップとの差はない。
ツーリズモベローチェのみ、上級モデルはスマートクラッチシステム(SCS)を装備するバージョンだけとなり、マニュアルクラッチ仕様はロッソのみのラインナップ。ブルターレとドラッグスターについては標準仕様のRRにマニュアルクラッチ仕様とSCS仕様があるので、ロッソシリーズと直接的な価格比較やしやすく、お得感がいっそう際立ってくるといえよう。
ブルターレ800ロッソ(BRUTALE 800 ROSSO)[3月発売]
まずは、スポーツネイキッドのブルターレ800ロッソだ。標準モデルのブルターレ800RRとの見た目の違いは、ホイールのスポーク側面に切削加工が施されていない程度にとどまっている。計器類や制御は、イモビライザーをはじめとする最先端の電子機器を含め、標準モデルと同じだというから驚きだ。標準モデルにはSCSモデルもあり、こちらは225万5000円となっているが、通常クラッチ版のRRは212万3000円。ロッソの189万2000円は、かなり攻めた価格設定に思える。
並列3気筒798ccエンジンはRRの140→110馬力となった代わりに、最高出力&最大トルクともに発生回転数が大幅に下げられていることから、低中速トルクが増していることが想像できる。ストリートでの扱いやすさを重視したことは間違いなさそうだ。MVICS(モーター&ビークル・ インテグレーティド・コントロール・システム)と呼ばれる統合電子制御システムや、アップ&ダウン双方向対応のクイックシフター=MV EAS 2.1については、資料から読み解く限り通常版のRRと何ら変更なし。車重も含め、出力以外は同じスペックが並ぶ。
【MV AGUSTA BRUTALE 800 ROSSO[2020]】主要諸元■全長2045 全幅875 全高未発表 軸距1400 シート高830(各mm) 車重175kg(乾)■水冷4ストローク並列3気筒 DOHC4バルブ 798cc 110hp/11500rpm 8.46kg-m/7600rpm 変速機6段 燃料タンク容量16.5L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:189万2000円 ●色:赤 ●発売:2020年3月
ドラッグスター800ロッソ(DRAGSTER 800 ROSSO)[4月発売]
バーエンドミラーやスポークホイールが特徴のドラッグスターでは、ロッソのホイールがキャストタイプの黒に変更されているのがデザイン上でわかりやすい点。とはいえ、こちらもブルターレ800ロッソ同様にエンジン出力以外は標準モデルのドラッグスター800RRと同じ数値が並んでいる。最高出力はブルターレ800ロッソと同じく140→110馬力に改められ、発生回転数も低くなった。低中速トルクを増してストリートで扱いやすいキャラクターが想像できるのも共通している。
外装については、燃料タンクとシュラウドの一部が赤くなっている以外はブラックアウトされた。200/50ZR17という極太リヤタイヤの強調感はRRに比べてややおとなしめだが、落ち着きのあるデザインを好むライダーにはこちらのほうが受け入れやすそうだ。168kgという、ブルターレ比で7kgも軽い車重などに魅力を感じていたけれど、尖ったデザインに気が引けていた、というライダーには朗報といえるだろう。
【MV AGUSTA DRAGSTER ROSSO[2020]】主要諸元■全長2035 全幅935 全高未発表 軸距1400 シート高845(各mm) 車重168kg(乾)■水冷4ストローク並列3気筒 DOHC4バルブ 798cc 110hp/11500rpm 8.46kg-m/7600rpm 変速機6段 燃料タンク容量16.5L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=200/50ZR17 ●価格:198万円 ●色:赤 ●発売:2020年4月
ツーリズモベローチェ800ロッソ(TURISMO VELOCE 800 ROSSO)[3月発売]
低中速重視の扱いやすい並列3気筒798ccエンジンを搭載し、アップライトなポジションでツーリング性能を高められているのがツーリズモベローチェ。こちらは標準モデルといえるバージョンが導入されず、ロッソ以外にはいきなりRC(レパルトコルセ)と呼ばれるスペシャルモデル、しかもSCS仕様のみというラインナップだ。これにより、ツーリズモベローチェ800RC SCSとロッソの価格差は66万円という大きな開きとなっている。
ようするに、ロッソは事実上の標準モデルの位置づけと言ってよさそうだ。エンジンの出力はRCとロッソ、ともに110馬力で共通、電子制御もIMU慣性プラットフォーム採用など共通している。また、RCはSCS(スマートクラッチシステム)のほか、ザックス製セミアクティブサスペンションを採用しているのも違いのひとつだが、ロッソも前マルゾッキ/後ザックスのプルアジャスタブルサスペンションを採用しており、けっして低価格版という印象はない。
【MV AGUSTA TURISMO VELOCE 800 ROSSO[2020]】主要諸元■全長2125 全幅910 全高未発表 軸距1445 シート高850(各mm) 車重191kg(乾)■水冷4ストローク並列3気筒 DOHC4バルブ 798cc 110hp/10150rpm 8.15kg-m/7100rpm 変速機6段 燃料タンク容量21.5L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●価格:214万5000円 ●色:赤 ●発売:2020年3月
ブルターレ800、ドラッグスター800、ツーリズモベローチェ800の2020年モデルラインナップ
BRUTALE 800 RR/SCS
【BRUTALE 800 RR/SCS[2020]】●価格:212万3000円/SCS=225万5000円 ●発売:RR=2020年3月/SCS=2020年5月 ※写真はSCSなし
DRAGSTER 800 RR/SCS
【DRAGSTER 800 RR/SCS[2020]】●価格:244万2000円/SCS=257万4000円 ●発売中/SCS=2020年5月 ※写真はSCSなし
TURISMO VELOCE 800 RC SCS
【TURISMO VELOCE 800 RC SCS[2020]】●価格:280万5000円 ●発売:2020年6月 ●世界限定200台
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