「ポルシェ好き必見! 」シンガーのレストモッドとは? 911を再解釈する究極のカスタムカー | 価格・特徴・魅力

「ポルシェ好き必見! 」シンガーのレストモッドとは? 911を再解釈する究極のカスタムカー | 価格・特徴・魅力

シンガーの名は、ポルシェのファンやクルマ好きなら一度は耳にしたことがあるでしょう。ポルシェ911のレストモッド(レストア+モディファイ)で頭角を現し、今では世界中のビリオネアが発注リストに名を連ねるファクトリーです。2009年の創業当時でさえ納期は1年以上とされてきましたが、現在では5~7年待ちとまで噂されています。無論、最低でも1億円以上といわれる作品がオークションに出回ることは滅多にありません。実際、アメリカで出品されたこちらのターボモデルは150~200万ドル(約2~2.8億円)とクラシックフェラーリを凌ぐかのような予想値が示されていました。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s

901への憧れから始まった”シンガー”

シンガー・ヴィークル・デザインの創業者、ロブ・ディキンソンはアーティスト(歌手)として活躍していたこともあるのでSingerという会社名にしたという説と、ポルシェの伝説的なエンジニア、ノルベルト・シンガーにちなんでいるというふたつの説があります。

これら命名の由来は、インタビューで本人が語っているので、いずれも事実なのでしょう。

911、より正確にいえば原初の901への憧れからシンガーを興したとのことですが、創立当初はなるほどナローボディがメインストリームでした。

車高を落とし、ファットなタイヤ、そして964譲りのパワフルなチューンドエンジンといったパッケージで、レトロモダンなだけでなく緻密なほどの完成度には誰もが目を奪われたはず。

5年待ちはざら、というシンガーがオークションに出品されるのは極めてレア。それゆえ、2~2.8億円という落札予想価格も納得です。

アメジストメタリックは964や928で人気のあったボディカラー。ターボのグラマラスなボディにもことのほかお似合いです。

2022年にはターボボディを発表する

そんなシンガーがターボボディを発表したのは2022年のこと。レストモッドならぬ、リイマジン(再解釈)と称するディキンソンですが、シンガー製930ターボはため息しか出ないほどのカッコよさ。

ほとんどのシンガー作品は964をドナー車両として使用するのですが、ルーフと左右のドア以外はカーボンで作り直されます。それゆえ、リヤフェンダーのエアイントレットや、ホエールテールと呼ばれる930ターボ独特のリヤウィングも自由な造形。

もちろん、前後フェンダーも再解釈され、オリジナルモデルよりも大径&ファットなタイヤを収めることに成功しています。

ちなみに、964をベースにしながらワイパーだけは993風のセンター配置。シンガーの各モデル共通なので、覚えておくと見極めやすいかと。

出品車のホエールテールウィングは、ごく初期の930ターボのイメージでしょうか。インテーク面積がオイルクーラー用にほど近い雰囲気です。

245/35ZR18のフロントタイヤ。ホイールはフックス製ですが、シンガーの特注品。センターとリムの塗分けもじつにセンスがいい。

リヤは295/30ZR18、タイヤはミシュランのピロートスポーツ。フェンダーのインテークをカーボンパーツでディテールアップしているのも注目です。

エンジンルームも、自慢したくなる圧巻の出来ばえ

また、搭載エンジンについても空冷だけにこだわることなく、空水冷化や、F1コンストラクターのウィリアムズやコスワースによるチューニングなどワクワクするようなメニューが揃っています。

今回の出品車両は、チューナーこそ詳らかにされていませんが、ツインターボ、空水冷ヘッドを主とした内容で3.8リッターから500馬力をひねり出しているとか。また、エンドパイプは2本ともエキゾーストであり、ウェイストゲートは確認できていません。

ともあれ、エンジンルーム内にもカーボン製パイプやシュラウドが所狭しとおごられた眺めは圧巻。こりゃ自慢したくもなりますわな(笑)。

500馬力を発生する3.8リッターツインターボ。カーボンやマグネシウムといった素材オタクが卒倒しそうなエンジンルームの眺めです。

インテリアもこだわりを超えて執念を感じるもの

そして、シンガーといえばセンスのいいインテリアでも有名です。旧き良きポルシェに敬意を払いつつ、モダナイズ、かつゴージャスな仕上がりはディキンソンがもっともプライドをかけているといいます。

アメジストメタリックのボディに、クリームのレザーインテリアはまさに964でも人気だった鉄板のコーディネート。さらに、グローブボックスの中までレザートリムを施し、カーペットもクリームで合わせてくるとはこだわりというより執念にほど近いかと。

実車は500マイル弱(800km)を走っていますが、おそらくは納品後すぐにキャンセルでもくらったのかもしれません。なぜなら、オークションで落札した後はシンガーが「完璧な整備」を施した上で納車する手はずとなっており、これはこれで安心のお買い物といえるでしょう。

納車までの数年を待てないせっかちさんには、うってつけの1台だったはずです。

レザー、アルカンタラ、そしてローズウッドといった素材がてんこ盛りな室内。3本スポークのステアリングもオリジナルを再解釈したシンガーの作品。

メーター類もシンガーはすべてデザインしなおしたオリジナルパーツを使用しています。近年、このデザインを共有するクロノグラフウォッチも発売しています。

本家のポルシェもグローブボックスは樹脂の成型品でしたが、シンガーはこの通りレザートリムに加え、サブスペースを作る工夫まで凝らしています。

ワイパーの根元にご注目。993で採用された配置ですが、シンガーはほぼすべてのモデルがこのセンター方式にモディファイされています。

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