’17/18年の全米フラットトラック選手権で圧勝を飾ったインディアン。そのワークスレーサー・FTR750のノウハウを投入して生まれたのが、FTR1200/Sだ。
(◯)優しい操安性と絶妙なトラクション
’11年から現体制での活動を開始したインディアンにとって、今年から発売が始まるFTR1200は、初の公道用スポーツバイクである。そしてこの車両には、’17/18年の全米フラットトラック選手権で、ハーレーやカワサキを破って圧勝した同社のワークスレーサー・FTR750のノウハウが投入されているが……。
FTR1200は、いわゆるレーサーレプリカではない。ダブルクレードルフレームに53度Vツインを搭載する750に対して、1200のフレームはトラス構造のバックボーンタイプ、エンジンは60度Vツインで、車重やディメンションも大きく異なっているのだ。その素性には、微妙な物足りなさを感じる人がいるかもしれないが、今回の試乗で上級仕様のSを走らせた僕は、インディアンの技術力の高さ、公道用スポーツバイクに対する見解に、しみじみ感心することになったのだった。
中〜高回転域を維持してのスポーツライディングだけではなく、低回転を使ったまったり巡航も受け付ける、エンジンのフレキシブルさにも感心したけれど、僕がFTR1200Sで最も心を動かされたのはシャシーのよさだ。現代のスポーツネイキッドと比較して、平均以上の運動性能を披露してくれる一方で、フロント19インチならではの安心感、乗り手を優しく導いてくれるかのような資質が備わっていて、どんな場面でも操る手応えを感じさせてくれる。個人的に興味深かったのは、スロットルのオンオフによるトラクションの変化がとてつもなく鮮明だったことで、こういった特性には、後輪を主体とするフラットトラックのノウハウが活かされているのだと思う。
前後ショックユニットはザックス。ホイールサイズは3・00×19/4.25×18で、フラットトラックスタイルのタイヤは専用設計のダンロップDT3‐R。ABSは任意でカットできる。
戦闘的なルックスとは裏腹に、FTR1200Sはどんな用途も過不足なくこなせる万能車で、アップライトなライポジや良質な乗り心地などを考えると、アドベンチャーツアラー的な雰囲気も感じる。なお試乗前の僕は、ハーレーがかつて販売したXR1200をライバルとしてイメージしていたのが、試乗中に頭に浮かんだのは、KTMの1290スーパーデュークRだった。
(△)フロントフォークは煮詰めの余地アリ
真夏日だったためか、市街地では右足に伝わる排気系の熱気が少々気になった。また、フロントフォークの動きは基本的にしなやかだが、場面によっては応答性にわずかな違和感を覚えたので、セッティングを煮詰める余地はありそうだ。
(結論)こんな人におすすめ:ヨーロッパのスポーツNKと互角に戦える!
アメリカ生まれのVツインということで、どうしてもハーレーを比較対象にしたくなるインディアン。でもFTR1200/Sに限っては、そういう意識を持つ人はいないだろう。このバイクのライバルは、欧州製Vツインネイキッドだ。
【STDグレードは200万切り】基本スペックはSと共通だが、ブラックアウトを徹底したSTDは足まわりや装備を簡略化。メーターは丸型の指針式。 ■FTR1200(189万9000円)
●まとめ:中村友彦 ●写真:真弓悟史
※取材協力:インディアン
※ヤングマシン2019年11月号掲載記事をベースに再構成
「俺たち、国土広くて直線メインだから、ワインディングとかあんまり関係ないし」そんな思いが見え隠れしていた本場アメリカのクルーザー界。しかし、そんな時代が変わろうとしている。伝統のスタイルを受け継ぎつつ[…]
東京モーターサイクルショー2019のプロトブースでは、数々の電動モビリティが展示されていた。なかでも注目を集めていたのが、ビーチクルーザーのようなスタイリングの電動バイク「Munro e-Bike」。[…]
カスタムシーンやフラットトラックレースで存在感を示しているインディアンが、ズバリFTRの名を冠した市販車を登場させた。トラッカーカスタムがそのまま公道に飛び出したようなスタイリングに1200ccのVツ[…]
写真をまとめて見る
あなたにおすすめの関連記事
リラックスした乗車姿勢とロングホイールベースによる怒濤の直進安定性を誇り、悠々と旅ができる……のがクルーザーの定義だが、カタチは様々。今回は、“アメリカンスポーツ”を掲げるインディアンモーターサイクル[…]
「遺産」「伝統」を意味するヘリテイジな外観に、スポーティな走りを融合したジャンル。欧州を中心に人気を博し、国産でも各メーカーの新作が相次いでいる。過去を蘇らせつつ現代のテクノロジーを注入したトライアン[…]
インディアンの“サンダーストローク111”エンジンが、’19年モデルで3種類から選べるライドモードを追加。その実力を「チーフテン ダークホース」で確認した。 ルックスはよりモダンに '19年モデルは外[…]
2018年10月のインターモトショーから11月のミラノショーにかけて、世界のニューモデルが一気に登場したことは記憶に新しいだろう。WEBヤングマシンでは新車情報を逐一お届けしてきたが、本特集「2019[…]
ハーレー・ダビッドソンの2年前・1901年に創業したインディアンは、アメリカで最初にVツインを作ったことで知られる老舗メーカーだ。今回紹介する「スカウト」は、歴代インディアンの小排気量版に冠された名を[…]