MV AGUSTA 750Sは、1971年から1975年にわたって生産された、当時のMVアグスタの象徴的なモデルで、現在はブランドコレクターたちの垂涎の的となっている。赤/白/青に塗り分けられた燃料タンクが描く美しいラインは、このモデルを特徴づける決め手のひとつと言えるだろう。MVアグスタは、2019年モデルとしてブルターレ800RRアメリカを登場させることで、この750Sの伝説を甦らせようとしているが、もうひとつ、ミラノショー会場の片隅でひっそりと展示されていた2019年モデルがあった。それがマーニ(MAGNI)の750S Tributoだ。
MV AGUSTAの伝説を創ってきた男
驚くべきことにこのマーニの新作は、往年の750Sの燃料タンクのラインをほぼそのまま再現し、750Sそのものに近いたたずまいとしながらも、最新のブルターレ800系エンジンを搭載。足まわりにも、往年の雰囲気を損なわない意匠を保ちながら、現代的なアジャスタブル機構が与えられている。
そこで読者が気になるのは「そもそもマーニってなーに?」ということだろう。
マーニ創始者のアルトゥロ・マーニ(Arturo Magni)氏は1947年にPiero Remor氏の指導のもと、ジレラ(Gilera)のレーシング部門でそのキャリアをスタート。1950年からはMVアグスタのレーシング部門に加わり、1977年に引退するまでにはMVレパルトコルサ(Reparto Corsa)のチーフとしてジョン・サーティースやマイク・ヘイルウッド、ジャコモ・アゴスチーニら錚々たるライダーを率い、75ものタイトル獲得に貢献している。
レースからの引退後は、MVアグスタのスペシャルバイクを造るファクトリーを息子のジョヴァンニたちとともに設立し、750ccと788ccのMV SportおよびMV Americaを製作。その後はBMWのボクサーエンジンを搭載したマシンなどを生産していたが、1985年からはモトグッツィのエンジンを使用する契約を取り付け、純イタリア産バイクへと転換していく。1989年に登場したSfida(スフィーダ)1000などは有名な部類だろう。また、2012年には英国産BSAエンジンを搭載したマシンなども登場させた。
今回の750Sトリビュートのベースになったのは、2014年のEICMAで登場したFilo Rossoというマシン。ブルターレ800系のエンジンを搭載し、キャストホイールを履くフィロロッソは、新世代マーニの先鋒といっていい。ちなみにフィロロッソにはカウルつきバージョンもあり、今夏に本国で開催されたマーニオーナーズミーティングではブラックエディションも登場している。
そうした流れのなかで、MV AGUSTAロゴをあしらったトリビュートマシンが登場したというわけだ。コンストラクターの名はマーニだが、系譜をたどっていけば、これも本物のMVアグスタと言えることがわかるだろう。750Sトリビュートは、フィロロッソと比べると外装が一新され、スポークホイールを採用。また、フレーム形状にもいくらかの違いはあるようだが、ブルターレで使用されている3気筒800ccエンジンを搭載し、高いハンドリング能力を保証する点は変わらない。気になるのは、これが日本で買えるのかということだが、現時点ではまだなにも情報がない……。
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